T.K トーコ DNA
横浜流人
第1話 母から続く戦い
20**年初頭
アメリカ カリフォルニア州サンフランシスコ、ABコンピュータ社の社長室で、CEOのレイノルドは、COOのピーターに命じた。
「夏までに終わらせろ、夏までに!だ。それ以上、実行を伸ばすな!時間はない」
そう言い放ってレイノルドは、天井を見上げ、一息ついた。
自分の何十年に渡る先端技術の世界標準技術の主導権争い、戦い、そして、その相手、日本の超能力者、藤子(トーコ)のことを懐かしんだ。
始まりは、ABコンピュータ社の前身であるACMが創り上げた大型コンピュータを日本の企業が、国家ぐるみでパクっている!という情報。それを阻止するためにACMの若い自分は選ばれ、日本の会社に入り込み、そして動いたのである。
みごと、日本のOL 藤子(トーコ)にしてやられた。
それからだ!日本の企業、藤子(トーコ)との戦いが続いていく。
パソコン、インターネット、プロバイダー、検索エンジン、cell phone(セルフォン) 、mobile phone(モバイルフォン)、と先端技術の開発、主導権争い、で戦い続けたのだ。
近年では、クラウドのシステム利用、IC体内マイクロチップ、AI人工知能、大型空間TV、等々、アメリカの企業、ACMと、日本のエフコム電気社は、パクリパクられ、世界の企業を巻き込みながら戦い続けたのだ。
AIやスパコン、それら全ての技術の基本的、土台となったのは、藤子(トーコ)の創り出した自動お勉強システム。藤子(トーコ)は、それを新人研修時代に思いつき、同じクラスの優秀そうな若者に制作させ活用した。
勉強嫌い、面倒な事は人にやらせる、そんな藤子(トーコ)の思いつき。そして、その後、ACMの最新の大型コンピュータの技術資料を翻訳して、そのシステムのコピーを創り上げるための作業が始まった。侵入操作をしていたレイノルドは、藤子(トーコ)達と一緒に開発することになる。コピー技術資料の英語から、日本語への翻訳システム、コピーを創り上げるため、それを開発したことからAIへの道が開けたとも言える。AIは、とにかく沢山の事例をデータベースに貯め込み、比較判断するやり方が主流となった。
アジアでは、国民にカメラとチップをつけ、位置情報と視線画像をとらえ、町中に溢れる監視カメラとともに、国民を監視、管理を可能にした国もあった。AIは膨大な個人情報と、画像情報から個人の動きを計算予測管理したのだ。
欧米では、個人の脳の信号をAIで解析返還し、人工的な機械を動かそうとしていた。宗教性、道義性などで、クローンやAIロボットの開発進展には後れを取ったのかもしれない。クローン作製への道義的反発は、AIロボットへの反発にもなった。
日本では、脳そのものをチップ化してロボットを作ろうとしていた。膨大なデータの中から瞬時に判断させようとしたが、どうもうまくいかない。創ろうとする脳そのものの完成形、目標とする完成形が定まらなかったのだ。
そこで、エフコム新人研修時代の藤子(トーコ)が創ったシステムの“お勉強システム”が判断を下したのだ。
勉強したほうがいいことは、勉強する。が、しなくても良いこともあり、それは勉強などしない。
なんでも、とにかく適当に選別する。
YES/NOではない。0でも1でもない。どっちでもない。取り合えず実行し経験してみて、正しくもない、いいかげんなデータも記憶として蓄えておく。膨大な量を蓄え、関連付けて、何でも瞬時に検索が可能となる。
いいかげんなAIと曖昧なコンピュータの組み合わせ。
レイノルドは強く思っていた。
(今度こそは、邪魔させない、最後の勝負。真似をされ、それを超える技術でコチラを潰しに掛かって来ることはない。これは最終章なのだから)
レイノルドは自分が神であるかのように考えている。AIによる、人類の選別。
(また、今年も熱い夏になるであろう。人々が、環境破壊、機構変動等を思い出す、その前に、生き残るべき人類を早く選別しなければならない。要らない者はいらないのだ)
(地球温暖化、地球と人類の崩壊。現実を指摘しそうな副大統領が出てきたので、適当な奴に大統領を変わらせ、副大統領も姿を消した。地球温暖化、人類絶滅の思想を人々から忘れさせたのだ。そして、このままでは、確実に地球温暖化・人類滅亡の最終章となる)
(自分たちは、人類絶滅前に生き残る人類の選別を行い、人の肉体の放棄による進化計画を、大衆に気づかれないように、進めてきた。世論、メディアという、最強最悪の邪魔が入らない様に、進めてきたのだ)
