箸休め マーベラスなクモ! ②クモの脚は八本じゃない!?

※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

 お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 ◇節足せっそく動物どうぶつは超巨大なグループ!


 地獄からの使者! を紹介している今回のシリーズ。

 前回は猛毒を持つクモが、意外と少ないことを取り上げました。


 クモがぞくする節足せっそく動物どうぶつは、地球の動物の中でも最大のグループです。

 地球上には140万種ほどの動物がいますが、その内の約85㌫を節足せっそく動物どうぶつめています。


 当然、生活環境も多彩で、彼等が住んでいない場所を探すほうが難しいほどです。


 陸上には昆虫やクモが、海中にはエビやカニと言った節足せっそく動物どうぶつが棲息しています。

 水深1000㍍を超える深海も、ゴエモンコシオリエビやツノナシオハラエビと言った節足せっそく動物の住処すみかです。


 彼等に付いて知りたい方は、以前書いた『深海しんかい紳士録しんしろく』シリーズをご覧下さい。

 ゴエモンコシオリエビ:  https://kakuyomu.jp/works/1177354054882713822/episodes/1177354054882959535

 ツノナシオハラエビ: https://kakuyomu.jp/works/1177354054882713822/episodes/1177354054882959565 URLをクリックすると、該当する話に飛びます。


 ◇節足せっそく動物どうぶつってどんな生きもの?


 さすがに深海の生物を見ることはまれですが、昆虫やクモは身近な存在です。

 エビやカニはポピュラーな食材で、食卓に上がることも少なくありません。


 しかし「節足せっそく動物どうぶつ」がどういう生き物なのか、説明出来る方は少ないのではないでしょうか。


 彼等は無脊椎動物むせきついどうぶつの一種で、名前の通り「ふし」のあるあしを備えています。

 身体も「体節たいせつ」と言うふしで構成されていて、明確に分けることが可能です。


 また彼等の身体は、殻のような「外骨格がいこっかく」に包まれています。

 ある程度成長すると脱皮を行い、大きくなっていくのも特徴です。

 余談ですが、作者は先日、始めてクモが脱皮するところを見ました。


 ◇節足せっそく動物どうぶつには四つのグループがある!


 昆虫とクモは共に節足せっそく動物どうぶつですが、同じグループではありません。


 そもそも現代の節足せっそく動物どうぶつは、四つのグループに分けることが出来ます。


 一つ目が、エビやカニのぞくする甲殻類こうかくるい


 二つ目が、ムカデやヤスデのぞくする多足類たそくるい


 三つ目が、一般に昆虫と呼ばれる六脚類ろっきゃくるい


 そして四つ目が、クモやサソリのぞくする鋏角類きょうかくるいです。


 ダントツで数が多いのは、昆虫がぞくする六脚類ろっきゃくるいです。

 驚くべきことに、約100万種の生物がこのグループに分類されています。

 つまり、節足せっそく動物どうぶつの大半は昆虫です。


 ◇昆虫と鋏角類きょうかくるいの違い


 別々に分類されていることからも分かる通り、各グループにはそれぞれ特徴があります。


 例えば昆虫の身体は、頭、胸、腹の三つに分けることが可能です。

 しかし鋏角類きょうかくるいの身体は、前と後ろの二つにしか分けられません。


 前のほうは頭と胸が融合したパーツで、「前体ぜんたい」や「頭胸部とうきょうぶ」と呼ばれます。

 一方、後ろのほうは腹に相当する部分で、「後体こうたい」と言う名前が付いています。


 昆虫には触角がありますが、鋏角類きょうかくるいにはありません。


 はねの有無も、大きな違いです。

 大多数の昆虫には四枚のはねが生えていますが、鋏角類きょうかくるいにはありません。


 最も有名な違いは、歩くために使うあしの本数でしょう。


 昆虫は胸の部分に、六本のあしを生やしています。

 一方、クモやサソリのあし前体ぜんたいにあり、数も八本です。

 また同じ鋏角類きょうかくるいでも、カブトガニは一〇本のあしで歩きます。


 わざわざ「歩く」と言ったのは、他にも「あし」があるためです。


 ◇クモには一二本のあしがある!?


