第26話 四条決意。シリアスなのに、ママみとかおぎゃるとか言っててなんかごめん。
洗脳? が解けた四条はツンツンしているものの、僕に対する敵意みたいなものは無くなった。
僕的には正直それだけでもかなりやり易くなるのでありがたい。
「それで何があったのか話せるかしら」
斎藤はまるで母親みたく慈愛に満ちた視線を四条に向ける。ママみを感じる、ママみを。
なんで僕には
僕だってバブみを感じて、おぎゃりたいぞ。
四条は……いや、親愛を込めてツインテちゃんと呼ぶか。むろん、内心のみだけど。
ツインテちゃんは落ち着いたのか自分の状況をポツリポツリと話してくれた。
僕だけだと話してくれなかっただろうし、百合の力ってぱねぇ。
ツインテちゃんの話だとやはり校舎の中はモンスターがそこかしらに現れて大パニックになったそうだ。
そりゃそうだ。ネット小説みたいに秘密結社のエージェントやら異世界帰りの勇者様みたいなのがいればどうにかなるんだろうけど普通の学生にこんなのどうしようもない。
結局逃げるしかなかった。ただ、学校にいる全校生徒が一斉に逃げるものだからモンスターにとっては格好の的にしかならなかった。
多大な犠牲を出しながらも生き残った生徒や教員は体育館に籠城することを選んだようだ。
「籠城ね。まぁ、下手に動くよりは救援が来るかもしれないし賢明ね。誰が取り仕切ってるのかしら? やはり、逢魔さん? 洗脳じみたことしているみたいだし」
まじかよ。
まさかの生徒会長? 有能とか噂は聞くけどまさかの生徒が頭なの?
先生たち何してるんだろ? 穀潰しとか?
「ええ、その通りよ。でも……本当にあの逢魔さんが洗脳なんてするの? あたしがおかしかったのは分かるけど、あの人がそんなことするなんて信じられない……」
一瞬、斎藤の表情に影がかかるのを見逃せなかった。
「色々とあるのよ……まぁ、今考えても仕方ないことでしょう」
斎藤と生徒会長の間に、何か確執めいたものがあるのだろうか。お家騒動とか? 血を血で洗う醜い争い的な。そんなわけないか。
どのみち真偽は逢魔氏に会わない限り分からない。
「それで四条さんはなんであんなところに?」
確かにそれは疑問だ。
体育館に籠城してるなら校舎にいる意味が分からない。わざわざ、危険な外に出るなんてメリットがないはずだ。
「妹がいなくなっていたの……だから探しにいったのよ……」
なるほどそういうことか。まぁ、いい感じの死亡フラグなわけだ。
実際死にかけてるし笑えないか。
「そう。大変だったのね」
斎藤は相づちを打つと、顔を少し傾け、指を顎に当てて思考してるような仕草をした。
頭いいキャラはみんなその仕草するよね。効率とか上がるのかな?
思考が終ったのか顔をあげてツインテちゃんの顔をしっかりと見つめた。
「四条さん、貴方戦う意志はあるかしら?」
えぇ……。
「いやぁ、流石に酷のような……」
口を挟むつもりはなかっけど、流石に声を上げた。
モンスターと戦うならまだしもグールになった旧友を殺すなんて酷だろう。
斎藤は分からないけど、僕の場合学校の奴らにたいして思い入れがないから倒せるだけだ。
彼女は斎藤のように割りきれたり、僕のように思い入れがないというわけではないはずだ。
「何故かしら? これからも妹を探すつもりなら最善策のはずよ」
「まぁ、そりゃ……」
正論だ。しかも、ガッチガチの。
「ーーそれにね、貴方は彼女を侮りすぎよ。こう見えて彼女はとても強いのよ」
しかし、当の四条に視線を向けると、頭を抱え嗚咽を漏らしていた。
まぁ、そうなるよね。そもそも、普通の女の子がモンスターと戦うなんて出来ると思えない。
「ま、まぁ……」
流石に可哀想になってきたので、助け船のつもりで声をかけようとするとーー
四条は勢いよく顔をあげて、僕らを強く睨んでいた。強く強く。
怖いはずだ。怖くて怖くて、たまらないはずだ。怖くて逃げたいだろう。
事実、彼女の目尻には大粒の涙が浮かび上がっている。
「や、やるわよ! 私やるわ!!」
だけれど、ぶれない。彼女の視線はどこまでも強く、真っ直ぐだ。
「へぇ」
足は震えている。されど、瞳の光は強い。
洗脳を解かれたばかりで思考だって感情だってボロボロのはずだ。
しかし、彼女の瞳には確固たる意思が宿っていた。
全く、陰キャには眩しいというものだ。
斎藤。確かに君の言う通り彼女は、僕なんかよりずっと強いみたい。
ーーーー
《補足》
ママみ
母性を感じることをさす。
人類の到達点はここではないかと日夜議論されている。
おぎゃる
汚いギャルのことではない。
親に甘える赤ん坊のようになることをさす。
気持ち悪くても許して欲しい。
現代人は疲れているみたい。
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