レイノルドは人類選別進化の計画を実行する。その最終段階に、マザー(AIコンピュータ)の管理する、人の脳のチップの開発、その移植先となる人型ロボットの完成を急がせるよう、世界の関係各者に指令を出すつもりだ。
人間の脳の信号を受け、動作をするロボットも日本の部品を多用して間近に完成するところまできた。
ナノモーターにマイクロコンプレッサー、ナノチューブ、マイクロ永久電池。
次々と完成させたのだ。
そのうえ一番肝心なのはパラレルワールド的なクラウドシステムの稼働だ。
レイノルド達は、様々な人の記憶・情報を溜め込むクラウドを完成させ、多くの人々と、実存世界の情報を溜め込んだ。それには多くの人類の参加が必要であったが、H(セクシー)で、無料で金儲けが出来る、という触れ込み、仕掛けが一番であった。
それに人は集まる。
そして、人権無視の個人管理をする体制の国家での実証実験。
女性には思いつかない仕掛けである。
女性には出来ない仕掛けである。
藤子(トーコ)は関わっては、これないであろう。
近年、コンピュータ大国である、アメリカ、日本は、既に大型コンピュータの開発を終え、超高速スーパーコンピューターの開発も終えた。そしてAIシステムの道筋を建てた。パソコンの開発も頂点を極め、安くコストを抑え製造し、販売し、利益を得るために、その製造からは撤退したのだった。製造は開発途上国に移管した。製造を移管するにあたっては、開発途上国も選別した。途上国の政府も、思いのままに金を印刷してつぎ込めば、インフレが起こり、人々の生活が混乱する、と予見できる様な国は避けた。金をなんぼでも作れる、そしてインフレを起こさず抑え込める独裁国家に世界最低コストでのパソコンの生産をまかせることにした。そして、低価格、コスト無視のパソコンをばらまき、世界の多くの国の人々を巻き込み、人類くまなくネットワークに繋ぎ、それら多くの人々のデータをマザーコンピュータに吸い上げるために、インターネット網を広めた。
インターネットは、もともとは、アメリカ軍の機密機能であった。レイノルドたちは、ある男を使って世界中の人々にインターネットを広める工夫をしたのだ。各メーカーのパソコンごとの様々に備わっていたオペレーションシステム(DOSの開発でも藤子(トーコ)との闘いはあった)の統一をし、SNS等を整備し、そして世界にインターネットを広めた。
次に、低価格になったパソコンすら買えない人々をどうするか?人類というカテゴリーから削除するのか?が問われることとなる。
7人の、老人を含めた実業家たちにより、その問題は話し合われた。そこで、ある若いIT企業経営者が、今ある技術を融合して、直ぐに出来てしまう技術、スマホ(スマートフォン)という機器を普及させることを考え付いた。ネットワークは、インターネットを普及させるにあたり、通信網を国の管理、開発から民間レベルに移管させてある。
あとは、VRのパラレルワールドに君臨するマザーシステムの管理するAI脳内チップを完成させること。そして、選別された人の脳を創り上げる。そこで、肉体を放棄させてロボット化すると、VRのパラレルワールドの世界と連携して、永遠の命を持つこととなる。
レイノルドは、マザー(AIコンピュータ)と連携する脳のチップ化、人型ロボットの完成を急がせるよう、世界の関係各者に指令をだした。
パラレルワールドに使われる仮想通貨も、現社会のキャッシュレッス化で、社会になじんできた。通貨、金を自ら作り出すものが、経済を制す!である。レイノルドは、人の命も、これも、牛耳るつもりだ。
レイノルドは、これについて思い出すことがある。何十年か前に、日本のコンピュータ会社の新人研修の一環で、特許を考える宿題においてキャッシュレスICチップを思いついた奴がいた。危うく、それの特許を取られるところであったのだ。寸前のところで阻止できた。彼は、何と言ったか、南郷竜也(なんごう りゅうや)・・・・・・バカなのか、天才なのか?よく分からん奴であった。
20**年 春
南郷勝子(なんごう しょうこ)は、エフコム社の研究員。人口知能の開発を担当している。
長い黒髪をポニーテールに束ね、パソコンにむかう。与えられた英語の資料を、ただひたすら打ち込む。打ち込む、打ち込む、叩き込む。
この会社で、昔、誰かが、なぜか英語日本語翻訳システムを創る段階で、AIシステム、人口知能の制作の基礎を築いた、と言われている。
