第27話 ポンコツ転校生のもらい泣き

山本「あぁぁぁあああああ忘れてたあ! ヤバイヤバイ!」


佐藤「どうしたのぉ?」


山本「時間だよ、時間時間!」


佐藤「ペンライトにタオルってことは、あぁ『異世界で幼馴染と魔王討伐します』の時間だねぇ」


沙織「…………っえ……ぁ。……それじゃ……私は、自分の部屋に戻るね」


佐藤「一緒に見ても、いいと思うよぉ」



山本「妹よ、僕はこのアニメを世界で一番愛してる。一緒に応援して欲しい。それに、お前も好きなんじゃなかったのか? 確かそう言ってただろ?」



沙織「っぅ、ぅ……」



山本「ひとりで静かに見たいのか?」


佐藤「沙織ちゃん、ファイトだよぉ」



山本「頼むよ。一緒に画面の向こうにいるIROAさんに声援を届けて欲しい。彼女にとって、これが初めてのメインキャストになる。デビューしてまだ日も浅い。きっと苦労も多い。ネットでは彼女を批判する声が多い。それはみんな彼女の才能に嫉妬してるだけなんだよ。僕には、分かる。IROAさんは、とてつもなく才能がある。みんなを幸せにする、みんなに生きる勇気を与える人だ。だから、僕は応援したいんだ」



佐藤「なんだろうねぇ。ちょっと胸痛いよぉ。これ見てられないなぁ」



沙織「……ぅ、うん。そこまで言うなら。仕方ないから一緒に見てあげる。なんで、ペンライトまであんのよ」


山本「全力で応援したいんだ! きっと僕たちの応援は、IROAさんに届くはずだ」


佐藤「応援って、ちゃんと届くんだねぇ。不思議だねぇ」



山本「さあ、始まるぞ!」



佐藤「(アニメを見ている間、山本君は叫んだり、笑ったり、ツッコミを入れたり、忙しい人だ。見ていて飽きない人。その情熱は嫌いじゃない。でも、沙織ちゃんにとって、山本君がIROAさんを熱心に応援してるのって、どんな風にうつってるのかなぁ。なんだろうねぇ。やっぱり見てて、苦しいなぁ。山本君はアニメが終わると、エンディングでボロ泣き中。泣きながら、熱弁開始。少し耳を傾けてあげないとねぇ」


山本「――IROAさんが一言喋るだけで、世界観が広がる。世界が色を放つ。そのキャラが初めて生きてくるんだ。沙織にも分かるだろ。IROAさんの演技の良さが! このアニメを大ヒットに導いているのは、明らかに彼女の演技なんだ。なのに、世間やネットは言いたい放題。本当に酷い。ぉぉぉおお、沙織……、お前まで一緒に泣いてくれるのか! 気持ちを分かってもらえて嬉しいよ!」



沙織「……ぉ、ぉぉぉ、ぉおぢぃちゃ……ん」



山本「お兄ちゃんも言えなくなるほど、泣いてくれて、IROAさんを愛してくれてありがとうなっ!」



沙織「……っわ、わたしねぇっ。……っ…………っ」



山本「もう言葉はいらない。沙織の気持ちに、胸が張り裂けそうだ。IROAさんの事務所、アイモエンタープライズにもきちんと沙織の声を届けておく。任せろ! IROAさんは、本当に素晴らしいんだ。これで良く分かった」



佐藤「このタイミングで、沙織ちゃんを抱きしめるとか、私まで泣いちゃうょぉ」







【雑談】

山本君、ありがと。って言いたくなるよねぇ。




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ポンコツ転校生と同居したら急に妹が甘えてきた 木花咲 @masa33

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