静寂

部屋に響いたあの声はもう聞こえない。何度も壁を反射し、私の元へと帰ってきていたあの嬌声は今はどこで響いているのだろうか。一人で眠るために購入した寝具は独りで使うにはあまりに広すぎるように感じた。君と過ごした日々も、今はもう過ぎ去ったもので、小部屋からは私以外の気配を感じ取ることができない。静かすぎる夜は孤独をより増幅させる。何度君を忘れようと思ったか。何時も忘れることができなかった、君の声、容姿、仕草、香り。代わりなんてなかった。多くの人と息を交え、体を重ねるたびに君をより強く意識させられた。私は私でしかないのに、君はあまりにも大きすぎた。君の中の私は私の中の君ほど大きい存在であれたのだろうか。不安な気持ちは心の奥底を強く揺さぶり、幸福な感情をふるい落とすと、強い不快感のみを残し、私の心にまるで硝子の破片のような鋭利さをもって突き刺さる。とめどなく溢れ出す感情は血液そのもので、溢れ出すほどに命から遠ざかる感覚に陥る。しかし心の血液は瘡蓋など一切作らず、私の一部であるにもかかわらず、私自身を死に至らしめるまで溢れ続けるのだ。傷は深く、閉じることはない。愛をもってはじめて瘡蓋となり、心の傷すら癒すことができる。そして不完全な愛は膿となり癒えることのない傷を残す。愛はあまりに強大で、それは時として凶器にもなり得る。正しさを持って美しさを成す。安易に振りかざした愛はあまりに不可逆的すぎて、私には耐えられるようなものではなかった。もし、機会があるならば、もう一度愛を知りたい。

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躁鬱 @wanichi

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