第59話 六魔天さんと一緒!!!! ただいま!!!!

「あぁん?単なる雑魚であることに変わりはねぇが……てめぇ中々にいかれてやがんな」



 僕達は手の内を全てさらけ出し、叩き潰されても諦めず果敢に攻めた。

 しかし、アレストの拳撃は容赦なく僕達の体を文字通り削っていく。


 一応まだ四肢は繋がっているけど、所々肉が削がれている。


 痛くて意識が飛びそうなんですけど。


 そもそも、四条の必死な健闘がなければ僕はもう五体満足なんかは望めなかっただろう。


 まぁ、そんな状況なわけで敵さんの言い分はもっともなものだと思う。


 ほんと、なんで僕は生きてるのか疑問でしかない。




「へへ……僕も……そう……思うよ……」 



 もう息も絶え絶えだ。

 顔なんか血でぐちゃぐちゃ。

 もう視界はぼやけてはっきり見ることなんて出来ない。

 やはり、なんで今自分が立てているのかすら疑問しか浮かばない。


 既にうつ伏せでたおれてしまっている四条が羨ましく思える。


 いや、そんなことは思うのは失礼か。

 彼女は僕の宛があるかどうかも分からない言葉を信じて必死に戦ってくれたのだ。


 そんなことを思うのは彼女の奮闘に失礼にもほどがある。



「力は塵カスみてーなもんだが、気力はある。圧倒的な力を前に心が折れねぇんだから立派なもんだ」



「だったら、これでもう逃がしてくれませんかねぇ……」



 そんなこと言うならほんと逃がして?

 僕もう限界よ? 

 限界過ぎて限界越えちゃいそうな勢いまである。



「だが、力がねーなら無価値だ。どんなに正しかろうが力無き者の言葉に意味は宿らない。無力な奴に生きる価値はねー。それが世の常だ」



 ですよねー。そんな気はわりとしてた。



 思考を無理にでも明るくしたところで現実に与える影響は微塵もない。少しぐらいあってもいいんじゃないの?ほんと!



 そんな僕の願いなど露知らず、六魔天様はゆっくり歩みを進める。


 死神の足音が聞こえる。


 死が目の前に迫っている。それもどうあがいても回避が無理なやつ。



 もう、逃げるか?


 最初から逃げれば良かったかな?


 いや、最初から詰んでたんだよ。ここまで実力差があるんだから逃げれる可能性のほうが低かった。


 だから、戦う自体の選択肢しかなかったのだ。



 逃げれる気もしないけど、最後の可能性にかけて尻尾巻いて全力疾走で逃げれば万が一上手くいくかもしない。やけくそだやけくそ。

 そんなことを思いついた矢先、消えかけた蝋燭のようにか弱い少女の声が耳に飛び込んだ。



「北原ぁ……逃げてぇ……」



 あー、こりゃ逃げれないなぁ。四条さんそりゃないよ。

 はー、なんでここでそういうこと言っちゃうかなぁ。



 むしろ逃げにくくなるじゃん?



 狙って言ってる?

 いや分かるよ。君がいい奴で、本気で言ってくれてるのもさ。


 でもそんなこと言われるとほんと逃げにくくない?



 あぁ、くそ。

 ほんとボロボロじゃないか。女の子なのに身体中アザだらけだ。あれ、跡とか残らないよね?


 全く。人の心配じゃなくて自分のをしなよ。


 流石の僕もこの状況で逃げれるほど人間をやめてないしなぁ。




 終わりか?




 もう、終わりなのか?


 今度こそ?



 心臓が脈打つ。


 ドクンドクンと本当に聞こえると錯覚するぐらい何度も何度も脈打つ。


 途端拒絶の感情が洪水のように溢れ出した。なんとも諦めの悪いことだ。

 まぁ、このほうが僕らしくはある。あの黒ゴブリンの時だって諦めやしなかった。なら諦めてたまるか。




 まだ終われない。


 まだ終わりたくない。


 まだ終わってたまるか。




 四条を見捨てても後味が悪い。斎藤との約束だってある。



 何よりーー



 まだ僕は生きたい。そう強く思う。




「あ  ぁ  ん?」






 Break!! 


 Over System!!


 Extend!!


 Ability  Exceed!!



 うるさいうるさい。頭の中にカンガンガンとアラート音みたいなのが掻き鳴らされてる。


 そんなの知るか。其れどころじゃない。


 って、あれ?


 動きが全てゆっくりだ。景色はゆっくりなのに、僕の体だけは少しだけ速く動く。



 あれ?体が動いてる?こんなにボロボロなのに?痛みも感じない。なんで?


 まぁ、いいか。


 今は理由なんてどうでもいい。


 これなら。



 避けれる。見える。動きが全て見える。



 あまりにもゆっくりと動くアレスト。

 これなら苦なく懐に入れる。



 懐に入った。

 目と鼻の距離ぐらいに近づいた死の固まり。


 しかし、今は怖さはないと言えばうそになるがそこまでたいしたものは感じない。


 だって、こんなにゆっくりなんだから。この位置じゃ流石に首は狙えないか。



 四条の攻撃はほぼ傷を与えれなかった。なら、中途半端な攻撃では意味ないのだ。



 勢いを殺さず、独楽を回るようにぐるりと一回転。

 先程までろくに傷すらつけれなかったのに、スパッと綺麗な線が描かれた。こんな小さいナイフで。



 鮮血が舞う。


 てか、血が赤い。ゴブリンの頭とかいうから青とか緑かと思った。それとも、あれかな人間っぽい体だから赤なのかな?

 そもそもゴブリンなの? フリー○さん的な形態変化みたいな?感じなのかな?まぁ、いいか。



 ともかく通った。初めてまともに傷を与えれた。

 でも通ったけど浅い。もっともっとだ。


 こんなもんじゃ足りない。もっともっと動ける。やれる。

 今しかない。体の後遺症とか残りそうで怖いがそんなこと気にする余裕もない。


 この状態が続くことを願い、アレスト目掛けて更に短剣を振り下ろした。


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