午前三時の小さな冒険ーー2020年夏における最小の冒険譚ーー
有部理生
午前三時の小さな冒険
02 : 30
今まで取り組んでいた作業を終わらせ、適当にあとを片付ける。
2020 年の夏も、近年に
02 : 40 カシオペイアは暴れている。
02 : 50 カシオペイアはまだ暴れている。
夕方貰った餌でエネルギー補給は十分。外温動物であるカメにとって、熱帯夜は
03 : 00 ゴットン……と室内に大きな、しかし鈍い音が響く。
カシオペイアは脱出に成功した。
けれど、現在彼は
ただ、焦る必要もまた無い。比較的平べったい甲羅としっかりした
カシオペイアは外に落ちた瞬間、衝撃に備え手足と首を思いっきり引っ込めていた。床への落下の衝撃の余韻が完全に消えると、彼はまずは
結構な騒音が発生しているはずだが、
カシオペイアの揺れる体の勢いが増す。彼の
03 : 05 カシオペイアはおもむろに歩き始める。
一つの方向目指し一心不乱に。その先には、暑さを避けるため開けはなたれたままな寝室の
03 : 10 カシオペイアは立ち止まる。
03 : 15 カシオペイアは戸惑っている。
03 : 27 カシオペイアは戸惑っている。
周囲をひととおりうろつき、白い壁の中に入れるらしい
03 : 29 カシオペイアは立ち止まった。
白い床。白い壁。頭の上も真っ白。良く見ると天井から何かが吊るされているようだが、高いところにあって
その瞬間、音と光がはじけた。
03 : 30 カシオペイアはびっくりしている。
何かのロゴ、カシオペイアには理解できない光の文様が白い壁に浮かんだかと思うと、周囲に光でできた影が
03 : 32 カシオペイアは落ち着いた。
影たちが自分に何もしてこないことがわかると、彼の歩みはだんだんと遅くなる。影たちは色鮮やかで現れたり消えたりもするが、ただそれだけだ。音楽も流れているが、そちらは彼ははなから相手にしていない。
そしてやがて立ち止まり、首をもたげた。彼が止まると、影たちも止まる。ただそこにじっとしているだけの影に、カシオペイアは興味を失う。もうこの場所が何であるのかも、彼なりに確かめた。好奇心が満たされたので、カシオペイアは外に出るため再び歩き始める。すると、影たちはまた彼を追って動き出した。止まる。影たちも止まる。動く。影たちも動く。彼は正確な因果関係を理解したわけではなかったが、影たちの動きはカシオペイアの好奇心を刺激するには十分だった。
03 : 43 カシオペイアは動き回っている。
床の上を縦横無尽。がさごそごそと適度にすべらかな床の上を
03 : 44 カシオペイアはあくびをした。
床の中央にじっと止まり、頸を最大限伸ばす。頭の部分だけくっとくの字に曲げる。頭の平らな部分を床と平行にして、そのままカシオペイアはくわっと口を開いた。灰色のまぶたがせりあがり、白い
03 : 51 カシオペイアは興奮している。
光と影に
03 : 56 カシオペイアは影を積極的に追い回している。
影がカシオペイアに合わせてうごく
何のフラグが立ったのか、テントの中に連続した軽めの打撃音が発される。
04 : 00 カシオペイアは止まった。
カシオペイアは逃げ出した。
何が気に食わなかったのか彼は亀なのに
明け方東の空が白むころ、
装置に残っていたこの夜の
午前三時の小さな冒険ーー2020年夏における最小の冒険譚ーー 有部理生 @peridot
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