第21話 本日の天気は鎖雨のちツインテール。え? ツインテール?
『レベルアップしました』
『ユニークモンスター討伐の為、スキル【鎖操作】【加速】を取得』
『
なんか色々通知が来るが、それどころではない。
僕も斎藤もフラフラながらも、なんとか立ち上がる。お互いに息も絶え絶えでもはや虫の息である。
取り敢えず回復薬使わなきゃ。勿体なくて使ってないから効果あるか知らんが。
「おおっ」
風穴が空いたであろう脇腹が治った。
なんかくすぐったい。体験したことない不思議な感覚だ。
HPだけじゃなくて外傷も治すんだな。
流石に血で濡れた汚れは消せないから重症人にしか見えない。
完全に回復するのに三本も使った。だいたい、一本でだいたいHPを一○○回復してくれるようだ。
しかし、日本円にして十五万。医療保険適用されない? そんなー。
まぁ、そんな金額ですら斎藤には端金らしく特に気にした仕草すら出さない。なんなら、僕のポーションも斎藤が買ってくれた。
やばい、僕はヒモの才能があるのかもしれない。そんなわけないか。
「ふぅ……これは……凄いわね。一体なんなのかしら」
「ね。こんなの今のテクノロジーじゃ説明出来ないよね」
確かにこの仕組みは疑問だ。最新の医療技術だってここままで即効性かつ効果が高いものなんてなかったはずだ。
ていうか、そんなのあったらもっと平均寿命とか延びてることだろう。それはそれで、想像したくないな……。
「まぁ、今さらね。魔法やら魔術やら使ってる時点でテクノロジーなんか考えてもしょうがないわ」
そりゃそうだ。
ーーー
「その、ぬぼーっとした感じやめなさいよ。グールと勘違いして打ちそうになったわよ」
回復もすんで、一息ついてる時になんたる言い様。もっと、優しくして欲しい。陰キャはデリケートなのだ。
「えぇ、ひどい……ていうか、あれだけの戦闘だっだから、少しぐらい気を抜いたっていいじゃん……」
あれかな。今度グールの集団に襲われるような、バイオでハザードみたいな状況になったらグールのふりでもしようかしら。
そうしたら、勘違いして襲われないかもしれない。
「そう言えば斎藤はなんかいいスキル手に入った?」
「? なんのことかしら? レベルも上がってないからそういうのはないけれど」
「え? どゆこと?」
スキル入手どころか、レベルすら上がってない?
もしかして、最後に止めをささないと経験値にならないのか?
一応、僕かレベルアップやら新スキルを取得した経緯を説明すると、
「何よ、それ。とても、不公平じゃない。一応、私もかなり頑張ったのだけれど……」
斎藤氏は拗ねられてしまった。
いや、なんかごめんて。そんなルール知らなかったんだよ。
まさか、ラストアタックボーナス制度なんて。荒れるからやめろとあれほど言ったのに。
「そうね。今度何処かにエスコートしてもらいましょうか。それで手を打つわ」
「えぇ、僕にそんなこと出来ると思ってるの……?」
おい、まじでやめろ。僕にそんな上等なこと出来るわけないでしょ。こちとら、根暗オタク陰キャボッチやぞ。
バレンタインデーなんて、母親しか貰った記憶ないよ。チクショウ。
「……」
しかし、斎藤はジト目だ。譲るつもりはないようだ。
「分かった分かったよ……まぁ、でもそんな期待しないでよ?」
ろくに財産がない以上、斎藤の言い分に従う他なかった。ていうか、この子大体のもの買えちゃいそうだし……。
「そ。楽しみにしとくわ」
斎藤はわりと機嫌が良さげだ。微笑まで浮かべている。
まぁ、分かります。他人のお金で食べるご飯って美味しいもんね。
しかし果たして、僕が彼女に奢れるものなんてあるのだろうか?
仮に彼女と出かけたとしても、見栄はって高いレストランに行き、予算をオーバーすることまで予定調和に思える。そして、結局支払うのは彼女という。
まぁ、いいか。
こんな世界になったのだから、そういう事をするのも楽しいのかもしれない。
楽しんで生きると決めたんだから。少しでもそう思うなら、しよう。
やっぱりこの世界は楽しそうだ。
「ね、ねぇ」
と、そんな感じで綺麗に纏めようとしたら誰かに話しかけられた。
え?
僕達以外に誰かいたっけ?
声の方向に振り返るとそこにはツインテールが特徴の女子生徒がいた。
あっちゃー、忘れてた。自分で助けたのに。
斎藤に目をこっそり向けると、彼女もどこか気まずそうだ。
あっちゃー。
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