第20話 あれは伝説の閃光幼女!?
「ブマアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
眼前にはそれはそれは怒りの感情が滾る
「これなんか不味くない?」
「えぇ、まさに大爆発三秒前って感じね」
「ちょ、ちょっと!? ていうかもう爆発してんのよ!? てか北原もアーちゃんも何でそんな余裕そうなのよ!?」
むしろ逆で現実逃避しているだけなんだよなぁ。
『君達……そんな余裕そうな状況じゃないようだ』
「赤くなっていくのれす……?」
褐色の肌はどんどんと淀み黒ずみ赤黒く変動していく。これでは
「何よ色が変わったぐらいで意気がって!」
「ちょ、それフラグ」
怒りに委せて振り回す大斧を四条がまた同じように受け止める。しかし、先程のように上手くいくわけもない。一瞬拮抗したと思うと徐々に押されていく。
「こいつ、さっきより力が……! 増してる!?」
「駄目っ! 四条さん一度引いて!!」
「そんなこと言われても……! くぅぅっ!?」
どんどん押し込まれていき、ついに強引に四条は弾き飛ばされた。先程の力とは比較にすらならない。どれだけパワーアップしてんだよ。
「きゃあああ!?」
「四条!? くそっ止められない!?」
巨大獣は他には目もくれず四条へと歩みを進める。
なんとか進行方向とは反対に巻き付けられた鎖を引っ張るがびくともしない。むしろ逆に僕が引きずられる始末。
そもそも鎖の能力でかなり気力が吸われているはずなのに、その力は未だに衰えることはない。流石格上。底抜けのステータスに脱帽する他ない。
「あ」
「ブモオオオオオオオ!!!!」
四条の吐息は鼓膜を突き破るような咆哮で簡単にかき消された。巨大獣は敵を亡き者にせんと、その成人男性を越える大きさの戦斧を高く高く掲げ上げる。その斧の行き先はもちろん哀れにも地面にへたりこんでいる四条。
不味い不味い!
助けようにも僕は鎖で抑えるのに精一杯だし、そもそも距離が遠すぎる。斎藤も魔術の準備をしていたから今からじゃ間に合わない。万事休すか。
「美琴おねーちゃん危ないれす!」
諦めが頭を過ったその時、声とともに一つの閃光が四条の前を駆け抜けた。自分の耳を疑う。なにせその声は幼女ちゃん、神原楓のものだった。
「楓は閃光士。閃光だって追い越してみせるのれす!!」
目で追うのすら精一杯の速さで眼前を駆け抜ける。まさに閃光。
そして幼女ちゃんはどこからか取り出した短剣をそのままの勢いで巨大獣に突き刺した。
「ブマァ!?」
鮮血が吹き出す。
大したダメージではないにせよ、当然巨大獣は怒り狂いターゲットを幼女ちゃんへと変える。
しかし、怒りに委せて戦斧を振り回したところでこの速さの相手に当たるはずもない。ただアスファルトで舗装された地面を抉るだけだ。
速さは確実に幼女ちゃんの方が上。なら!
「幼女ちゃん! 出来るだけ
「北原君!」
「分かってるよ斎藤!! でも待って、多分後少し……後少しのはずなんだっ」
鎖から確実に大量のSPが僕に流れ込んできている。戦闘が始まりそれなりに時間も経過している。巨大獣がいくら強かろうが気力に底はあるはずだ。
くそ、早く早く! そろそろ効いてくれ!
追われる幼女ちゃんを待つしかない状況に奥歯を強く噛み締める。
「ブ、マァ……!」
ついに底抜けの体力を持つと思われた巨大獣かついに膝をついた。今だ。仕掛けるなら今しかない。
「斎藤! 今だっ!!」
「ええ! 『
斎藤が待ちわびたかと言わんばかりに、素早く詠唱を重ねていく。そして彼女の回りには焰が揺らめく弾丸が幾重にも精製されていく。
「
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
「ダメ押しぃ! これでくたばれぇ!!」
鎖を離し前へと駆け込み、巨大獣の懐へ。
そのまま籠手の左腕を天へと突き上げる。左の手のひらはちょうど巨大獣の顎下でピタリと止まった。
スキル【鬼砲】
ズンッと骨身に響くような轟音が鳴り響き、巨大獣の顔面は爆炎に包まれる。そしてそのまま仰向けに倒れた。
「これで倒れて欲しいものねっ」
肩で息をしている斎藤の願いが通じたのか巨大獣が立ち上がる気配はない。ほんとまじで立ち上がってくんな。
『レベルアップしました』
頭に直接投げつけられるような音声を聞き胸を撫で下ろす。
戦いの終結はレベルアップの通知音により告げられるのだった。
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