第29話 新パーティーメンバー(臨時)がイケメンだからムカつく件について②



「へぇ中谷は弓師なんだね。遠距離攻撃タイプだ」


 中谷のパーティー臨時加入も決まり、ひとまず彼のステータスを見せて貰うこととなった。

 ステータスはレベルに見合った数値で、ジョブ自体も特段珍しいものではない。まぁ、遠距離攻撃タイプは色々と役に立つ場面が多そうだが。この作戦が終わって鍛えたら戦力になるかもしれない。


「おう。必要な時はどんどん頼ってくれっ!」

「あっ馬鹿。そういう言い方すると……」


「あら殊勝な心がけね?」


 ほらこのスパルタ様が来ちゃうじゃん……。

 斎藤がまた鼠を見つけた猫みたいな目をしている。ムンク君知ってるよ。あれに睨まれるとろくな目に遭わないって。

 と言うわけで僕は逃げる。三十六計逃げるに如かずってね。


「あらどこに逃げようとしているのかしら産業廃棄物……北原君は?」

「なんでそこまで言って、言い直したんだよ……」


 相変わらずキレッキレな齋藤の毒舌には空いた口が塞がらない。

 そんな僕らの会話を打ち切るようにドローンが前に出た。


『中谷君のステータスは一度置いておいて、作戦のおさらいをしようじゃないか』


 いつもすまないね。まぁほら、しょうもない会議や無駄話とかは日本人の習性みたいなもんだし。今回の話の脱線も日本人だから致し方ないと言えるのだ。


『詐欺師君の戯言は置いておくとして、基本的に今回は電撃作戦だ。複数の自動操縦トラックで突撃し混乱に乗じて敵の無力化。可能なら敵の頭を詐欺師君達の力で無力化出来れば、なおいい』


 それは作戦と言っていいのだろうか。そもそも自動操縦トラックなんてどこから調達するのやら。まぁ、自宅警備員氏も斎藤もお金持ちそうだしなんとかなるのか。

 当然、自分の事を良識派とほざく四条は声を張り上げた。


「ちょっ、ちょっと!? それ本当にやるつもり!?」


 四条の発言に中谷も頷く。この程度で青ざめるとか先が思いやられるね。ていうか四条に至ってはトラックどころかオークを引き連れて突撃したことあるじゃん。


「こちらは数が少ないから奇襲した方が効果的と言うことかしら?」

『あぁ、その通りだよ斎藤君。いいかい四条君、こちらには幸いレベルというアドバンテージがある。こんな無茶苦茶な作戦でも君達からすれば余裕だろう。というか君、前にオークを連れて突撃したじゃないか』

「うっ……それを言われると何も言えなくなるわ……」


 四条は苦虫を噛み潰したような表情をして黙りこくった。

 まぁ僕も文句は沢山思いつつも、実際悪くはないと思う。

 というかこの少ない人数でやるにはこれぐらい事をしなければ成功するようにも思えない。

 僕達に関しては危険性もかなり少ない。レベルアップにより過度に強化された僕らの体は直接激突されるわけでもないし、トラック突撃の衝撃程度なら余裕で耐えられるだろうしね。


『まぁ、私も流石に全て上手くいくとは思っていないよ。特に彼処のボスとは対峙を免れないだろうよ』

「ちなみにボスの能力は?」

『巨大化するということ意外は不明だ』


 自宅警備員の言葉を遮るように中谷が震えた声を上げた。


「ま、前に一度だけアイツの戦闘を見たことあるんだ。アイツは大きくなってモンスターを握りつぶしたんだ……」


「何それ怖い」


 そもそもこの情報自体、中谷のリークだったらしい。この怯えようを考えると嘘ではなさそうだ。


『というわけで二チームに分けようと思う。斎藤君と幼女君には魔術で雑魚の殲滅及び敵の足止め、幼女兄(義理)の解放。そして詐欺師君と四条君にはそのまま屋上に行きボスと戦ってもらう』


「ええ、分かったわ」

「オッケー!!」

「はいなのれす!」


 女性陣は特に抗議するわけもなくドローンの提案を受け入れた。四条に至ってはポキポキと指の関節を鳴らしている始末である。この子どんどん好戦的になってないか?

 しかし、このまま話を進めさせてなるものか。なんとかしなければ。


「はいっ!!」

『はい詐欺師君!』


「僕とか基本コミュ障で陰キャのクソ雑魚なのでボス戦は斎藤様にお譲りする所存であります!!!」


『悪いが答えはノーだ。言っておくがこの作戦の要は詐欺師君、君だ。君の詐欺術で翻弄し、その鎖で敵を無力化する。四条君はその護衛、斎藤君達は露払いというわけさ。問題なければ十分後に作戦開始だ』


 え? なんて?


「そうね合理的な作戦だわ」

「ああ、もう分かったわよ! やってやるわ!」

「が、がんばるのれす!」


 え、なんで?

 正気かこいつら。僕を作戦の中心に据えるとか正気か。ていうか僕の意思イズどこ?

 でもなんかもう決まってるっぽいよなぁ。これ以上反対したところで斎藤に氷の目線を注がれるのが目に見えている。



「お、俺は?」

 

『中谷君はそうだな……まぁ幼馴染を助ける事だけ考えればいいさ』


 中谷はフンッと鼻息を鳴らして意気込んだ。空回りしないといいけど。

 意気込む中谷を横目で見ているとドローンがおもむろに近づいて来た。


『じゃあ詐欺師君はトラックの上に張り付いて突撃する係もよろしくね』


 へ? なんて?

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