第14話『大空戦Ⅱ』
リュークは、リンダの元へと歩いて行った。リュークが乗り捨てたシーセイバーの周りでは整備員が油まみれになって忙しく動き回っている。
リンダは、その中で時たま整備員のケツを蹴り上げながら指示を飛ばしていた。
「リンダ!」
リュークが彼女を呼ぶと、リンダはリュークの方を振り返った。
「もう大丈夫かい?騎士さま」
「ああ、もう大丈夫だ。それより、ちょっとシーセイバーについて良いかな?」
「なんだと?」
リュークが言った瞬間、リンダは怪訝な顔をした。リュークは、整備士たちがあちこち点検口を開けて忙しく動き回っているシーセイバーを指差して続けた。
「主翼燃料タンクの中身を全部出して、機銃弾も機首側の一門ずつを残して他は空にして欲しいんだ」
「なんだって?正気か⁉︎」
リュークの突拍子も無い、常識外れの要望にリンダが驚愕のあまり大声を上げてしまう。それに驚いた整備士たちが、作業の手を止めて何事かと二人に視線を集中させた。
リンダは、一瞬口を押さえて決まり悪そうに目を逸らしてから、改めてリュークを見上げて問い直した。
「本気で言っているのか?」
「ああ。それしか方法はない」
「そうか……帰還できなくなっても知らないが、いいのか?」
再び、リンダが真剣な表情で問いただしてくる。リュークは、それに躊躇なく、無邪気に答えた。
「ああ、やってくれ」
「分かった……おい、何手ェ止めてんだ!聞いていただろ、両主翼タンクのオイルを全部抜け!そしたら一番内の機銃二門だけに演習弾を装填しろ!急げ!」
リンダは苦笑してから、手を止めてリュークとリンダを見ていた整備士たちの方を振り返って指示を飛ばした。それから、整備士たちが慌てたように作業に戻り始めた。その様子を見届けたリンダは、リュークの方を振り返ってニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「大した自信だな、騎士サマ」
「そりゃどうも」
笑顔でリュークは答えると、リンダに手を振りながらその場を後にし、メイナードの方へと向かって行った。
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