第2話 人類の戦い

 ABコンピュータ社 CEOのレイノルドは、COOのピーターに計画の中止を命じた。しかし、7人の老人を含めた実業家たちによる世界会議は中止を認めなかった。

 世界会議は、COOのピーターに実行を急がさせたのだ。


 ABコンピュータ社のレイノルドは、CEOを外され、追い払われた。CEOには、ピーターが昇格した。

 レイノルドは、ピーターにABコンピュータ社の60階建てのビルの屋上にある、ヘリポートに呼び出された。

ピーターから

「ヘリを用意させました。それでご自宅までお送りさせます。お疲れ様でした」

と、言われたのだ。

 しかし、ヘリが用意してある気配はない。 

 屋上のヘリポートの、レイノルドの前にピーターが現れた。レイノルドは、藤子(トーコ)と、同じ、超能力者。テレパスだ。瞬時に、ピーターの考えが分かっる。

(ピーターは、自分を殺そうと、している)

ピーターも超能力者である。あらゆる物を動かせる。

 レイノルドと向合うピーター。

「お疲れ様でした!」

と、言ってピーターは、レイノルドを睨みつける。

 レイノルドは、首、というか気道が、わし掴みにされた様な状態になっていた。ピーターがレイノルドを睨みつけ、念を送っているようにも見える。レイノルドの周囲の気を動かして、そして、レイノルドの肉体、筋肉を動かしている。息が出来ないのか、レイノルドは苦しがっている。

 レイノルドも、超能力を持っている。だが、それは、藤子(トーコ)と同じテレパスの能力。

「トーコ、気を付けろ!世界の人々を救ってくれ」

 レイノルドは、見えない手に投げ飛ばされたように、気により、ビルの外に放り投げられた。


 藤子(トーコ)に、レイノルドの声は届いた。

 そして、勝子にも届いた。

 家のリビングで、藤子(トーコ)は、夫の竜也と娘の勝子と三人で寛いでいた。

 藤子(トーコ)と勝子は、同時にお互いの顔を見ることになる。勝子としては、レイノルドを知らないので不思議な感じでいるが、藤子(トーコ)にはレイノルドの危機が分かった。

 藤子(トーコ)は、すぐに夫の竜也に

「レイノルドが危ない!すぐに助けて!」と叫んだ。

竜也は、

「レイノルド・・・・・・今どんな顔だ?」

と、天を仰ぐように考え込んでいる。

 そう、竜也はピーターと同じく、物を動かす能力がある。

 ただ、動かすものを正確にイメージしなければならない。

 すかさず、藤子(トーコ)は、ワールドワイドな雑誌を、竜也の前に放り投げた。

「表紙にアメリカ大統領と並んで写っている!」

「!」

 竜也は、その雑誌の表紙にアメリカ大統領と握手して笑顔をこちらに向けている男を見た。そして、この家のリビングをイメージした。


(動け!)


次の瞬間、レイノルドは、藤子(トーコ)たちの集うリビングに現れた。

レイノルドを含め、このリビングにいる全員が固まった。


「?」

 レイノルドは、しばらく自分がどうなったのか、分からない様子。何が起こったのか?考え込んでいた。

 しかし、近くにいる藤子(トーコ)の娘、勝子を見るなり、

「トーコ、僕の声、聞こえたんだ。助けてくれたんだ?」

 レイノルドは暫く考えた。

(トーコにはテレポーテーションの能力があったか?無かった様な気がするが?)

そこで、

「トーコは私だ!」

 レイノルドは、そちらの声の方を向く。そこには、勝子とそっくりではあるが、年老いた婦人がいる。藤子(トーコ)だ!

「トーコ?随分、おばあさんデスネ!」

「なに!」

藤子(トーコ)は、目を吊り上げて、怒る。その隣で吹き出す竜也。レイノルドは、竜也のほうを伺い、気が付くのだった。

「ナンゴウ リュウヤ、さん?」

 竜也は、微笑みながら強く頷く。

「竜也さん、助けてくれましたか?そういえばテレポーテーション使えましたね?」

と、レイノルドは、握手を求め竜也に近づき、

「アッ、トーコと結婚しましたか⁉」

と、嬉しそうな笑顔を見せた。

竜也は、微笑み、一度だけ強く頷く。そして、藤子(トーコ)の方を見る。そして、娘の勝子を引き寄せた。

「コッチは、娘のショウコ、私たちより、凄い力を持ってるのヨ」

と、藤子(トーコ)は、顎で勝子を指し示し、レイノルドに紹介をした。

 レイノルドは、微笑みながら勝子を見つめ何度も頷いた。

「昔のトーコにソックリですネ⁉」

 それを聞いて勝子は、いやな顔を一瞬みせた。それを、藤子(トーコ)は見逃さなかった。

 藤子(トーコ)は、

「私は、もっと、女の子らしくて、魅力的だったろう?」

と受け答えた。

顔を見合わす、レイノルドと竜也。少し吹き出しそうになる。

「なんだよ!」と怒り、スネル、藤子(トーコ)。


「あっ⁉誰かが高層ビルの屋上でレイノルドさんを探している?」

と、突然、勝子が呟いた。

 藤子(トーコ)も、聞き耳を立てるように何かを探っている。

「本当だ・・・・・・、レイノルド、何処だ、殺してやる、と叫んでいる」

 それを聞いて、レイノルドは、内ポケットから2枚の写真を取り出して、藤子(トーコ)と勝子に見せた。レイノルドが、ピーターと並んでいる写真だ。

「このピーターは、僕の部下だった人間で、今、私を殺そうとしている」

 そして、もう一枚。7人の、老人を含めた実業家たちによる世界地球議会の写真。

「この人達が、私たちを使って、これから生き残る人類を選別し、その上に君臨し、永遠の命を得た神になろうと、している人達です」

 勝子が、その写真を睨みつけている。その次の瞬間、アメリカ、ABコンピュータ社の屋上にいたピーターは、吹き飛びビルの下に叩きつけられた。そのビルの最上階の会議室が吹き飛び、そこにいた7人の実業家達は瓦礫とともに、ピーターの落ちた場所に覆い被さる。

勝子の怒りに触れた者、全てビルの外の地面に叩きつけられ、瓦礫に埋もれたのだった。


しかし、ピーターだけは瓦礫の中から、苦しみながら這い上がってきた。天を、吹き飛ばされたビルを睨みつけていた。

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