この英雄は私が育てました。

糖来 入吐

育成1『転生前』

一人の英雄がいた。


一人の魔王がいた。


英雄は剣を構えた。


魔王は剣を構えた。


そして




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




二人は叫びながら剣を交える。




キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!




鋼と鋼が叩かれる音


二人は何度も何度も何度も剣を叩きつけ合う。


そして、




「はあはあはあ」


「はあはあはあ」




と息を切らしながら睨み合う。


二人の目には二人しか映っていない。


そして




「最後だ……終わりにしよう……魔王」


「そうだな……同感だ……負けて悔しがるのはどっちだろうな……この私にも最後まで分からんよ」




と言って二人共、次は黙って剣を振るった。




二人はすれ違った。




そして




ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!




と血を噴き出しながら魔王は倒れた。


英雄は肩を切られて血が少し噴き出た。


魔王は




「ぢぐじょう……ぢぐじょう……勝ちたかったな……奪いたかったな……この世界を……我らの物にしたかった……負けてしまうなんて……くやしい……なあ……」




ジュウウウウウ!




こうして魔王は滅びた。


英雄はさすがに疲れたのかその場で倒れ込む。


するとすかさず人が集まり英雄を抱き上げる。


一人の男は言った。




「お疲れ……ついに……ついに魔王を打ち倒せたな……」




と嬉しそうに言った。


英雄はアーマーを脱いだ。


そして、とても美しい顔を見せた。


彼女は




「ああ……さすがに疲れたよ……」




と言った。


それを聞いてもう一人の女が




「感想それだけ?」




とクスっと笑う。


それを聞いて英雄は




「そうだな……感想……魔王を倒した感想か……」




とそして彼女は




「…………………である……だからこの感動を……師匠に伝えたい」




と言った。




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私は、天和あまかず せいだ。


私は結婚をせず子供も生まれず趣味もなく、ただひたすら会社で働いて家に帰って寝るだけの毎日を送っていた。


そんなある日、一人の少女に出会った。


少女は親に虐待をされていた少し近所で有名な少女であった。


私は法律的に考えて彼女をすぐにでも警察に届けないといけなかった。


そうしないと警察はこれを誘拐事件として取り扱い私の人生は終わるからであった。


しかし、私は何故か少女をマンションの自分の部屋に連れ込んで食事を取らせて綺麗な服を着させて数日間一緒に住んでしまった。


完全にこれは誘拐だ……しかも言い訳がしようのない。


そして、一週間後警察が私の家に訪れて、私を連行した。


少女はすぐ家に帰されて虐待の日々を送ったという。


こうして私は数日間牢屋に入れられて貯金からその子の親に賠償金を払い釈放された。


その頃には私は会社を首になり住んでいたマンションからも追い出されてしまった。


親はもうとっくに死んでおり、身内も私を引き取ろうとはしなかった。


誘拐した35歳の男なんて一緒にいるだけで厄介だからだ。


私はホームレスになりゴミ箱を漁ったり缶を拾ってお金に換えたり等をして過ごす毎日になっていた。


