第28話 新パーティーメンバー(臨時)がイケメンだからムカつく件について①
翌日、目を覚ますと斎藤ヴィレッジに保管してある保存食で手早く食事をすませた。その後、一同は広くて落ち着いて話せるリビングに集まる。
『さてさて全員集まったな。諸君、ぐっすり眠れたかな? うん眠れたようだね。ではさっさく本日の作戦についてブリーフィングを始めようじゃないか』
ドローンはドローンの癖にハキハキと喋っている。本体は今だ部屋から出てこない模様。
まぁ、全員集まったところで僕は全然寝れなかったし、幼女ちゃんもまだ目を擦り欠伸をしている。
他の連中はどうかとおもむろに視線を回す。
しかし、神の悪戯かまさかの斎藤と視線がバッティングしてしまった。
一瞬なんとも言えぬ間が出来、お互いに顔をそらした。
ま、まぁ、その。昨日の出来事を思い出せば仕方ないと思うし、僕自信どう反応すべきかまるで分からない。童貞だからね。
これは不味い別方向を向くと、今度は四条と視線がバッティング。そして例の如く彼女は頬を赤らめて視線を逸らしてしまった。
なにこれ。
なんなんこれ?
いやまじでなんなんこれ?
「お兄ちゃん達どうしたんれすか?」
『青春だねぇ』
うっさいぞ、そこ。
こういうのは日本列島を吹き飛ばす核弾頭ばりにデリケートなんだから丁重に扱ってよね。
◆
『まず紹介しよう本作戦の協力者中谷君だ』
ドローンに連れられて見慣れない男が顔を出した。男は僕らを見ると「う、うす」と軽く会釈する。
こんな頭のおかしい作戦に参加する命知らずがまだいたのか。というかイケメンなのがムカつきますね、はい。
「あれ? あんた確かこの前襲ってきた奴等の中にいなかったけ。なんでこんなところにいるのよ」
僕の記憶領域には一ミクロンも存在しながったが四条には見覚えがあったらしい。
「あぁ、そう言えばこの前に北原君がろくでもないことした連中ね」
「ちょっと待ってよ。僕も確かにアレだけど斎藤も相当エグいじゃん。身ぐるみ全部剥いでたじゃん」
「コホン、貴方のと違って私のは必要措置よ」
それもどうなんだろうか。
彼女の言いたい事も分からなくもないがやりすぎだろ。世が世なら彼らは猥褻物陳列罪でお縄についていた事だろう。
「……」
いやぁ流石に気まずい。襲ってきた向こうが悪いとはいえ制裁を加えた手前、どう声をかければいいか分からない。
まぁ、何もしてなくてもコミュ障なので話しかけれないんですけどねっ。
『君達は相変わらずだねぇ……色々あっただろうが過去は飲み込もうじゃないか。彼は協力者だよ。中の事情にも明るいしね』
彼女のドローンが集めた情報だけでも十分だろう。しかし確かに内部の事情に詳しい人間がいれば情報の精度はより上がる。
まぁその情報が信用出来れば、だが。
「え?」
四条が小さい声を上げた。
中谷が何も言わない僕らに不安を感じたのか、いきなり膝まづいて額を地面に叩きつけたからだ。
「都合が良いのは分かってる。でもアイツはっ! アイツは何も悪くないんだ。あんな目にあって言い訳がないんだ!! 頼む!! 俺の事はどうなってもいいからアイツを、俺の幼馴染を助けてくれ!!!」
あまりの必死さに面々は喉を鳴らした。
しかし、ドローンだけはそんな空気なかったかのような口調で補足の説明を開始し始める。
『とまぁ健気な彼は奴等に好き放題されている愛しの幼馴染を助けたいが為にここにいる。特に詐欺師君は気にしているだろうが私の方で裏はとれているから安心するといい』
僕のことをよくお分かりで。
こういう場面での敵側勢力の加入は裏切り者と相場で決まっているのだ。
まぁ中谷の必死さは嘘とは言いがたいし、自宅警備員氏の言い様は引っかかるものがある。女の子が好き放題……ね。 ろくでもなさそうだ。
『私としては彼を本作戦に参加せたいのがどうだろうか』
「北原……俺はお前が虐められている知っていて見過ごした。そんな俺がお前に頼み事をするなんて虫が良いって分かってる。だけど……俺にはもうこれしか……!」
そう言えば同じ学校の生徒だったね。
まぁ彼の言い様も必死で嘘とはとても言い難いし、彼自体に直接的な恨みがあるわけでもない。イケメンなのはむかつくけどさ。
さて、どうしたものか。
「いいんじゃないかしら。道案内人はいるに越したことはないと思うのだけれど」
それもそうか。
確かに斎藤が言う通り内部に詳しい人間はいるに越したことはない。その有無によっては作戦の成功率は大きく変わることもあるだろう。
「まぁいいか。裏切ったらレベル差はかなりあるしどうとでもなる」
「アンタ、本人の前でそういう事を言うの止めなさいよ」
なんか四条に窘められた。
おためごかしの虚言を吐くよりはましだと思うんだけど。
ほら、斎藤も僕の考えには頷いているし。
「はぁ……北原達にそういうのを求めたアタシが馬鹿だった……」
ごめんて四条。なんか最近彼女もため息を吐くのが多くなっている気がするなぁ。ため息を幸せが逃げるとか言うし今度注意しといてあげよう。
それはともくかこのまま話を続けてもいつもの如く、僕が責められかねない。強引に話を打ち切り中谷の方を向いた。
「ま、ともかくそういうわけなんでよろしく」
「ありがとう……! ありがとう……!」
中谷は大粒の涙を流し僕の手を強く握った。
なんというかコミュ障だから男女問わずこういう時どういう反応すればいいか分からんなぁ……タスケテ! 四条エモン〜〜〜!
冗談はともかく臨時的ではあるがパーティーメンバーが増えた。元々うちは頭数が少なかったから有難い事だね。
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