間話1 斎藤アリスはその時
おかしい。
あれから北原君も四條さんも戻ってこない。
四条さんはそもそも体育館に行くことが目的だから戻らないのはしょうがない。
一応、北原君には何かあればすぐ逃げるように言ってある。問題なければ私を迎えに来るようにお願いしたはずだ。
だけれども、一向に彼が来る気配はない。
中の様子を見ていたいが、外からだと何にも見えない。
「不味い……」
そろそろ動き出さないといけない。モンスターがちらほらリポップし始めている。
ゴブリン数体程度なら問題ない。しかし、オークやグールの集団を相手にするには戦力的には些か厳しい。
こういう時にパーティーの大事さがよく分かる。
北原君は上手くやっていた。
私たち二人の時はオークにまともに挑めば、ぼろ負けしていたと思える戦力差はあった。
それでも彼は上手く立ち回り、難なく倒せる状況まで落としていた。
それだけじゃない。索敵や奇襲など様々な役割をこなしてくれていた。
私にはそこまで上手くやれる自信はまだない。
それでも泣き言を言っている段階ではない。彼のようにはやれないだろうけれど。それでもと、体育館に向けて進むことにした。
ーーーーー
「さて、どうしたものかしらね」
自然と溜め息が零れた。
体育館近くには問題なくたどり着くことが出来た。道中にゴブリンやグールぐらいしか出現しなかったのはかなり幸運だった。
しかし、体育館に入ろうにも逢魔千歳とはなんと言えばいいのか、とてもソリが合わない。
性格や行動的な要素も影響がないとは言わないが、大部分はある男のせいというのが実情だ。
私からしたら勘弁して欲しいのだけれど、向こうはそうもいかないらしい。何とも面倒な事である。
そんなわけで体育館に向かえば必ず一悶着ある。
そう踏んだため今回は待機したのだけれど、どうやらそれが裏目に出たらしい。
そして、北原君が戻らない以上何か起きたと想定して正面から行くのはあまり得策とは思えない。
どうにか逢魔さんにばれることなく様子を見に行きたいところだけど、この学校の体育館は広すぎる。
世間一般のものとは異なり、そこら辺の高級ジムと比べても遜色ないぐらいの規模を誇る。
そもそも、可笑しい話なのだが地下にプールすらあるのはどういうことか。
流石、逢魔財閥が金にものを言わせただけはある。
広すぎるせいでどこで何が起きているのか確認するのも一手間かかる。
次の手を悩んでいると、体育館からこっそりと出る女性の影が見えた。ちらつくツインテール。
あれはーー
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