第14話 他人のガチャ爆死だけでご飯三杯はいける
斎藤のレベルはサクサクと上がっていった。もうほんと、軽々と。
僕の時はもっと苦労したと、思わず老害ムーブをかましたくなるほどだが自重。
くっそ! 僕の時はもっと大変だったんですけどっ!!
まぁそんなことしたら、斎藤氏に何言われるかたまったものではない。呪詛レベルの罵詈雑言なんて言われたらメンタルブレイクして一年ぐらい引きこもって冬眠したくなるレベル。
それに、現状で戦力が増えるのは本当に有難い。
「もうレベル5か。早いなー」
「えぇ。もう、ゴブリン程度なら遅れをとることもないわ」
斎藤は余裕そうだ。また、高笑いとかするのかな。睨まれそうだし、この思考はやめとくか……。もうね、ほんと斎藤さんの眼力凄いから……怖いからね。メデューサさんですかといつか言ってやりたいぐらいですよ。無理だけど。
そもそも、二人体制になってからゴブリンに苦戦したこともないけどね。
やはり、前衛と後衛のように役割分担出来ると効率が飛躍的に上がる。
リポップした4階のゴブリンを狩り尽くすのに然程時間もかからなかった。
「ギィ……! ギィ……!」
残るは目の前にいる一体のみだ。僕とおなじでボッチか……。いや、ボッチにした犯人は僕らだけどさ。ごめんて。
「さてと、色々やってみますかね。斎藤、あのゴブリン僕がもらうね」
「ええ、任せるわ」
斎藤のレベル上げもそこそこ進めた。
なので、幾つか取得したスキルを目の前のゴブリン相手に試してみよう。
まず、解析スキルを発動させる。
こういうのってどう発動すればいいんだろうか。
そう思ったら発動したみたいだ。
他のスキルもそうだけど、基本的に思考で発動出来る仕組みになってるのね。
頭の中にゴブリンの基本ステータスが浮かぶ。
なんというか思考の片隅に小さな枠が出来てそこにステータスが書く殴られる感覚といえばしっくりくる。
ゴブリン
Lv.2
HP 70
MP 3
SP 10
筋力 5
耐久 3
知力 1
俊敏 2
集中 2
運 2
skill 【
なるほどなるほどこんな感じで出るわけね。
こりゃ、便利だな。
これで、初めて戦う相手でも優位性を得ることが出来る。自分より強ければ逃げればいいし、必須スキルだな、これ。
続いて索敵を発動させる。
敵がいる感覚がある。何となくではあるが弱そうな気配だ。そりゃ、ゴブリンだし弱いか。
スマホを見ると円形のレーダーみたいなものが表示され、学校の簡易マップが描かれていた。
ゴブリンがいるであろう位置に赤点がある。
おお、RPGそのものだ。
「おおっ!?」
スマホに目をとられていたらいつの間にかゴブリンが接近して棍棒を振り下ろしていた。
歩きスマホ駄目ってことですかね。
しかし、強化された僕のステータスは不意打ちの攻撃ですら容易にかわす。
そのまま、背後に回り込む。
そして、最後に
しかしこの任意で発動させるスキルは変な感覚だ。
スキルに体の動きが引っ張られる。
うわっ。ととっ。
あれ、変だ。動きに体を乗せられない。
動きが凄いぎこちない気がする。
結局、背刺はゴブリンではなくそこら辺の空間を刺すことになった。
背刺の勢いを殺しきることが出来ず、無様にもゴブリンの目の前にズサーッと転んだ。はずい。
「やべっ」
ゴブリンは好機とばかりに思いっきり棍棒を振り下ろす。
「いでぇっ」
……いや、痛くないわ……
反射的に痛いって言ったけどhpに保護されてるからほとんど痛みがないや。
hpって便利だなぁ。
何度もくらうのも良くないので、勢いよく立ち上がり、そのまま短剣をゴブリンの首にねじ込む。
ふー、失敗したわ。強い敵じゃなくて良かった。
今回はいい教訓だ。任意で発動するスキル……アクティブスキルだっけ?は習得しても慣れていないと失敗する。
ーーーーー
「あ、そうだ。とりあえずガチャ引くこう」
「ガチャ?」
「アプリにガチャの項目あるでしょ? 僕の暗殺者の短剣みたくいい装備が手にはいるかもだし」
「分かったわ。なるほど、最初は無料で引けるのね」
リセマラが出来ないからほんとに運だけが頼りになるけどね。
斎藤がガチャを引くと何か大きい塊がごとりと落ちた。
これは形状的にスナイパー銃か?
あくまで、形状はそう見える。しかし、とてもじゃないが射撃なんてことは出来ないし、よくて鈍器だろう。
「レアみたいね、錆び付いた何かって書いてあるわ。しかも、これ装備出来ないみたいね」
Rの癖になんというゴミ装備。装備も出来ないとかいよいよ存在価値すら危うい。
「ぷぷっ……まぁ、ほらどんまい? 何かの役に立つかもしれないし残しとけばw」
他人の不幸はとても美味しいぜ。ぷぷーざまー。
チラチラと暗殺者の短剣をちらつかせる。そう、ガチャ報告みたいなものである。
「何で嬉しそうなのかしら……とても腹が立つわ……」
美少女様に勝てる部分があったからです。いえーい。
ーーーー
ガチャを引いた後は屋上に戻り、リポップしたゴブリンを狩った。リポップしていたのがゴブリンだけで、グール達がしないのは何か引っかったが……
まぁ、考えたところで無駄なんだろうけどさ。
「そろそろ、辺りが暗くなって来たわね。夜はどう過ごしましょうかね」
「あー、寝床か。闇雲に外に出て家に帰るわけにもいかないしなぁ」
夜は暗くて危険だ。闇目は聞かないし、もしかしたらもっと強力なモンスターが徘徊する可能性だってある。
家に帰れるなら、それが一番だろうけどその道中が安全とは決して言い難い。
「となると、このまま何処かの部屋で一晩過ごすしかないわね」
合理的だ。ていうか、それぐらいしか選択肢がない。
「あ。あそこは? よく教師とかが使ってる謎の休憩室。ちょうど4階にあるし」
「あぁ、なるほど貴方にしてはいい着眼点だわ。確かに彼処は畳部屋だし、休むにはうってつけね」
「え? 畳なの?」
ーーー
「ほんとに畳じゃん……」
件の部屋につくと思わず呟いてしまった。ていうか、こんな部屋だったんだね。他の教室はフローリング式なのにここだけ畳じゃん。
さては、教師達はここでサボってるな? ずりぃ。しかも、冷蔵庫も完備というクソ具合。
「意外と綺麗に手入れされてるわね。今日はここで過ごすことにしましょう」
「おけ。あ、あれ? うん……?」
ある事に気づき、動揺を隠せない。なんか足が震えるし、変な汗が気持ち悪いぐらい出てる。
「あら、何か懸念事項でもあるのかしら?」
「いや、ないけどさ……一晩ここで過ごすんだよね?」
斎藤は特に気にかけることもなく、頷いた。困惑しているのは僕だけなのだろうか。
え? 女子と二人っきりで寝るの? え?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます