第6話 幼女先輩と一緒①

「や、やめるのれす……! もう、追ってこないで欲しいのれすよぉ!」



 小学生低学年ぐらいか?

 身に付けている衣服はボロボロで大事なところをあまり隠せてすらいない。 


 そんな幼女がわき目もふらず、必死に駆けている。その姿がたまらなくそそる。

 

 幼女が走っているのは住宅街のど真ん中だが、助ける奴は誰一人いねぇ。

 何せ誰もいやしないんだからな。そう世界が変わっちまったからだ。



「へへっ! タクさんほんと好き者っすねぇ」


「幼女とか変態過ぎてマジリスペクトっすよー!」


「おいおい、てめーらだって嬉しそうな顔してやがるじゃねーか」



 あぁ、楽しみだ。俺は女がこの上なく好きだ。だがそんな俺でもこの年頃の女はまだやったことがない。


 舎弟どもに嗜めた手前示しがつかないが、思わず舌なめずりしてらぁ。行儀なんか知ったことか。


 どんな声で泣き叫ぶだろうか?


 想像するだけで笑みが沸き上がる。

 年を喰った奴は駄目だ。達観して無垢さがたりねぇ。


 その点若いのはいい。

 何も知らない。知らないから恐怖が新鮮でたまらねぇ。



 なのに、空気を読まねえ馬鹿が一人。



「中谷ぁ! なんでオメーはそう辛気くせーんだよ!! 楽しい気分なのに台無しになるだろぉ!?」



「へ、へへ。すいやせん……何分緊張してるもんで……」 

 

 相変わらずひょろっちくてヘラヘラするだけの奴だ。みっともねぇ。

 ちっとは覇気を見せて欲しいもんだぜ! 



「たっくヘラヘラしやがって。まぁ、この前もお前緊張してふにゃふにゃさせやがってたもんなぁ!!」



 他の舎弟達がゲラゲラと大笑いする。下品な笑いだが、しょうがねぇ。あれは傑作だった。まさかあんな上玉の女の前でなぁんにも出来ないなんてな。


 スマホのムービーにとっとけば良かったと後悔するぐらいだ。




「いやれす!? こ、こないでれす!? こないでぇ!!」


 もう幼女との距離は目と鼻の先だ。すぐにでも捕まえられる。

 叫んだところでもう意味がねぇ。むしろ、それがそそる。あぁ、最高だ。たまらねぇよ。


 必死に駆ける姿が堪らなく滑稽でそそる。


 無駄な努力にもほどがある。こっちはいつでも追い付けるのにな。



「助け……お助けれす……お兄ちゃん……」



 そんな呟きも無駄だ。そろそろ捕まえてやるか。

 ついに触れられると心を踊らせながら手を伸ばす。



 しかし、俺の手が幼女に触れることはなかった。


 俺の手がその無垢な体に触れようとしたその時、





 ーーーー




「ハイハイ。通りすがりの正義の味方様ですよっと」



 助けての声に呼ばれちゃあ仕方ない。しかも、幼女だ。


 ヒーローよろしくマントを風になびかせて颯爽と北原ムンク参上!!


 いや、マントなんかつけてないんですけどね?気分ね、気分。つまり心のマントだ。ほら男の子なら誰でも持っているやつだよ多分。



 「た、助けてくれるれすか……?」


 「そうそう。そうだよ~お兄さんは怖くないタイプのお兄さんだよぉ~」


「あぁん!? なんだぁ!? てめぇ!!」



 そんなしゃがれたようなダミ声で叫ばれても……

 幼女は怯えて僕の背中に隠れた。なにそれ萌える。


 しかし、それに比べてこいつら目付き悪いなぁ。

 僕が言うのもあれだが顔つきが悪い。ステレオタイプのヤンキー顔というかね。ヒラメのごとくノッペリしてたり、サンマのごとくシュッと細かったり。


 リーダー格もまたB系というか、変に生やした似合わないアゴヒゲに帽子を後ろかぶりしてるし、いかにもって感じ。タコではない。



「いやぁ、ほらあれだよ。幼女に手を出すのは不味くない? PTAとか最近やばいよ? 自分の教育能力の無さを棚にあげてアニメとか規制するし」



 最近のPTAは凄いぞー。気に食わないものは何がなんでも破壊みたいな。きっと、彼らの前世はゴ○ラ的ななんかなんだろう。




「てめぇ馬鹿にしてんのか!! 兄貴が誰か分かってのかぁ!!? 兄貴はなぁ! 地元じゃすげぇんだぞ!!」



 で、出た~~~


 地元じゃとか言い始めるタイプのヤンキー。そもそも、その発言だって地元以外じゃ大したことないってことじゃん。

 このタイプは見覚えがある。あれでしょ、すれ違うと無駄に挨拶しろやとかイキるタイプのやつ。





「北原君格好つけすぎよ」



 斎藤氏はいつもクール。


 遅れて斎藤と四条が登場した。どうせなら、ヒーローポーズ的なのをして欲しいが、何も言うまい。


 そんなこと要求すれば命が危ういのだ。まじで。この子たち加減知らないから……



「げっ こいつら一応レベル十ぐらいある……」



 解析スキルを発動させたのか、四条が露骨に嫌な顔をする。それ女子がしていい顔?



「うげぇ……ってことは、ガチャ産の武器もってるってことか」



 まじかーガチャ産持ってるって少し厄介だなぁ。ガチャ武器は色々と未知数だ。まだ見ぬSSRとか持ってたら危ないのはむしろ此方かもしれない。




「へへっ そういうこった!! 大人しくしてりゃあ痛い目はみねーぜ」


「兄貴! 男はあれですけど他の女は上玉っすよ!?」


「へへへ、落ち着けよてめぇら! ちゃんとやらせてやるからよぉ!」




 まぁ、流石にないか。


 なんというかもう三下感ぱないし。


 もうね……武器取り出してイキッてるところとか見てらんない……こっちが恥ずかしくなるわ……



「やっておしまいなさい! 斎さん! 四さん!」


 僕はどこぞの印籠を見せるだけで敵を倒せるお偉いさんの如く叫んだ。



 え? 僕?


 やだなぁ僕紙装甲だよ? ガチャ産武器持ちと戦うなんて嫌に決まってるでしょ!!




「北原君……」


「北原……」




 え? 何このダメ男を見るようなこの目線……


 い、嫌だぞ! 僕はやらないぞ! 働けっていっても働かないぞ!!! 絶対に働きたくないでござるぅ!!!



 ……


 …………


 ………………



 やればいいんでしょ!やればーーー!!!


  

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