第26話 思った以上に斎藤が好意的に思ってくれてるみたいで逆にビビる。なお、恋愛感情的なのは微塵も見えない模様。






「さてメンバーも一人増えたことだし、再度これからの行動方針を決めましょう」



 斎藤さん議長みたいですね。



「おけ」


「わかったわ」



 四条含め、僕ら3人しかいない教室でわざわざ教壇に立つから尚更そう見える。



 教室内の風景は悲惨の一言につきる。


 慌てて避難したのか、モンスターに襲われたのか、ぐちゃぐちゃに机や椅子が散らばっている。


 後、所々に残る血痕が痛ましい。


 どうでもいい話かもしれないが倒したグールはゴブリンと同様に跡形もなく消えた。残っているのは血痕ぐらいだ。



 つっ立ってるのも疲れるので椅子を拾って教壇近くに座る。四条もそれに続く。



「まず、モンスターを倒してレベルアップをしましょう。特に四条さんはステータスすら取得してないから大変ね。それとーー」



「そもそもレベルアップってのが分からないのよねー。本当にモンスターを倒せば強くなるなんて信じらんないわ」


 四条は斎藤の話についていけない模様。眉をひそめて、首をかしげるばかりだ。

 まぁ、その疑問はもっともだ。僕なんてステータスを取得してからもかなり疑ってたし。



「質問は話が終わってから、挙手してくれるかしら。議論の基本よ。まぁ、いいわ。残念ながら真実よ。現に北原くんは常人ではあり得ない動きをしていたでしょう?」



 四条は先程の出来事を思い出して納得したようだ。実物を見てしまえば否定のしようもない。

 まぁ、こんなの実際に体験するか見ないかしないと、分からないよね。



「はい!」



 元気に手を上げる四条。


 挙げる時にぷるるんと揺れる双丘が大変素晴らしい。

 そして、斎藤にまた豚を見るかの如く視線を頂いた。こわい。

 しかし、これは致し方ないのだ。一説によれば、狩りをしていたころ人は揺れるものに敏感だったそうな。そして、その性質は現代人の奥底にしかっりと受け継がれているという。