 実は鋏角類きょうかくるいの生物は、前体ぜんたいに一二本のあしを備えています。

 しかし先頭の二対につい(二組)は特殊な構造をしていることが多く、歩行には使われません。


 そもそも鋏角類きょうかくるいの「鋏角きょうかく」とは、一番前にあるあしのことです。


 クモの場合は円錐型えんすいがたで、毒液を出す機能を持っています。

 もう何となくお分かり頂けたでしょうが、「大顎」や「牙」と呼ばれる部分です。


 鋏角きょうかくの次に付いている一対いっついは、「触肢しょくし」と呼ばれます。


 触肢しょくしは昆虫の触角に相当する器官で、臭いや振動を感じ取ることが可能です。

 また内側には消化液を分泌する腺があり、獲物を溶かすのに使われます。


 クモの口はただの空洞で、固形物を食べることが出来ません。

 そこで消化液を獲物に注入し、ドロドロになった中身を吸い取ります。

 よく「クモは獲物の生き血を吸う」と言われますが、これは間違いです。

 更に触肢しょくしには別の機能もあるのですが、そちらは本編をご覧下さい(笑)。


 ハラフシグモのクモは、九本目、一〇本目のあしに見える巨大な触肢しょくしを持っています。

 もっと分かりやすいのがサソリで、「ハサミ」と呼ばれる部分が触肢しょくしです。

 またカブトガニの触肢しょくしはほぼあしと同じ形で、歩くために使われています。


 昆虫と鋏角類きょうかくるいの違いは、これだけではありません。

 サソリやクモと昆虫は、呼吸の方法も異なります。


 長くなったので、今回はここまで。


 次回はクモの呼吸に迫りたいと思います。


 ◇今回のまとめ


 ☆昆虫やクモがぞくする節足せっそく動物どうぶつは、動物の中でも最大のグループ。


 ☆節足せっそく動物どうぶつは地球上のあらゆる場所に住んでいる。


 ☆節足せっそく動物どうぶつ無脊椎動物むせきついどうぶつの一種で、「ふし」のあるあしを持っている。身体も「体節たいせつ」と言うふしで構成されていて、明確に分けることが可能。


 ☆節足せっそく動物どうぶつの身体は、殻のような「外骨格がいこっかく」で覆われている。ある程度成長すると脱皮を行い、大きくなっていく。


 ☆現代の節足せっそく動物どうぶつは、以下の四つのグループに分けられる。


 ①エビやカニのぞくする甲殻類こうかくるい


 ②ムカデやヤスデのぞくする多足類たそくるい


 ③一般に昆虫と呼ばれる六脚類ろっきゃくるい


 ④クモやサソリ、ダニなどが分類されている鋏角類きょうかくるい


 ☆昆虫の身体は三つに分けられるが、鋏角類きょうかくるいの身体は二つにしか分けられない。


 ☆昆虫には触角があるが、鋏角類きょうかくるいにはない。


 ☆大多数の昆虫は四枚のはねを生やしている。一方、鋏角類きょうかくるいにははねがない。


 ☆昆虫は六本のあしで歩く。しかしクモやダニは八本、カブトガニは一〇本のあしで歩く。


 ☆厳密に言うと、クモには一二本のあしがある。ただし先頭の四本には別の役目があり、歩くのには使われていない。


 ☆鋏角類きょうかくるいの「鋏角きょうかく」とは、一番前にある二本のあしのこと。


 ☆クモの鋏角きょうかくは、「大顎」や「牙」と呼ばれる部分。


 ☆鋏角きょうかくの次にあるあしは、「触肢しょくし」と呼ばれる。


 ☆触肢しょくしは昆虫の触角に相当する器官で、匂いや振動を感じ取る能力がある。


 ☆クモは獲物に消化液を注入し、ドロドロになった中身を吸い取る。「生き血を吸う」と言うのは間違い。


 ☆サソリの場合は、「ハサミ」と呼ばれている部分が触肢しょくし


 ☆カブトガニの触肢しょくしあしと同じ見た目で、歩くのに使われている。


 ◇参考資料


 ぼくらはみんな生きている!

 ヘンで奇妙な昆虫図鑑

 丸山宗利監修 (株)日本図書センター刊


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊


 クモ学 摩訶不思議な八本足の世界

 小野展嗣著 東海大学出版会著


 ネイチャーガイド 日本のクモ

 新海栄一著 (株)文一総合出版刊

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