兎に角、成功パターンのデータベースを築くこと。
その思想のもと、作られたAIシステムは、対戦型ゲームには威力を発揮した。コンピュータとコンピュータを戦わせ続ける。そして、勝利のパターンをデータベースとして、溜め込む。更に闘い続ける。人が、1試合行う間に、何万回もの対戦経験を積み、勝ちパターンを積み上げるのだ。
そのシステムは、将棋、囲碁、チェスでは完璧に人を超えた。しかし、そのシステムでは人間の通常の行動をパターン化が出来ていない。
人間は、負けることで得る物があるからである。
人間は、嫌なことを忘れ去ることが出来る。
AI知能の今一歩は、そこで立ち止まっている。その開発推進を、南郷勝子は任されているのだった。 任されているとはいえ、データの打ち込みばっかりではある。ある時、勝子の入力しているキーボード上で、手が滑った。すると、使用しているスパコンの入力言語が変わってしまったのだ。打ち込むはずの言語は、英字表記に意味なく変わったかにみえた。
システムが突然変わった。
オペレーション・システムが総入れ替えされたようである。
ディスプレイに、システム名が流れる。
T O ― K O OS(トーコ オペレーションシステム)
南郷勝子の手は止まった。
(母の名?トーコか?)
画面の右下に、このシステムの作者、もしくは、会社名が出てくるはずと読んだ。そっと、目をやる。
Ryuya.Nanngou
南郷竜也 勝子の父の名である!
システムが、勝手に動き始めている。通信ネットワークを選択を促すのではなく、勝手にネットワークに繋いだ。そして、勝手にリンクし始めたのだ。
中国にある、世界最速級のスーパーコンピュータ。
日本政府機関のスーパーコンピュータ。
そしてアメリカのABコンピュータ研究所のスーパーコンピュータ。
相手に知られないように、慎重に繋いでいる。というか、潜り込みハッキングしているようだ。
勝子は叫んだ!
「何なんのよ、このシステムは!」
(父親の名で造られたなんて、絶対、ロクなもんじゃない。変なもん動かしちゃった~)
ESC、ESC、エスケープキーの連打。
「止まれ、止まれ、とまれ~!」
言ってもダメな様なので、打ち込んでみる。
Tomare 止まれ 停止
システムは、止まらない!次々にハッキングのような形で、様々なコンピュータと繋がっていく。
「まずいぞ、マズイゾ、絶対ヤバ~イ!」
S t o p
t o m a r e
次々とコマンドを、お願いを、打ち込んでみた。それでも、動き続け、どんどんデータを更新しているようだ。止まっては、くれない。
また、どんどん、データを収集しているようだ。あらゆる処で繋がったコンピュータの中にある、ビッグデータを、データベースごと吸い取っている。
t a s u k e t e
と今度は打ち込む。
「止まった!」
コンピュータは通信をやめ、データの吸い上げを止めたようだ。
画面が、カラフルにぐるぐる回転して、違うソフトが起動したようだ。
画面には、
「日英翻訳システム」へ、ようこそ
未完成なので、間違えたらゴメン
自分で、辞書データベースを、直してね!
と出てきた。昔の字体である。四角い点で造られたギザギザ文字である。
南郷勝子は、ため息ひとつつき、額の冷や汗をぬぐいながらパソコンの電源をシャットダウンして席を離れた。
「ロクなもんじゃない!帰ったら父にどういう事なのか?聞いてみよう」
そう、口にしながら南郷勝子は、休憩スペースに向かった。熱いブラックの濃いめのコーヒーをロボットカウンターに注文して休憩用のソファーにひっくり返った。
一方、勝子のデスクでは、
シャットダウンしたはずのコンピューターに、勝手に電源が入った。
再び、トーコ・オペレーションシステムが動き始めた。
今度は、アメリカのABコンピュータ社のコンピュータにだけ繋がった。そして、何やら探り始め、何処かにメッセージを送って、自らシャットダウンした。
しばらくして、 ABコンピュータ社のレイノルドCEOのモバイルフォンにメッセージが届いた。
コラ!ヤメロ!オコルゾ! From トーコ
レイノルドは、直ぐにピーターに計画の中止を告げた。
(また、トーコに邪魔される)
レイノルドは、藤子(トーコ)に話しかけるようにモバイルフォンに問いかけた。
「これから、どれだけ、熱い夏をすごすのだろう・・・」
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