 つまり、僕は無罪放免なのである。勝訴といっても過言ではない。



「アーちゃん達は正直もう強そうだけどれべるあっぷ? っていうのをする必要があるの?」



「何かしらその頭の悪そうな呼び方は……」


 斎藤はため息を吐いて頭を押さえる。特に拒絶するわけでもないので、彼女なりの照れ隠しなのだろう。



「え? この呼び方の方がかわいいじゃない」


 四条はそんな斎藤のデレに気づく素振りすら見せない。


「はぁ、もういいわ」


 いいんだ。僕もこれからはアーちゃんと呼ぼう。アーちゃんアーちゃん。


 むろん、心の中のみだ。現実でそんな呼び方したら致命傷は避けられないだろう。



「それでレベルアップについてだけど必要不可欠よ」



 斎藤は分かりやすいぐらい露骨に強調する。



「モンスターがこの先どんな奴がくるか分からないもの。それにね、敵はおそらくモンスターだけなんてことにはならないわ」



 あぁ、なるほど。まぁ、そこに行き着くわな。

 齊藤の意見は一理どころか百理ある。むしろ、そっちのほうが厄介かもしれない。



「? どういうこと?」


 四条は理解してないようだ。まぁ、モンスターとかに追われた直後なんだから無理はない。



「人間が敵になるということよ」



「そんな!?」



 驚きはするが、どこか納得しているようだった。流石にそこまで脳内お花畑ではない模様。



「私は特に危険性が高いのがこのガチャだと思っている。北原くんの持っている武器だって最高レアリティのものでもないのに相当な性能を有している」


 確かに僕の暗殺者の短剣は相当な性能を有している。攻撃力はさることながらあれだけ戦闘をしても刃こぼれひとつしないっていうのも分かりにくいが相当な性能だ。


 SSRはどれぐらいやばいのかすら皆目検討もつかない。



「それを上回る武器の性能は未知数よ。下手したらいくらレベルアップしてステータスを強化しても一瞬で殺されてしまうかもしれない」



 そう、改めて認識させられた。



 どれだけステータスが強化されて以前より比べ物にならないぐらい強くなったところで死ぬ可能性はあるのだ。



 ーーーー



「レベルアップに関しては可能な限り上げていく。これは全員に対する厳命よ。だけど、本命の議題は別にある」 



「本命?」



 え、なに? 政治の話でもするの? 三権分立とか。



「レベリングは常に行うとして、そろそろ次に何をするか考えるべきよ」



 んー確かに。


 昨日まではガムシャラにレベルを上げてきた。だが、生きるためにしなければいけないことは他にもたくさんある。



「拠点を作るべきよ」



「なるほど。確かに当てもなくさまよってその日暮らしみたいなのは嫌だなぁ」


 そんなホームレスみたいな生活は御免だなぁ。


 せめて安心して寝られる場所は欲しい。


 確かにこれは重要だ。どれだけ強くなろうが休めるところがなければ録な休息は出来ず十二分の力を発揮できないだろう。弱ったところを格下にズドンなんて御免被る。


 欲を言えば電気とか水道も使えると嬉しい。


 というかこの世界はそこら辺は使えるのかなぁ?


 多分ダメな気がする……。



「この学校は?」



「論外よ。防衛するには不向きにもほどがあるわ。目立つ上に防衛機能も皆無だわ」



「速攻却下された!?」



 四条はがっかりしてように項垂れた。あんなにバッサリ切られたから仕方ないね。


 まぁ、たしかに学校は災害時に避難所みたいな扱いにもなるし不特定多数が集まりやすいか。


 そうなれば、治安は少なからず荒れるだろうし不確定要素が多すぎてとても安全とは言いがたい。


 それに生徒会長の存在が面倒臭そうだ。



「って言ってもなぁ。他に都合がいい場所とかあるもんかね?」



「じゃあ、アタシが住んでるマンションは? 一応オートロック式のしっかりとしたマンションだし悪くないと思うけど」



 四条は割りといいマンションに住んでるのね。お金持ちなのかな?



「ダメね。マンションといってもやはり不特定多数の人間が集まるわ。それに電力が止まってしまえばオートロックなんていう警備機能は無意味よ」



 そうか。忘れてたけど電気とか水道みたいなインフラ関係は機能停止している可能性があるのか。




「うーん」


「うーん」


 他に何も思いつかず唸る僕と四条。



「仕方ないわね。拠点については私に宛があるわ。そこに行きましょう」



「それで四条さんはこれからどうするの? 私と北原くんは拠点に向かうつもりだけど、元々体育館から来たみたいだしそこに戻るのかしら」



 おお、ていうか僕もそこ行っていいんですね。



「うっ。まぁ、そうなるわね。妹ももしかしたら戻っているかもしれないし。それに……悠人君も気になるしね」



 そういえば忘れていたけど、この子例のハーレムの一員でしたね。

 この学校名物リアルハーレム。その主の名前が轟悠人。

 そして、そこにやたら胸部主張の激しいツインテールがいたような記憶がある。



 くっそ。なんであんなモテるやついるんだよ。そんなのまじでギャルゲーの中だけにしてよね。



 モテるやつは基本死ね。



 斎藤は顎に手を当て思案する。



「何、その思考してますみたいなポーズ。毎回してるけど気に入ってるの?」


 そのポーズほんと好きですね。


「北原君ーー貴方は黙ってなさい」



「はい」



 蛇どころか龍に睨まれたカエルの如く、頷く他なかった。これ以上喋ると命がヤバい。



「体育館まで一緒に行きましょう。ちょうど私たちが向かう裏門に近いし、別れるより可能な限り3人で行動したほうが安全だわ」



「まぁ、それが妥当かね。戦力は多いに越したことはない」



 それにこのパーティーは先頭の役割分担が微妙だ。

 悪くはないがどうしても不足が目立つ。

 その穴をもしかしたら四条が埋めてくれるかもしれない。



「それと四条さん貴方には体育館までの道中を突破するために最低でもレベル10になってもらうわ。いいかしら」



「わ、わかったわ!」



 こうして斎藤様のスパルタレベリングが幕をあける。


 うぅ、こわ。哀れ四条。




 ーーーーー




 これからの未来に歓喜してか足を地震のごとく震わす四条を見ながらふと疑問が浮かんだ。



「そういえば意外だったよ。僕もその拠点に行っていいなんて」




 斎藤はそんな僕の問いに、キョトンとした顔をしたと思ったら、当然でしょうと言わんばかりにため息を吐いた。



「当たり前でしょう? 私たちはパーティーなんだから」

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