第38話 斎藤さんの手口がえげつない件について。悪魔の生まれ変わりとか聞いても疑わないと思う。

 人気のない廊下に膝を落とすイケメン(微)が一人。

 表情を落とし項垂れているが、とてもショッキングな事があったようだ。

 こういう時に慰めたりしたら、恋とか発展するんだろーな。残念ながら僕は男だけど。

 まぁ、そもそもここには彼の他には加害者しかいないんですけどね。




「さらばギャルゲー君……君のことは忘れ……たい」


「馬鹿なこと言ってないでさっさと行くわよ」



 哀れな英雄に敬礼してたら窘められた。

 僕らの斎藤氏はいつでもクール。

 でもよくよく考えたら彼があぁなってる原因は大部分が君じゃん。



 ーーー






「で、脱出するにしてもこの体育館は信者達がうじゃうじゃして中々に大変だと思うけど……」



 ギャルゲー君はとりあえずどうにかなったけど、他はそうもいかない。

 どうにもあの生徒会長は一筋縄ではいかないような気がしてならない。ノープランでいくにはハイリスクすぎる。




「あぁ、それについては心配しなくていいわ。っとーーそろそろね」



 え?


 何がそろそろ?おやつの時間とか?


 僕はホットケーキが食べたーーー




 ドオオオオオオオオン!!!!




 轟音と共に部屋が大地震かと思うぐらい大きく揺れる。



「おお!? 地震!?」


 僕が身を屈めて縮こまっているのに斎藤は動揺する素振りすら見せない。やだ、クール。




「違うわ、四條さんに協力して貰ったの。彼女に校庭をうろつくゴブリンやらオーク達を誘導してこの体育館にぶつけさせてもらったわ」



「ちょっ、おま!?」


 なにそれ!? 手段がえげつな!?




「何よ。そんな顔されるのは心外ね。これでもかなり確率の高い方法なのよ? 救出に乗り込むにも生徒会長がどのぐらい戦力を有しているか分からないもの」



 僕らの斎藤氏は割りとクレイジー。




 ーーーー




 監禁されていた部屋から続く廊下には人の影すらなかった。


 オークの襲来に全員かかりっきりなんだろうか。そりゃ、あんなのに襲撃されたら洒落にならないもんなぁ。


 しかし、避難所にオークをぶつけるとか血も涙もないよね斎藤氏。


 いいぞ、もっとやれ。



 ほら、僕とか問答無用で拘束されたし多少はね?


 まぁ、そこら辺は今はいいか。本当はよくないし滅茶苦茶ムカつくけど今はここから脱出することが先決だ。




 しかし、歩けば歩くほど豪華な設備だ。普通体育館に地下スペースなんて存在しない。どうなってるのこれ?




「しかし、この体育館凄いよね。地下室まであるなんてさ」



「無駄口叩かないで足を動かしなさいよ。一応答えてあげるけど、この学校はあの生徒会長の息がかかってるからよ」



 悪態をつきつつ答えてくれる斎藤は割りと親切。



「えぇ……まさかのそれだけでこんな豪華なの出来るとか金持って怖い」



 どうせ平民から搾取した金で出来てるんだろうなぁ。

 いや、経済を回すとも言えるから一概には悪いと言えないのか?

 まぁ、もう経済が成り立つ世界なのか疑問だけど。




「っと。どうしたのさ。いきなり止まって」



 いきなり止まるのやめてよね。漫画みたいぶつかってくんずほぐれてみたいな状況になったらどうするんですかね?


 しかも、どうせ僕がフルボッコにされるんでしょ?まじ理不尽。




「あら、さっきのあれでグールが何体か解放されてしまったみたいね」



 目の前にグールの集団が「あー」とか「うー」とか呻きながら進んでくるバイオなハザード。


 まぁ、凄い数だ。通路を塞いでいるぐらいだから、30体ぐらいいるんじゃなかろうか。



「うへぇ。あの生徒会長何体のグールを捕獲してるやら……」  



「泣き言言わないの。復活そうそうだけれどもちろんやれるわね?」


 どうせやらないと録な目に合わなそう。なんというスパルタ。

 だけど今回はちょうどいいかもしれない。




「そう言われると自信なくなるなぁ……ねぇ、斎藤。あいつら全部貰っていい?」



「あら珍しい。いいの? かなりの数だけれど」


「うん、ちょっと新しくなった鎖を試してみたいからね」



 ジャラリジャラリ。

 黒い鎖が擦るような音をたててグルグル回る。

 グールは大して強くないし、鎖の性能を試すにはおあつらえ向きだ。

 怖くないかと言われれば嘘にはなるが、ワクワク感のほうが勝る。




「さぁて、お楽しみの時間だ」

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