第5話 小野和泉の話② 清正と(小野)和泉&和泉61にして初めて書を志す P9-10
「そういえば」
ふと浅川は思い出したように言った。
「小野は61歳になるまで字が書けんかったのう」
「うっそだー!」
「武将が字を書けなかったら命令書とか読めないじゃん!」
太郎と次郎から抗議の声が上がる。
「でも、ワシ本人から聞いたからのう」
そうじゃ、確か肥後の加藤清正公と初めて対面された時じゃ…。と語り出した。
【清正と(小野)和泉】
「【清正公が小野へ初めて会った時、よろずの事をお尋ねしたのじゃ。やがて話は終わり小野が退出した後に(清正公が)言うことには
「樫柄の槍を一本持たせれば、(軍の)一方(の守り)を固めるのに不足はない者であるな。若い者はかの者を見習え」との事だった。】
「もしかして前回の加藤清正の家臣が小野さんに功績について聞いた話って、この言葉に反発した家臣たちがいじわるしようと思って色々尋ねたのかもしれないね」
「そうかもしれんなぁ。読み返すまで忘れておったワイ」
実際に浅川聞書でもこの話は順番が後になっている。時系列で追えば初対面の話が先だろうが、今回は原作を尊重した。
…嘘です。コロナと雨で外出できないから暇すぎて適当に小野という名前を探して今日見返したらこの話があったので追加で訳してるだけです。
本来なら小野和泉の武辺話はこの次に入るのが適当でしょう。
【和泉61にして初めて書を志す】
また【ある時、清正公は
「和泉は若いときより方々の取り合い(合戦など)にかかり、きっと書物などをしっかり読んでいる暇もなかっただろう」と推量された。
「御身(清正)も幼少より隙(暇)のなく、今更(書物を読むと言うのは)ご迷惑なさる」との話だった】
「爺ちゃん。いくら偉い人が言った事だからって、セリフにまで敬語入れたら読みにくくない?」
「加藤清正さんも勉強嫌いだったんだねー」
これを聞いて
【和泉が申し上げるには「私儀ながら(自分は)61歳までいろはの「い」の字も存じませんでしたが、高麗(朝鮮)で首実験をしていた所に毛利甲州公(※)の使者が直接 書状を持参したことがありました。
左近(立花宗茂)の家老が老体なのに字も書かないとは言い辛く、どうしようかとあぐんでいると内田玄怒(如? 立花家臣※2)が拝見して、うまく返事を書いてくれるよう頼み、なんとか無事済みました。
これを情けなく思い、日本に帰った後、女房に文字を書いてもらい、いろはを習い、今のようににじり申し上げます」と話したらしい。
清正が思うに、これはご挨拶(社交辞令)に言ったのだろうと思い、玄怒やほかの柳川から来た者に尋ねた。
その所、言っていることに相違なかったので「誠の武士」とはもっともこのようにある事だと言った。それ以来、(清正公は)ひときわ和泉と入魂の間柄となり常にお話をしたり囲碁を打つようになった】(長いので残りは次回)
「年老いても向学心がある歴戦の勇士という事でよっぽど気に入られたのじゃろうなぁ」
「これ、昔からの部下にしたらすっごく面白くない事だよね?」
「男の嫉妬って女性の一万倍はあるって誰かが言ってたし、戦が亡くなった頃の武士って陰湿そうだよねー」
「そんな心労もあったのかのう。小野は64歳(数え年)で亡くなっとる」
「毒…もられてないよね?」
「めったな事を言うもんじゃなか!(博多弁)」
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もう1P分ありますが長いので一度切ります。
※毛利甲州 毛利甲斐守こと毛利秀元か?
長門長府藩の初代藩主。毛利元就の四男である穂井田元清の次男で、天正7年1579~慶安3年1650年の間存命。13歳で高麗に出兵した事になるが実際にその時期出陣している。
父親は文禄の役では、病床にあった輝元に代わって自ら毛利軍の総大将となった。とかこの時、秀吉は元清に土産として虎を所望しており、元清は虎を2頭生け捕りにして秀吉の下へ送ったとあるので、この御曹司と小野は交流があったのかもしれない。
小野は1546生まれとされているが、これだと朝鮮には47歳で渡り、14年後の1606年に書を志した事になる。というか高麗出兵は1598年に終わるので、そこから8年かけて覚えたのかもしれない。
まあ年齢については再考の必要がありそうである。
※2 内田玄如 内田鎮家
立花宗茂が改易され、柳河城が開城した後、熊本藩の加藤清正の許に行くのに同行せずに浪人となる。筑前国で生き残った次男・連久と共に隠棲し元和5年(1619年)に死去。
連久が長男・統続の名跡を相続して柳川に再封された宗茂に仕官して柳河藩士となる。らしい。
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