第4話 銀行強盗してる僕もどうかと思うけど、世の中にはもっとどうしようない奴等がいる
「この銀行も他の場所見たく人の気配はないっぽいね」
「えぇ、恐らく避難したのでしょうね」
「アーちゃん、一応ネットの書き込みだと避難してるって話みたいよ」
僕らが銀行に入ると、強盗が目的なのに特に歓迎されることもなかった。
僕だったらこんな不遜な集団、鉛玉の一つでもプレゼントしてやるね。
「先に進む為にもここで戦力強化したいところね」
「……そうよね。外にいる奴等は強すぎるもんね」
斎藤の言い分ももっともなものだ。四条はまだ若干気まずそうにしているが、僕は概ね賛成だ。
まぁ、僕にそもそも罪悪感なんてものは欠片もないがそれ以外にも今回は理由がある。
あの日、学校から出た僕らは目的地を目指すものの迂回ばかりをしていた。
直線距離で斎藤の言う拠点まで行ければ良かったのだがそうもいかなかった。
モンスターの格が違ったのだ。
学校を出るとそこらに徘徊しているモンスターは低くて
当然太刀打ち出来るわけもなく必死に逃げることとなった。
特に人が集まりそうな市街地は酷い有り様だった。市街地には
まぁ、つまりとても厳しい現実感溢れるクソゲーだったわけだ。
結局迂回を繰り返すことで日に日に鬱憤が溜まっていた僕はストレス解消にとガチャをぶんまわすことになったのだ。
ムシャクシャしてやった、反省はしている。今後も繰り返すと思う。
話が少し逸れたが、手っ取り早く強くなるために銀行で大金を手に入れてガチャをブン回せばいいのだ。
「ぬふふ……これでガチャ回し放題ぃ……」
「北原が滅茶苦茶キモい笑顔浮かべてるぅ……」
「全然懲りてないわね……この粗大ゴミほんとに沈めてやろうかしら……」
いやいやいや。
四条と斎藤はボロクソに言うけどガチャで上手く当たりを引き当てればそれだけで戦力が強化される。
つまりこれは必要な行動なのだ。だから僕の爆死も無罪にならんかなぁ。ならんよなぁ。
「ここが金庫っぽいね」
建物の奥の方には、他とは明らかに作りが違う部屋があった。重厚感が漂う壁と金属の扉。鍵穴も縦にズラリと並んでいる。
「流石に簡単には開かなそうね」
「アーちゃんの魔術は?」
「駄目よ。私のだと威力が高すぎるもの」
斎藤は四条の問いかけに首を振る。
確かに六魔天に放ったあの一撃を使えば壊せないことはないだろう。
しかし、仮に壊せたとしても中の金まで跡形なくしてもしょうがないのだ。
「うーん、どうしたものか。僕だと流石に火力不足だし」
「退いてなさい北原!」
「え、ちょっーー」
「でりゃああああああああああ!!!!!!」
気がつけばアイテムボックスから取り出したであろう大斧を四条が振り上げていた。
え、ちょ!? 何やってんの!?
ガシャアアアアアアアアアアア
鼻先を斧がかすったと思うと、次の瞬間騒々しい金属の破砕音が轟いた。
てか、鼻かすった。ほんとまじで怖かった。ていうか若干チビった。
「えぇ……いきなりバイオレンスすぎるでしょ世紀末かよ……」
「何よ文句ある? まどろっこしいのは嫌いなのよ」
文句を垂れ流す僕が不満なのか、不機嫌に眉を潜ませる。いや、今回はひどいでしょ。
「四条さん……流石に私も引くのだけれど」
「ね、引くわー」
「二人揃って酷くないっ!?」
四条はショックを受けているようだけど、今回は擁護のしようもない。
ほんと引くわー。
ーーー
「さてさて大金さん達とごたーいめーん!」
何はともあれ、一応四条のおかげで金庫の鍵は壊されて扉は開くようになった。
期待を胸に秘めて、鼻唄混じりで重い扉を開けた。
そして、閉めた。
「あらどうしたのかしら北原君?」
「そうよ! とっとと中を見せなさいよ!」
二人の疑問も当然の事だ。しかし、僕はこう言わざる得ない。
「いやぁ……多分中は見ない方がいいんじゃないかなぁ?」
「勿体ぶらないでいいから見せなさいよ」
まぁ、こうなるわな。仕方ないか。
四条は僕を押し退け勢いよくドアを開いた。
「なっ」
そして唖然とした。まるで信じられないようなものを見たかのようだ。
「不愉快極まりないわね」
遅れて中を覗いた斎藤も同じような反応だ。
「見て気分の良いもんじゃないよなぁ……」
金庫の中は血と生臭い空気に満ちていた。余りの臭いに胃の中をリバースしかけるほど。
金庫の中には女性がいた。生きていない。
しかも、全裸に近い形で。
服を剥かれ、汚され、傷つけられ、そして体を動かせないように拘束され……道具でいたぶられ続けた果てに殺された女性達だ。
もちろん、金庫の中に目当ての金銭は一切無い。綺麗さっぱり憎いほどからっぽだ。
その胸糞悪い光景に僕は斎藤が銀行に向かう最中、神妙な表情をしていたのか、ゆっくりと理解していくのだった。
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