しかし、私はこんな目に合っていたのに依然と変わらない日々に思えていた。


会社から帰って寝るだけの毎日と同じように感じて過ごしていた。


雨露は屋根のある場所へ移動すれば問題はないし、体を冷やさないようにするのも段ボールハウスと新聞があれば問題はなかった。


元々あのマンションは欠陥住宅だったのか雨漏りはして、隙間風で体は冷える等外と変わりはないように思えていたのが大きいのだろう。


そして、私にとって前と変わりない……称号がホームレスに変わっただけの日々を過ごすようになった。


そんな日々を過ごして15年……私は50歳になった。

私は完全にホームレスとなり、髭もモジャモジャと生やしており小汚い服をいつまでも洗わず破れても捨てることが出来ない状態の為異臭を放っていた。


そんな時であった。


一人の女性が私の前に現れた。


とても綺麗な顔立ちと黒いロングの髪で綺麗なスーツを着た眼鏡の女性であった。


顔を見ただけで何故か分かってしまった。


彼女はあの時私が家に入れてしまった。


虐待をされていた少女であることを。


彼女は言った。


「あの時は本当にありがとうございます……私のせいでこんな酷い目に合せてしまって申し訳ございません……ですので私の家に来ませんか……恩返しをさせてください!」




と言ってきたのであった。


私はその時初めて生きていて良かったと実感した。


彼女と一緒に暮らすことにではなく、彼女が立派に育ったことに対して喜びを感じたのであった。


その喜びはもはや口だけでは言い表せないほどに……


そして、私は




「大丈夫です……私はこのままで!」




と言った。


だが当然の様に彼女は




「そういう訳にはいきません! 私のせいでこんな目に合っているのに放ってなどおけません!」




と言って私の手を引っ張りそのまま自分の家と連れて行った。


彼女はどうやらマイホームを手に入れていたらしい


しかもなぜか一人で住むには大きすぎるぐらいの


私は




「なあ……家には家族もいるんじゃないのか? こんな汚い人間が入ってきたら……」




と言って私は逃げようとするが彼女は




「大丈夫です! 私は一人暮らしです! いつかあなたを探して一緒に住もうと思ってこの家を建てたんですから!! 1年前に!」




と嬉しそうに言った。


私はそんな新しく綺麗な新築に汚い足で入ってしまった。


私は




(これは……変に気まずい……)




そんなことを考えながら家のとても綺麗なソファーの前へと立たされて




「そこで寛いでください! 何が飲み物を持ってきます!」




と言って台所へと彼女は向かった。


私は




「……座るか……」




と一言言ってソファーに座った。


歳のせいか今の若者の歩幅だと体力がかなり限界に達してしまって、座らざる負えなかった。


ゆっくりしていると彼女はとても高級と思える香りをさせた紅茶を私に渡してその後、豪勢なステーキを食べさせてくれた。


私は胸やけせざる負えなかった。


年は取りたくないものだ……


こうして私は彼女の家に一泊することになった。


彼女は寝る前に




「好きなだけここに暮らしてくださって結構ですよ! お金はいつだって渡せますので!」




とだけ言って自分の寝室に入っていった。


私は思った。




「違う……私はここで暮らしたいからあの子を助けたんじゃない……私は……あの時感じた高揚感……喜び……それを味わいたい……だがもう年だし子供は出来ないだろう……他の子を救える力もない……いったいどうすれば……」




