第13話 お金なんかに負けない……!ビクンビクン でも、正直そんな余ってるなら将来的に養って欲しい

「何をしてるのかしら?」


 首を可愛らしく傾げる斎藤。何それ可愛いと思ってやってるの?

 いや? 元々のビジュアルレベルが高すぎるから可愛くないとか言いたいわけじゃないよ?ただ、そのおフェイスで何人の無垢な童貞達を地獄へ引きずり込んだのか聞きたいだけですー。

 あ、やめて。ろくなこと考えてなさそうとか呟くの。僕は至って真剣なんだぞ。



「いやレベル10になった時、強化合成って項目が新しく出たのよね。ちょうどモンスターもリポップしなさそうだし確認しようかと」


 そう。屋上でグールを倒した時、ついにレベルが10に上がったのだ。ついに二桁。二桁になったところで劇的な変化があるわけでもないが、なんだかテンションが上がるよね。



「そのリポップっていうのが今一よくわからないのよね。本当にゲームになったのかしら?」



 斎藤は腕を組んで首を傾げる。リポップの意味を理解していないという事ではない。一度死んだモンスターがまた再出現すること自体に疑問を持っているようだ。



「んー、それなんだよね。確かにゲームみたいにリポップするんだけど、どうも生きているようにしか見えないんだよね」



 しかも、倒したらいつの間にか消えるし。でも、血痕とかそういうのは残ったままだし考えれば考えるだけ謎だ。



「まぁ、今はいいよ。このシステムのお陰でレベル上げ出来るし」



「それもそうね。で、強化合成?というのは?文字通りで捉えると何を強化するのかしら」



「うーん、装備とかを強化出来るみたい」



 解説スキルが発動した。



 強化合成



 装備を強化してレベルを上げることが出来る。やったね、たえちゃん。当然Gゴールドもかるので、がんばれ♥がんばれ♥





 強化には何らかの道具とか装備を経験値にするみたいだ。ちょうどゴブリンを狩りまくってドロップした棍棒やらが沢山所持品の中に入っていたので全部つぎ込んだ。


 


「ありゃりゃ。経験値は足りたみたいだけど、Gが足りないね」



 強化の必要Gと表示された数字は50。

 ぼったくりやんけ。そんなのもう無理。日本円にして5万円だぞ5万。高校生にはきついね。



「ふぅん。Gって日本通貨で交換出来るのよね?どうやってやるのかしら」



「あーと、確か交換したいって念じればスマホにポップアップしたような」 



 ただし、レートはクソ。



「カードに入ってるのも出来るのかしら?……出来るみたいね。お金の受け渡しも……出来るみたいね。じゃあ、上げる」




 ん?


「あばばばばばば!?」



 ひょぇ、二度見どころか三度見四度見したね。



 なにせーー



 『アリスから1000Gが入金されました』



 なんてとんでもない通知がスマホに来たんだから。


 あわわわわわ



「狼狽えないの。こんなのはした金よ。今までの授業料と考えればむしろ安い買い物と思えるぐらいよ」



 やだ、男前……キュン。



 …


 ……


 ………



 べっー!落とされるところだったわー!あっぶねー!お金の魔力こえー!


 え?日本円にして百万だよ?それをはした金?全財産いくらあるんですかね、一体全体(震え声)。




 ーーーー



 いやはや、斎藤さんって怖いね。その漆黒のカードにはおいくら万円入ってらっしゃるんですかね?まぁ、怖いんで聞かないですけど。聞いたら命が脅かされる気がしてならないもの。



 斎藤から貰ったお金で取り敢えず暗殺者の短剣をLv2に強化した。強化時にぽわっと光るだけで特に姿形は変化しなかった。残念。



 暗殺者の短剣Lv2



 攻撃力:20


 敏捷:+5



 ふむ、攻撃力が上がったか。悪くない。



 次はショップだ。いやーここまでお金あるとうきうきだね!いえい!



 ショップからは取り敢えずもしものために回復薬ポーション3つと【解析Lv1】【索敵Lv1】【背刺バックスタブLv1】のスキルを購入した。全部で300G。こんな高い買い物生まれて初めてだよ……。


 まだ、お金には余裕は少しあるが少し様子を見ることにする。


 斎藤も僕にならって同じような購入をしたみたいだ。



 しかし、解析と索敵か。文字通りのスキルだが、いよいよRPGの定番スキルが揃ってきてワクワクしてきたぞ。


 そして何より背刺。初の攻撃スキルだよ。不謹慎なのは分かっているけど、試したくて腕がウズウズするぜ。



「ギャギャギャ」



 お、ちょうどゴブリンがリポップした。グールに気を取られていたけど、そもそも僕らは屋上にリポップしてるであろうゴブリンを狩りにきたのだ。

 登場してそうそう悪いが、すぐにご退場願うことにしよう。





 ーーーー


 光輝く青空と血痕がちらほら目に入る屋上で一人の美少女が緑色の化け物と対峙している。

 ゴブリンは唾液を撒き散らす勢いで威嚇するが、美少女は特に怯えた仕草は欠片もださない。

 むしろ、風に吹かれ流される髪の毛をかきあげる姿は余裕さすら伺えるほど。



「さてとお手並み拝見ってところかな?」


「ええ、やるわ」


 斎藤がレベルアップにより習得した初期ジョブは黒魔術使いだった。

 文字通り魔術を扱うもの。魔法ではないらしい。

 現状、僕は前衛職よりなので、斎藤が後方から攻撃してくれる魔術使いなのは幸運だと思う。

 本人はどう思ってるか知らないが、ぴったりだと思う。頭良さそうだし。なんか頭いい人はだいたい魔術とか魔法使い職って認識あるよね。



初級氷魔術エイス!」



 人の頭ぐらい大きい氷塊がゴブリンの顔面にゴンッと勢いよく炸裂した。

 ゴブリンの顔面は見るのも背けたくなるほど、ひしゃげていた。エグい……こっちまで痛く思えてしまうぐらいエグい。


 だが、正直僕の詐欺師のスキルより格好よくてずるいと思う。使い勝手も悪くない。

 やはり、遠距離攻撃というのは銃などの歴史が証明するように有効だ。



「倒したみたいね、レベルアップしたわ」


「お疲れさん。意外とすんなり行ったね」


 斎藤のゴブリンとの初戦闘は意外にもすんなり終わった。僕の時とは大違いだ。


「えぇ。この調子でどんどん倒して貴方に追い付くわ」


 彼女はそう意気込んで、屋上を後にする。屋上の先にはおそらくリポップしたゴブリン達が沢山いることだろう。


 無惨にも顔面をグシャグシャにされたゴブリンを一瞥。

 とりあえず、僕は斎藤をあまり怒らせないようにしようと心に決めた。ほんと、怖そうなので。いやほんと、命に関わりそうなので。



ーーー


斎藤アリス

Lv.3

job :魔術師Lv2


HP 70(+10)

MP 25(+5)

SP 30(-5)


筋力 4(−1)

耐久 6(−1)

知力 10(+2)

俊敏 5(+1)

集中 6(+1)

運  2


skill【解説】【隠蔽Lv.1】【索敵Lv1 】【解析Lv1】

【高速発動Lv1】【初級氷魔術Lv2】【初級炎魔術

Lv1】

称号【ブルジョア】



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る