第51話 ネクロマンサーさんって噛ませ犬なこと多くて不憫だよね
四条が気づかなかったのも理解できない訳ではない。
ほら、この手のシチュエーションを題した漫画とかだと大抵止まるからね公共機関。
まぁ、まだダメージを受けてないだけかもしれないけど。変電所とか通信施設とか籠城とか出来そうだし。
それなら日本の社畜ってマジ怖い。こんな時も働くとかマジ怖い。働きたくないなぁ。
「まぁ、それはともかく。偶然にも悠君の連絡先がここにあります」
え? 友達じゃないよ?
実はさっきこっそり斎藤から教えてもらった。役目が終わったらこんなの速攻削除ですよ削除。
「北原ァ!!」
逢魔に優雅さは欠片もない。恋する乙女って怖い。
「ど~しよっかなぁ? ど~しよっかなぁ? ほれほれ」
くねくねと体を動かす。スマホを親指と人差し指で詰まんでぷらぷらと揺らして挑発。
いや、これ僕史上で最高にうざいな。四条の視線とか痛いし。
ていうかあれだから。やりたくてやってるわけじゃないから! っべー、楽しいー!
「何が望みだ?」
もはや口調すら崩れる逢魔。余裕がないね。いいねいいね、いい気味だ。
「んーそうだなぁ。僕らの安全って所だなぁ。あと、有り金全部寄越しな! おっと持ってないなんて言わせないよ? だって君大金持ちでしょ?」
「くっ……!」
苦虫を噛み締めたような表情をする逢魔。その表情とても好き。いい気分。
「早くしなよ? 指が滑っちゃうよ? ほらほら。あ、送り方が分からないとか言わないでね? そんなこと言ったら指が滑るから」
ほれほれほれほれほれ!
僕は本気だぞー! やっちゃうぞー!
「ぐぅ……! 送ったぞっ……」
『千歳から一万G送られました』
システム通知から逢魔から金が送られたことが分かった。
おほほー! 一万G! 日本円でいっせんまん!!! 笑いが止まらねー! 四条のゴミを見るような目とかどうでもいいー!
いや、ごめんね? クズで。
でもお金持ち沢山すぎてどうでもいいー。僕はクズでいいわー。
「くっ! これでいいだろう!」
おっと、お金に目が眩んでいて逢魔のことを忘れていた。
こちらの要望を飲んでもらったのだからそれ相応の対応をしてやるべきだろう。
さてとーー
「ポチとな」
ごめんね、僕わりとろくでなしなの。
送 信 ボ タ ン 押 し ま し た。
「「は?」」
二人とも信じられないと僕に視線を向ける。四条とか体がなんかプルプル震えてるもの。大丈夫かな?
「こ、このアホーーーーー!!! それが! ないと! 私達生き残れないでしょーがー!!!!」
激昂した四条が僕の首を両手で掴みブンブン振り回す。
ぐぅ……ぎぃ……やべぇ、死ぬ。
君、戦士なんだからゴリラみたいなもんなの自覚して? 僕とかすぐ死ぬからね?
「ゲホッ……ゲホッ……」
あーマジ死ぬかと思った。まじ四条、ゴリラ。
流石にやり過ぎたと思ったのか頬を染めてそっぽを向いてる。可愛いんだけどゴリラ属性のあるツンデレとかやべぇだろ……。
「まぁまぁ、落ち着きなよ」
「いやいやいや! 無理だから! 会長滅茶震えてるんですけど! 怒りが多分臨界点なんだけど! どうすんのよ、バカ北原!!!」
バカとは失敬な。
いや、ろくでもないこと沢山してるからバカかもしれないなぁ。
まぁ、それはそれこれはこれ。
「あんな音声で逃げ切るなんて土台無理な話だったんだよ。ていうか、そもそも鎖で僕を拘束した恨みとかもあるし。おあいこおあいこ」
そう。別に僕はあれを使って逃げようとは思っていない。挑発さえ出来たら良かったのだ。いや、ほんと一千万円もくれると思わなかったわ。わーい。
「そもそもステータスに相当のアドバンテージを持たれてる以上ちょっとした隙に殺されてただろうしね」
「そ、そりゃそうだけど……だからって」
四条はまだ納得いってないようだ。
まぁ、何はともあれ。
「……」
逢魔に視線を向けるとただただ立ち尽くしていた。影で覆われたその顔は表情が無く、よく分からない不気味さが見えた。
「殺す」
その言葉を皮切りに弾けるようにアンデットナイトは突撃をしてきた。
息を飲む。
ここまでは概ね予定通り……後は野になれ山になれ。神様仏様斎藤様!
何とかしてください! 南無三。
「は?」
逢魔はそんな間抜けな音を発した。そして僕も。
え、は? なんで?
アンデットはドパッというひときわ大きい破裂音とともに下半身だけになってしまった。腰から上の部分は抉れるように綺麗まっさら消えている。下半身のみがふらふらと何処に行くこともなく動き回るだけだ。
え? なにが?
四条は視線で「これがアンタの狙い?」と問いかけてくるが、違うとは思う。少なくとも斎藤が耳打ちしてきたことはこんなことではなかったと思う。
「なんだ少しは楽しめると思ったんだがてんで手応えがねぇ。ちっ、まだ手加減がうまくいかねぇなあ」
いつの間にか目の前には大男がいた。ギリギリ人間のカテゴリーに収まるような巨大な体躯だ。肌は赤に近く、人間かどうか判断に困る。上半身は何も身に付けておらず、その鍛え抜かれた筋肉が晒されていた。威圧感が半端ない。大胸筋とか大山脈かよ。
こいつがやったのか???
理解が追い付かない中、そいつは逢魔に一瞥すらせず振り向いて、こちらに問うてきた。
「んー、やっぱりなんも感じねぇなぁ。ったく、ここまでわざわざ来たってのにハズレってか? お。お前ら勇者って知らねぇか?」
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