そんな悩みが頭をぐるぐると回りながら朝を迎えた。


不思議とふかふかの布団のせいか一睡も出来なかった。


長くホームレス生活をしていた弊害か……と思った。


そして、彼女は




「はい! 今日の分!」




と言って何の躊躇いもなく100万円を渡してきた。


私は唖然とした。


と同時に恐怖した。




「あの……さすがに……」




と言ったが彼女は




「いいんです! あの時のお礼をしたいんです! あとこれ合鍵!」




と嬉しそうな表情で鍵も渡した。




「では私! 会社に行ってきます!」




と言って家を出た。


私はすぐに追いかけて100万円を返そうとしたが目の前にポルシェが止まっていた、


そして一人のスーツを着た女性が




「社長、今日の予定は長嶋商事との打ち合わせとその後立松様との商談があります」




と言っていた。


彼女は




「分かったわ!」




と言ってそのまま車に乗り行ってしまった。


私は渡された百万円と共に置き去りにされた。


そして、何かひそひそと話している奥様方を見て




「まずい」




とボソっと言ってすぐさま彼女の家の中に避難した。


私は




「……どうしろって言うんだ……こんなの……」




と困り果てた。


私はソファーに座り取り敢えず今後どうするかを考えることにした。


まず




「この百万円を使えって言っても……」




と悩む。


だが彼女にいらないと言っても放って置いてくれと言っても聞いてくれないだろう……なんせ私が自分のリスクを承知で彼女を一度保護したことがある。


彼女は以前の私の様にリスクを負ってでもきっと助けようとしてくれる。


なれば自分はこのままで無くどうにかして彼女から助けて貰ったようにホームレスから立ち直らないといけない……そうすることで彼女自身の思いも叶えられるだろう。


そして、私は一つの結論に至った。




「この百万を使ってアパートを借りることから始めよう」




と考えた。


まずは住所を作るところだ。


私はアパートを追い出されて住所不定となった。


貯金も賠償金ですべて消えた。


元々ブラック勤務で預金をする程の収入もなかった。


そんな私に必要な物は住所だと考えた。




「ダメですね……今住所が分からない以上賃貸を照会できません……」




と言われてしまった。


私は




「えっと……住所が欲しいからここに来たんですが……」


「でもこちらも住所不定の人間に賃貸契約をする事は出来ませんので……身分証明書うも持っていないみたいですし……」




とさっそく不動産屋に聞いたが現実は思った以上に住所不定にはきつかった。


私は




「そこを何とか……」




と言ったが




「申し訳ございませんが……お金を積まれても……ていうかなんでそんな金あるのに住所不定何ですか? そのお金はどこから……」




と怪しむように不動産の方が聞いた。


私は




「友人から借りました……」




と言った。


嘘は言っていない……彼女は私を無償で泊めてくれた……つまり友人ぐらい語っても悪い事ではない……


だが




「そうですか……では警察に」




不動産は躊躇なく警察を呼ぼうとした。


私は恐怖してすぐに逃げた。




「はあはあ……」




と息切れをしながら彼女の家へと戻った。


その頃にはすでに夜遅かった。


不動産屋さんはまるでリレー選手の様に私を追いかけていた。


私はホームレスの土地勘で何とか色々と回り道をして不動産屋を撒いて見つからないように逃げ切った。


その為、余計な時間と労力を消費した。


お腹もペコペコだ……


そして




「ただいま……」




とヘトヘトになりながら彼女の合鍵を使って家に入ると




「おかえりなさい! ご飯とお風呂どっちにしますか!」




と言ってきた。


私は




「……お風呂」




と汗を流しながら空腹を耐えて言った。


彼女は




「分かりました!」




と言ってお風呂に入れてくれた。


そして、その後すぐに彼女の手作り料理をがっついた。


彼女は




「フフフ! そんなのお腹空いてたんですか? 今日は何を?」




笑いながら聞いた。


私は




「いつまでもここに居たら迷惑だと思って住所を作ろうとして不動産屋に追い掛け回されていた」




と私は言った。


すると彼女は




「そんな! 私が養うのに!」




と言ったが私はどうしてもそれが嫌だった。


そして




「嫌……さすがにそれは……私自身が嫌だ」




と正直に言った。


すると彼女はちょっとビックリしていたがすぐに気付いたような表情をして




「なるほど! 人生を謳歌したいんですね! 確かに何も成し遂げないで死ぬのは人生に悔いを残してしまいますし! それはダメですね! 分かりました! ならここを住所にしてください! そうして就職して本当に貴方が自分の住所を持ちたいなら私は全力であなたをサポートします! 貴方がやりたいことがあったならそれを手伝わせてください!」




と嬉しそうに言った。


私は




「でも迷惑じゃ……」




と言ったが彼女は




「なら私だって貴方と暮らしていた時迷惑を掛けていると思っていましたよ……でも貴方はそんなことも関係なしに私を助けてくれた……私はそれがとても嬉しかったんですよ! それを返したいと思うのは私にとって重要なんです! 私の事を思うなら私のこの思いも受け取ってください!」




と言った。


やはり彼女はどうしても私に恩返しがしたいようだ。


私は




「分かった……ならここの住所を当分使うよ……でも生活費は払わせてくれ……」




と言ったが




「それは良いですが……やりたいことの為に貯蓄してそれを資金にする方に回した方がいいですよ! そうすれば貴方はすぐにでも夢を実現出来ます! こういっては何ですがやはり年齢もありますし!」




とはっきりと失礼なことを言われた。


しかし、彼女の言ったことも事実……つまり私は生い先が短い事を考えるとここで遠慮すれば私の目的も達成されない可能性がある……それに彼女は恩返しをしたいんだ……ここで妥協すれば彼女にもっと迷惑を掛ける……それどころか私のせいで彼女の人生に悔いを残すだろう……


