第27話 頑張っている女の子をゲロ子とかゲロインとか言うやつは人の風上に置けないと思う。




「というわけでモンスターを殺してみようか。ちょうどここに無抵抗なモンスターがいます」



「いやに手際がいいわね……」



 眉をひそめる斎藤氏。そんな顔しなくても。

 まぁ、今さらゴブリン一匹に遅れなんてとらないよね。


 ちょうど、お手頃なゴブリンさんが廊下にリポップしていたのでハントしてきた。


 隠蔽スキルでこっそりと近づいて後ろから足の腱をひとなですればいちころですよいちころ。

 後、鎖でぐるぐる巻きにしておいた。

 僕が想定していた使い方とは斜め上遥か上空なのが悲しいにも程がある。

 そのうち、ジョブがSM嬢とかにならないよね? 男だけど。


 なんか倫理観が色々アウトな気がするけど世の中が悪い。僕は悪くねぇ!



「ギャギャギャ!!!!」



 斎藤の時はグールだったからそこまで抵抗したなかったけど、ゴブリンだと違うな。


 まだ、死にたくないと必死にまともに動かない体を動かそうとしている。


 僕らが倒しているのは単なるゲームのモンスターではなく一個の生命だと、嫌でも認識させられてしまう。


 ほんと、実際どうなんだろうか。


 リポップみたくゲームのような現象はあるにせよ、やはりちゃんとした生命にしか見えない。


 いや、生命なんだろうね。

 黒ゴブリンの発言もある。あれをゲームと言い張るのは無理がある



「四条さん躊躇しては駄目よ。躊躇すれば貴方が死ぬだけよ」


 涙目の四条にも超スパルタの斎藤さん。正論なんだけどさー。もうちょっと、こう優しさを出してあげなさいよ。


 王は人の心が分からない……。



 ゴブリンを前に短剣を渡された四条は気丈に振る舞おうと表情を引き締めるが、やはり足は震えていた。 


 短剣はもちろん僕の暗殺者の短剣。二回も女の子の初めて(意味深)をもらうことになるとは思わなんだ。


 字面だけみると自分の愛剣に嫉妬せざるえないぜ。 



 決意したのか四条はゆっくりと包丁で豚肉を切るかのように短剣をゴブリンの首に落とした。 



「ふぐぅ……うぅ……」


 体を両腕で包みこんでしゃがみこんでしまった。


 弱音を吐かなかったのは彼女精一杯の抵抗だろう。


 言葉にも出来ず、震えながら嗚咽を漏らしていた。




 え? なにこれ? 罪悪感やばいんですけど……


 ちらっと斎藤に視線を向ける。


 彼女もこの反応は想定外だったのか少しあたふたしている。アーちゃんにしては珍しいぞ。

 しっかりして、アーちゃん。


 え? 僕?


 そりゃ、ノータッチですよノータッチ。僕に慰めるとかイケメンチックな行動出来るわけないじゃないですかー。


 ーーー




 四条が吐いた。



 いや、これがそもそも普通なのかもしれない。


 斎藤はすっぱりと割りきっているが、つい先日まではどこにでもいるような普通の女子高生がモンスターと戦えというのが土台無理な話だ。



 僕だって最初は発狂してましたからね……。



 フォローは同姓の斎藤に任せることにした。ほら、僕とかだと気まずいし。キモいとか言われたらもれなく僕がメンタル折れるし。



「うぅ……こっち、見んなし……」



 落ち着いた四条は少し顔を赤らめて僕を睨んできた。

 いや、そんな気にしないでほしい。別にゲロ子とか弄るつもりもないから。ゲロインとかも言わないから安心して欲しい。



「うぅ……まだ、気持ち悪い……」



 四条はなんとか冷静に努めようとしていた。

 正直無理をしているようにしか見えないというか、無理をしているのだろうけど。



 頑張ろうとしているところに水を差すのもよくないのでしばらく様子をみることにした。




「あぁ、そうだ四条さん。グール……もとい元生徒はどうしようかしら? 私と北原くんは降りかかる火の粉は振り払う派だから倒してしまうけれど」



 えぇ、このタイミングでそれ聞いちゃいます?


 四条も落ち着いたばかりなんだから少し間を開けてからとかさ。


 もしかしてもというか、確実に斎藤氏は空気が読めないタイプだった。


 いやぁ、完璧そうに見えても穴はあるもんだね。




「えぇ、それでいいわ。流石にあたしも1000万円なんて払えないもん」


 それに自分の命が惜しいわ、とこぼした。


 まぁ、彼女も思うところがあるのだろう。


 僕にビンタをしたときとは大違いだなぁ。まぁ、あれは洗脳状態だったみたいだし、これが普通なのか。



「でも、あたしの親友がいたときだけは見逃して欲しい」



 これが彼女の精一杯の線引きのようだ。


 まぁ、グールを押さえつけられるぐらいのステータスがあるならこれはありだ。


 まだ、効くかは試してないが蘇生薬だって存在するのだから、そういう選択肢があったていい。


 僕も両親ぐらいは生き返らせてやろうかしらね。


 ムンクなんてキラキラネームをつけたバカ親ではあるが人並みに感謝はしている。




 ーーーー



「そうだ。ガチャを引こう。」



 京都にも富士山にも行かない。



「ガチャぁ? 何よそれ?」



 そんなアンタバカァ? みたいな言われ方されましても……。



「えぇ……さっきの斎藤議長の話聞いてなかったの?」



 ガチャの危険性とかいってたじゃない。え?聞き流してた?

 まぁ、気持ちはわかる。



「変な呼び方で呼ばないでくれるかしら」


 えー。じゃあ、何か?

 アーちゃん。アーちゃんをご所望ですか!


 ……止めとこう。命が惜しいし。



「あ、アーちゃん。がちゃ? の引き方教えてよ」


 斎藤はもうアーちゃんと呼ばれることを諦めたらしい。


 まぁ、ほら四条さん言うこととか聞かなそうだしね。


 どんまい、アーちゃん。



「ここをこうして……」



 四条のスマホ画面を指差して教える斎藤と教えられる四条の間にはなんというか百合フィールドが展開されてたね。


 尊みは感じなくはないけど、肩身がせまいねっ!



「わっ」



 四条のスマホから眩い光が溢れだす。ガチャの演出だ。まぶしっ。



「リボン???」



 ガチャで出たのは身の丈ほどある大斧だった。

 何故か斧面には赤いリボンがつけてある。え、なんで? 



 ツッコミしないよ? 突っ込んだら負け。



「大斧かぁ……また、微妙なものを……リアリティはRか。ならハズレじゃないけどさ」


 斎藤みたく外れ武器でもないし。

 あ、ごめんて。睨まないでよアーちゃん。



「なんで微妙なの?」



「いや、思いっきり前衛向き武器だし。後衛武器のほうが良かったんじゃ……」



「はぁ? あんた、あたしのこと舐めてるの?」



 はい?



「あたしはねそんなか弱くないし、あんたなんかに前衛やらして守られるなんて御免だわ」



 ひでぇ。


 この子初対面からビンタしてくるし、中々に僕にたいしての嫌悪感がすごいなぁ。


 まぁ、女子に好意なんて持たれたこと録にないんですけどね。ないんですけどね!!



「それにね。私は後ろにいるより前に出たほうが性にあってるのよ」



 男顔負けのニカッと擬音が聞こえるような輝かしい笑顔。


 あらやだ、僕が女だったら惚れてるわこれ。

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