第17話 最近のモンスターは流暢に喋るらしい。後なんか、すげー意味深なこというし、訳わからないからプリン食べたい。


「コンニチワ」


 そいつはゴブリンと言うには、あまりにも人間臭かった。

 体躯もそうだが、ゴブリン特有のクシャッと潰したような容姿でもない。ゴブリンの面影は少なからず残っているものの人間のそれだった。胸はないから、おそらく男か。

 下手なブサイクより、良いビジュアルなんじゃないだろうか?


「喋った……?」


 斎藤は動揺を隠せないようだが、僕だってそうだ。

 モンスターが喋るとか聞いてない。

 ていうか、みるからに強キャラ臭しているんですけど。もう、帰りたいんですけど。


「あー? 喋るに決まってんだろ。って喋ってる? あー、おおこれがレベルアップって奴か」


 元ゴブリンは徐に体を見回し、呆れたように額に手を当て、


「ククッ……ククッ……アーハハハッ!!!!! なんだそういうことか! なんて滑稽なんだギャハハ!!!」


 一人納得したように高笑いをあげた。

 え? 何。どういうこと?


「喋れるように……なったってことかしら?」


「あ? まぁ、レベルアップの特典みてぇなもんだよ。便利だよなこれ」


 意外に元ゴブリン氏はフレンドリー。


「モンスターもレベルアップするのか……」


「あぁ? モンスターなんてご挨拶だな、おい。なんでレベルアップをお前らだけの特権だと思ってんだよ、あぁん?」


「それはどんな生き物でもこのレベルアップという現象が適用されるということかしら?」


「ククッ……、てめえら何も知らねえんだなぁ。大体何でレベルが上がっていると思っているんだよ。それに倒した奴が消えるなんておかしいと思わねえか?」



 どうやら、レベルアップ自体は人間だけの現象ではないらしい。まぁ、人間だけとか都合が良いにも程があるけどさ。


「ということは……」


「待った」


 元ゴブリンは斎藤の言葉を強引に遮った。


「俺たちは敵同士だろぉ? だったら、こんな退屈なお喋りをいつまでもしてやる義理はねえよ。やることは一つだろ?」



 剣呑な雰囲気が辺りに満ちていく。

 対峙する元ゴブリンの視線はどこまでも厳しく、鋭い。

 斎藤は息を呑み込んで身構える。


 一触即発。


 対する、僕は内心動揺しまくりだという。正直、急激な事態の変化についていけないんですけど。

 こういうシリアスな展開苦手だからやめて欲しい。ほんと、まじでぴえん。



ーーー



 沈黙を破ったのは、元ゴブリンでも僕らでもない。


「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!」



 いきなり、喉太い悲鳴が上がった。


 悲鳴の方に視線を向けると、松平(故)の後ろに隠れていた男子生徒が地団駄踏んでいる。


「もう嫌だ! 嫌だ!! 訳が分からないし! なんでこんな目に合わなきゃいけないんだよ!!」


「お、落ち着いてっ!」


 ツインテールが特徴の女生徒が宥めようとするが特に効果はなさそうだ。


「なんでわざわざこんなことしゃなきゃいけないんだ!! お前のせいだぞ四条!! お前がこんなとこに行くとか言うのがいけないんだ!!」


「そ、そんな!? アタシはそんなこと頼んでなんか・・・」


「うるさい!! うるさい!! うるさい!!」


 うわ、側から聞くとステレオタイプのクズ男だな。バンドとかやってそう。


「だいたい、妹なんて勝手に出て行ったんだから自業自得なんだよ! もう、手遅れに決まってる! もう、付き合ってられるか!!」


 なんか、もう凄い言い様である。話を聞くに勝手について来たのに、なんたる手のひら返し。斎藤の視線も絶対零度のそれになっている。こわい。


 クズ男とその取り巻きはツインテ女子を見捨てて走り出した。もういっそ清々しい程である。拍手を送りたい程清々しい。


 止める理由も特にないので、そのまま見守っていると、



 ドパ


 そんな間抜けな音だったと思う。音なんてどうでもいいけど、あまりにも唐突過ぎて反応が全くできなかった。

 いや。速過ぎて反応出来なかった。


「おいおい、誰が勝手に行って良いって言ったよ。って、何だもう聞いてねえか」


 彼がいつの間にか伸ばした手からは鎖が真っ直ぐと伸びていた。そして、その鎖はクズ男の胸を貫いていた。

 即死だ。


「あ!? うああああ!!」


 取り巻き達は必死に逃げようとするがもう既に遅かった。鎖は生き物のようにうねうねと動き、彼らを貫いた。これも即死だろう。


「なんだ。てんで手応えがねぇなぁ。さてとーー」


 元ゴブリンはつまらなそうに鼻息をならして、残ったツインテ女子に向き合った。


「後はお前だけか。邪魔者はとっととヤるとすっかな。向こうの奴らはお前らと違って強そううまそうだ」


 対峙するツインテ女子は目から涙を滲ませるだけだ。

 ただの少女が出来ることなんてのは何もなく、無慈悲に鎖が襲いかかった。




ーーー




 綺麗に纏めたツインテールが特徴の少女は恐る恐る目を開いた。

 まだ、自分が死んでいないことに安堵の息を漏らすと当時に、見た。


「いやいや、無抵抗な少女をどうにかしようなんて大丈夫? 最近ほら、人権問題とかPTA、はたまたフェミニストとか煩いよ?」


 そこには、鎖を短剣で受け止めている男が一人。

 街中で見かけたら、思わず110番を打ちたくなるようなほど胡散臭い男、北原ムンクがそこにはいた。






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