え?詐欺師?世界がデスゲームになったけど適性ジョブがどう見ても不遇職な件について
第17話 将来何かの職業につくなら教師は絶対に遠慮しとく。薄給激務そうだし、休みなさそうだし。なるなら専業主夫がいい。
第17話 将来何かの職業につくなら教師は絶対に遠慮しとく。薄給激務そうだし、休みなさそうだし。なるなら専業主夫がいい。
荒れ果てた校舎の教室の一角。
大人一人と高校生数人が、黒いゴブリンと対峙していた。
「ま、松平先生……」
「な、なんとか、しろよ! 教師だろ!」
「あ……あぁ……い、嫌……」
「あぁ、くそ! 誰か死んだらアンタのせいだからな!!!」
松平と呼ばれた男は頭を抱えたくなった。
どいつもこいつも普段は馬鹿にしてくる癖に、いざという時はこれだ。抱えたくもなる。
教師と言えば聞こえはいいが、思えば嫌なことばかりな仕事だった。
薄給激務なんてものは当たり前で、少しでも仕事が遅れると無能のレッテルを貼られる。
休みだってろくになかった。休日である土日だって部活動と言う名の強制労働のせいでほとんど潰れた。
それだけじゃない。生徒からは舐められ、親達からは無理難題を押し付けられる。しまいにはいじめなんていう解決しようがないものすら解決しろと言われた。
極めつけが、
「あぁ、今まであんなに頑張っていたのに……こんな、結末あんまりだよ……」
松平はもはや絶望して立ち尽くしている。恐怖で足はガクガク震え、よくよくみると下半身からは湯気が出ている。
どれだけ嘆こうが現実は無慈悲だ。黒いゴブリンは松平めがけ棍棒を振り下ろしたーー
「おわ、黒いゴブリン!? 見たことないタイプだなぁ。さては色違いの強いタイプだな? でも現実でもまさかの
背後からいきなり声が響いた。ゴブリンはピタリと動きを止め振り替える。
そこには不適な笑みを浮かべ、不気味に立つ詐欺師北原ムンクがいた。
ーーー
「いやいや、僕は乗り気じゃなかっただよ? ほら、人助けとかあんまりするタイプじゃないし。でも斎藤がしろっていうんだもの。眼力凄くて逆らえないし、チビりそうになったよね」
悲鳴が聞こえたから、一応向かったらなんか黒いゴブリンがいた件について。
「別に斎藤も人助けとかしたがるタイプじゃないけどね。情報を聞き出したいから生かしといてとか、もはや悪役だよね」
「あのね……聞こえているわよ」
遅れて教室についた斎藤さんは天使のような微笑を浮かべている。でも、よくよくみるとこめかみには青筋が浮かんでるね。それはもう、くっきりと。
「いや、ほら説明したじゃない。僕のジョブはこういう風にペラペラ喋って挑発したほうが上手くいくって。だから、うん。仕方ないよね。うん、仕方ない」
僕のジョブ詐欺師は特性上、相手を挑発しやすい。こんな風に関係ないことをペラペラと喋っていれば誰でもイラっとくるものだ。
相手を上手く挑発出来れば、戦闘は上手くいく。
だから、これは仕方のないことなのだ。いやー僕もこんなことしたくないのにー(棒)。
「分かってるけど不快だから後で説教ね」
現実はどこまでも無情である。
「北原! 北原じゃないか!」
「あれ、松平先生じゃん」
よくよく見れば担任教師だ。他にも松平の後ろに隠れた生徒が何人かいた。
松平はいつも薄笑いを浮かべており、どこか疲れてそうな印象があった。
後、僕に対するいじめを見てみぬふりした教師でもある。所詮教師なんてそんなもんよ。
「き、北原! た、助けてくれっ! な!? 今まで色々してやったろ!? 助けてくれよぉ!?」
藁にもすがる思いと言ったところだろうか。
しかし、なんとも自分勝手な理論だ。まともに、助けられたことなんて一つもない。
返答に間が空いたのを助ける気がないと捉えたのか、松平は激昂した。
「なんだよ! 北原のくせに! 糞陰キャのくせに!!! 今まで色々気にかけてやっただろ?助けてやっただろ? この恩知らずが!!! とっとと、助けろよ!!! 本当に!!」
は?
何言ってんだこいつ。お前むしろ同調してたじゃん。頭ハッピーセットかよ。
気にかけたことなんて、精々あまりにも自己保身が溢れた『いじめじゃなくて遊びだよな』とか言う虚偽申請の強要ぐらいである。
むしろろくなことしていないんだよなぁ。
「いいから! 助けろよぉ! 生徒が教師に恩返しするのは当たり前だろぉ!! そんなこともわからねぇのかよぉ! だいたい……っ」
あ、しまった。
言葉の途中で、ゴブリンは棍棒を松平に振り下ろした。もう、煩いと言わんばかりに。ボールの如く叩きつけられる姿は、もう哀れの一言に尽きる。
ゴブちゃんナイス。いいぞ、もっとやれ。
しかし、生きてるのかあれ。
ていうか、むしろゴブリンがよく待ってくれたほうだ。松平は結構な時間叫んでたよ? 意外と彼? は空気を読むタイプなのかもしれない。そんなわけないか。
「ギィギィギィギィ!」
その瞬間、ゴブリンが震えた。
ぶくぶくと身体中に水膨れのようなものがどんどんと発生する。
どんどん成長し、しまいには何倍もの体積に膨れ上がる。臨界まで達したそれは、水風船のように破裂した。
「自爆した!?」
「みたいね……いや!? 違うわ! 何かいる!?」
破裂の中心には、人間らしきものがいた。
いや、違う。人間じゃない。体躯こそ人間に近いが細かな顔の造形が明らかに違う。不揃いな牙が口から飛び出ているし、耳はピンと尖っている。
「コンニチワ」
そして、驚くことにそいつはたどたどしさは有るものの、喋ったのである。
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