第3話 デストロイな世界と銀行強盗に勤しむ僕ら
「なによ。北原全部倒しちゃったじゃない」
銀行までのルート安全が確保出来たので遅れて四条と斎藤がやってくる。その佇まいたるや、重役出勤もなんのその。
しかも、片方のツインテール巨乳ツンデレさんはやや不満顔という。ふんっと鼻息を吐き出す動作がやたらとツンデレヒロインっぽい。
いや、僕にはデレとか無いんだけどさ。
「えぇ、むしろ褒めるところじゃないの?」
一人で二体も倒したのだから貶される言われわないんだけどなぁ。判定厳しくない?
もっと優しくして? 僕デリケートよ? 優しくして?
「しっかし、その武器はやっぱすごいわねー」
おい、なんだまるで僕が凄くないとでも言いたげなコメントは。何の反論もなく、まるでその通りなんだけどさぁ。
しかしこの武器は本当に凄い。正確には籠手だから防具なのかな? どっちでもいいか。
『鬼砲』というスキルを扱えるのも去ることながら、素早さの補正値が頭おかしい。
【戦鬼の籠手】
素早さ+100
先の戦闘だって、短剣を何度も突き刺せたことや鬼砲を即座に使えたこともこの補正値のお陰と言っても過言ではない。
装備してなければこうも上手くいくことはないだろう。
「えぇ、そうねーー油断さえしていなければだけれどね!」
遅れて登場した斎藤の指輪がキラリと輝く。
「『緊急発動』『複製』」
「『
鬼砲で死にぞこなっていた
「ガアアアアアッ!!!!」
しかし、僕の首に届くことはない。
半透明の銃弾のようなものが宙にいくつも出現したと思ったら、次の瞬間には狼に突撃していた。
斎藤の新技トリガーバレットだ。
ズガガガガッッッッ
まるで
六魔天との戦いで使用したのとは違い速攻発動出来る魔術だ。
しかも、指輪の力で増幅された一発一発。瀕死の状態でかわすことも耐えることも不可能だろう。
予想通り力尽きて倒れると、そのまま跡形もなく消えてしまった。
「サンキュ斎藤……でもやっぱり消えるんだよなぁ」
毎度このモンスターが消えるのは違和感が拭えない。
それは斎藤も同じようで怪訝な顔をしている。
「……」
四条も黙ってる。
あれ? 珍しいな。
大体戦闘が終わると喧しく斎藤と百合百合してるのに。
なんかあったのかな?
斎藤はなんか考え事で黙ってる。使えん。君が黙っちゃうと必然的に僕が話しかけないといけない感じじゃん。
ほっとけばいいと思うけどそうもいかない。こういう沈黙ってなんか居心地悪いんだよね。
「四条聞いてる?」
「えっ!? あ、あぁ、うん。アーちゃんの新技凄いよね!?」
「うん? まぁ、そうだね」
まぁ、そういことじゃなかったんだけど。少し気になるけど、心配なさそうだからいっか。
「さてと。二人とも準備はいいかしら」
斎藤は神妙な顔つきで銀行を見上げる。
? なんだろ。
「いやいや、斎藤は時々というか飛んでもないよね。いきなりこんなこと言い出すんだから。銀行強盗なんて驚いちゃったよ」
「それはあんたがガチャで有り金全部叩いちゃったからでしょうよ」
四条が半眼で僕を睨む。なんの言い訳も出来ない。僕にできることと言えばリカちゃん人形のように黙るぐらいである。
「まぁ、いいわ。遅かれ早かれこのことは試しておきたかったか」
「え、蛮族?」
「アーちゃん……」
「特に北原君にそういう見方をされるのは心外なのだけれど。別に変な意味じゃないのよ。まぁ、そこは中に入りながら話しましょうか」
外から見た感じだとこの建物に人の気配はない。恐らくモンスターが現れたことにより避難したのだろう。
しかし、建物に向けて歩みを進める斎藤の表情はやはりどこまでも神妙なものだった。
彼女だけが感じる懸念事項があるのだろうか。
「北原! ぼっーとしてないでいくわよ!」
「あっ、うん」
四条に呼ばれ、気がつけば斎藤は銀行の扉に手をかけているところだった。
まぁ、ごちゃごちゃ考えすぎてもしょうがないか。
とりあえず僕は疑問を飲み込んで銀行強盗に勤しむことにしよう。
ていうか、これ字面やっぱりやばくない?
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