え?詐欺師?世界がデスゲームになったけど適性ジョブがどう見ても不遇職な件について
第56話 六魔天さんと一緒。ボスがあまりにも強すぎるとやる気なくすから運営とかいるならゲームバランスを見直したほうがいいと思う。ほんとまじで。
第56話 六魔天さんと一緒。ボスがあまりにも強すぎるとやる気なくすから運営とかいるならゲームバランスを見直したほうがいいと思う。ほんとまじで。
「まぁあれだ。下らねぇご託なんざどうでもいーんだよ。とにかく戦ろうぜ!」
ゴブリンの首領は獰猛な笑みを浮かべばかりだ。ただただ楽しそうに。
もうね、アレストさんね。夏に虫網担いで草原を駆け回る少年かのごとく瞳が輝いてるのね。いや、もうこれバーサーカーじゃん。
そして、彼はおもむろに足に繋がれた鎖を引きちぎった。
えっ 鎖ってそんな簡単に壊せるものでしたっけ?
「というわけで四条様。僕のこと滅茶苦茶守ってください。いや、ほんとマジで。僕紙装甲なんで」
「あんたねぇ……」
呆れてゴミを見るかのような目付きの四条氏。いや、ほんと何度もごめんね! クズで!
でもあんなの正面から無理。鎖とか引きちぎる系のゴリラとか無理。ムリムリカタツムリ。
四条とアイコンタクトを交わす。
彼女との付き合いは決して長いものとは言えない。それでもこの数日命をお互いに預けてきた仲であることも確かなことだ。お互いがどのような場面でどういう動きをするかどうかなんてことはある程度把握している。
「秘技! 影分身の術!!!」
まぁ、そんなものはなく単なるスキル虚栄心だったりする。僕のあまり多くはないSPを使用することで発動し、虚像をいくつも作ってくれる素敵なスキルさ。僕本体を入れて五体。
しかも実は多少いじれる。
「一人滅茶苦茶イケメン風にしてるの腹立つわね……原型とどめていないじゃない」
うるさい。そこは意義を申し立てるよ。スキルみたく魔法に見えるようなのは夢と希望に溢れるものと相場で決まっているのだ。
したがって、少しぐらい夢を盛り込んだっていいじゃない。
「無意味! 果てしなく無意味!!」
ほんとうるさい。うるさいよこのツインテール。可愛いからって何言っても許されると思うなよ。
「まぁ、あれだ。あんまり奴さんに気を使わせて待たせるのもあれだし、戦りますかね」
その言葉を合図に虚像たちは大地を駆けだした。
虚像の優位は本体が何処にいるか分からないことにある。
だから僕もこの集団に仲間入りさせてもらおう。
「奇妙な技を使うな。足音がすると言うことは実態が有るのか?」
アレストはものは試しというお手頃な感覚で拳を水平に突きだした。虚像なので拳はなんの感触も得ずにすり抜けるはずなのに消し飛んだ。
ええ……おかしくない? あれ。
要はホログラムみたいなもんだよ? それがなんで消し飛ぶのさ……
「おお、虚像だったのか」
ハズレだったのに特に気落ちした様子はない。虚像なんて何体あったところでどうにもならいという優位性の表れだろうか。
というか、そんな簡単に物理現象をねじ曲げないでほしい。
虚像だったのかじゃなくてさ。
ふつー! ホログラムは消し飛ばないの!!! ふざけんな!!!
虚像を襲いかからせることで、ダメージを与えることは出来ない。
だが意味はある。
「ーーがら空きよ!!!」
無防備な背中。手を伸ばせば触れれる位置まで接近した四条が大斧を轟音と共に振り下ろす。盛大に窓ガラスやらコンクリートやらが壊れる音。
吹き飛ばされ、校舎の壁を突き抜けて大きい穴が空いた。
「よし! まず一撃が入ったね」
「ま、アンタも中々いい動きだったわ」
四条とハイタッチ。
何だかんだで洗練されたコンビネーションだよね。多分この程度では倒せないだろうけど、繰り返していけばなんとか……。
「嘘……全然ピンピンしてるじゃない……」
四条の声音が震えている。声ぐらいならまだいいね。僕は足がガクブルしてる。
「まじですかよ……」
視線の先にはコキコキと首をならして平然としているアレスト。まるで、マッサージでも受けてように上機嫌で、鼻歌混じりなんですけど。
あの攻撃で無傷?
正直僕とかが受けたら背骨とかバッキバキですよ?
「き、北原……」
いつもは強気な彼女も卒倒でもするのかというほど青ざめている。気持ちは分かる。僕だって四条に軽口を返せないぐらい頭が真っ白だ。
まぁ、こんな時でも脳だけは極めて冷静だった。現実逃避させておくれよ。
冷静な脳が教えてくれるのはただ一つの事実。それはあまりにも尊大にそこにあり、揺るぎようもない。
天地がひっくり返ろうが僕ら2人では一縷の勝機すらないということだけだ。
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