間話2 四条美琴の憂鬱②
「あがぁ……」
「ふんっ」
仰向けに倒れて呻き声を上げるチャラ男達。
死屍累々。
レベルアップして強化された身体能力を使えば、こんな奴らやさしく撫でるだけで倒せる。
「っと。見てたんですか、会長」
部屋から出ると、待ち伏せしていたかのように逢魔千歳がいた。
無理矢理部屋から出てきたというのに、さして気にしているようにも見えない。
むしろ、逆?
「はぁ……呆れた、信じていたのだが。まったく仕方ない子だ」
「会長!? 一体どういうつもりなんですか!? 説明してくれますか?」
よくもそんな事言えるわね!
逢魔会長の表情に驚きの感情なんて一つたりともない。
むしろ、狙い通りだとほくそ笑んでいる。もはや、その内心を隠すつもりすらないらしい。
「アタシを陥れようとする理由は何ですか!」
「そんなつもりなんてないさ。しかしだね、君を危険視する声も多いのだよ。ーー例えば、彼女のように」
逢魔が嫌みったらしい笑み向けた先には一組の男女がいた。
見慣れたシルエットだ。
「千華!?」
ナチュラルボブに切りそろえられたクリーム色の髪にクリクリした瞳。小柄だけど出るところは出ている。
可愛く小動物のように見える女の子。
きっと、守りたくなる女の子とはこういう子を言うのだろう。
見違えるはずもない。そこには大切な親友がいた。
私の帰りを聞き付けて出迎えに来てくれたのだろうか?
少なくともアタシの知っている親友はそういう奴だ。
同じ男を好きにはなったが、それでも親友でいたいと思える。そんな大切な存在。
「ひっ……!? し、信じてたのに……!」
は?
しかし、アタシに投げられた感情は拒絶だった。
親友であるはずの彼女は震えて目を合わせてくれない。
彼女はとても余所余所しく、足はどことなく震えていた。
なんで?
どうして貴方はあたしにそんな目をするの?
友達だよね?
親友でしょ?
「わ、アタシ達、親友よね?」
彼女はアタシの問いかけに応えることはなかった。
ついに彼女は怯えるように涙を溢してしまう。
彼女はまるで犯罪者と対峙したかのように近くにいた男の背中に隠れてしまった。
男に目を向ける。
見知った顔だ。
少年はとても優しい人だった。少し優柔不断なきらいはあるけど、とても優しくて彼を見ていると自分まで優しい気分になったことも沢山ある。
「四条さん、大丈夫。僕は四条さんを信じているよ」
あぁ、良かった。彼は優しいままだった。
私が恋した彼はとても優しい笑みを浮かべてくれている。
「大丈夫、罪は償えるよ」
は?
「な、何を言ってるの……? アタシは殺してないわよ? なんでそんなこと言うのよ?」
「四条さんは悪くないよ。ただ、必死だっただけだ。大丈夫、僕は味方だから」
「やめて!! アタシはやってない!! やってないったらやってないのよ!!!」
「落ち着いて。もう取り返しはつかないかも知れないけど償うことは出来るよ。一緒に頑張っていこう」
なんだこの話の噛み合わなさは?
なんで?
やめて、なんでそんな言い方するの。
それじゃ、まるでーーー
犯罪者みたいじゃない。
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