私は




「分かった……では恩返しを受けてそして私は私の道を進むよ……」




と言った。


彼女は嬉しそうに




「はい!」




と言って了承してくれた。




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その日の夜。。。


私は考えた。




「私のやりたいこと……いったい」




と頭の中でそのことばかり考えて眠れなかった。


彼女の施しをずっと受けるわけにはいかないと考えたが今後自分の人生に悔いを残したくないとも今は考えている。


そして




「そうだ……彼女があんなに素晴らしく育っていて私は物凄く嬉しかったじゃないか! 喜び! 生きていて良かったと思えたじゃないか! あの高揚感をもっと味わいたい! もっと感じたい! その為には!」




と考えてその答えはすぐに見つかった。




「そうだ……私自身が児童養護施設を作って恵まれない子供の助けになろう! 残りの人生を孤児の子を育てることを生きがいにすればいい!!」




と私は考えた。


私のとって一番素晴らしい選択だ、児童養護施設の許可さえとれば誘拐などと警察に文句を言われる心配はない、許可さえとれば何の問題もないという結論が私に出来た。


そして、それは明日からその為に準備を進める。




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次の日私は彼女に送られて家を出た。




「では……私の人生の復帰の為に……」


「行ってらっしゃい」




と見送られながら私はまずハローワークへと向かう。


歳が歳だから叶うかどうか分からないが……それでもやり遂げたい……だからこそ今は動いていく。


そう決めていた。


だが




「ふう……ふうう……ふうう……」




とかなり肥満体質な男が息を荒げながら見ていた。


私は自分ではないと思ってそこを通り過ぎようとしていたが




「待てよ!! 気づいてんだろ! ふざけんじゃねえぞ!! てめえ!! てめえはああ!! あの子の何なんだよおおおおおおお!!」






と私を睨みつけながら叫ぶ。


私はやはりかと思い仕方なく




「あの子? あそこの家の人の事ですか?」




と慎重に質問する。


すると男は




「うごああああはあははははあああ!! 白々しいいいいいんんだよおおおおおおおおお!! あの子をおおおおおおお!! 俺のおおおおおおお!!」




と言って何か怒りを向けてくる。


私は正直恐怖で震え上がった。


なんせ彼は刃物を片手に持っていた。


私に避けられるだろうか……逃げ切れるだろうか……


そんなことを考えていると男は




「死ねえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」




と言っていきなり襲ってきた。


私は逃げようとした。


しかし




「!? う! 動かん!! 何だ!」




と私は自分の足が竦んで動けなかった。


私は




「ちょっと待て!! ちょっと待ってくれえええ!!」




と叫ぶが男は




「黙れえええええええええええええええええええええ!!」




と言ってこっちの話を聞かないでそのままナイフを向けて襲ってくる。




「あああああああああ!!」


「だあああああああああああああああああああああああああああああ!!」




ザス!!




と胸あたりに勢いよく刺さった。


私は避けるなり逃げるなりと考えていたのに……何故動けなかった。


何で……夢を叶えようと考えて今行動にしようとしていたのに……50歳になって生きる希望を見つけて……あの時の高揚感と生きる喜びを感じたいと思っていたのに……


意識が遠のいていく……目が霞む……何だよ……結局……何も……でも……あの子は……助けられて……それだけでも……良かった。


もし来世があるなら……あの高揚感を……もう一度……


意識が消えた。




そして、天和 勢の魂は作り替えられて転生をした。


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ある国に一人の子供が生まれた。


子供は貴族の子供として生まれた。


子供はエリズと名付けられた。


エリズはすくすくと育った。


エリズは物心を着けてまず初めに思ったのは




(人を……育て上げたい……)




という感情であった。


子供である身で何故そんなことを考えてしまうのかエリズは自分自身にも分らなかった。


だがエリズは




(でも何故だろうか……それをしないといけないと感じる……それをしないと僕自身が! したい事ってことだけが分かる!! 分からないがそれをしたい事だけが分かる……)




と日頃から考えるようになった。


天和あまかず せいは転生をして、魂は作り替わった。


しかし、心に残った後悔だけが残ってしまった。


だがエリズ自身は記憶がなくその後悔が残り自分自身がそのように考えてしまうが分からなかった。


その為、エイズの転生前の後悔は欲求として現れてしまったのであった。


こうして、彼は人を育てる欲求を叶える為、人生を費やそうと考えるようになった。


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