第七回 ……千佳、君は悲劇のヒロインなんかじゃないんだよ! こんなにも、こんなにも君は、みんなから愛されてるハッピーなヒロインなんだから!


 目覚めたら、


 チカチカするカーソール……NPCノートパソコンの画面。ちょうど一年前の風景から一変、今現在の風景? 刻は進んでいる夜明け近し、四角い窓から見える星空……薄紅色に被っている。


 そうだ、返事を……そう返信をしなければ、

 でもその前にね、僕は会いたいの? 本当に、本当に会いたいの?


 千佳ちかは……千佳はね、変わったの?

 きっともう、君の知ってる千佳じゃないんだよ。……だって一人称は『僕』


 君といた頃の『私』じゃない。……本当のこと言ったら、怖い。何が怖いのか?


 記憶の中で解凍される一年前の記憶。千佳は僕のまま・・・・・・・でいられるのか、つまりトラウマに呑まれることなく初恋の頃に……ううん、それ以上にハッピーに見える風景の渦中で、


 君の要望に……「僕に会いたい」という君の思いに……

 意を決し、返事は……返事はね、


「もちろんOKだよ」


 そうそう、もちOKって……背後、振り返ると「梨花りか」がパジャマ姿で、すでにもう傍らに。……「いつからいたの?」と、思わず僕は問う。その言葉自体には、それ程の意味はないけど、梨花の目……少し赤い。頬には少し、……涙腺崩壊した跡も。


 何となくわかるの。――僕のエッセイ、読んじゃったって顔してるから。


「会おうよ千佳、太郎たろう君に。

 善は急げだよ、さっそく今日。僕も一緒に行くからね」……って、それじゃまるで『姉公認』じゃない。――太郎君きっと驚く、僕と瓜二つの女の子が一緒に来るから。


 すると、もう笑顔満開。


 今の季節……『二〇二〇年夏物語』に、力強く咲き誇る向日葵のように。ここから初恋の物語も再開するの! 姉公認の『僕と太郎君がペアーを組む、℮スポーツ物語』


 ――同じ涙でも嬉し涙。こんなにも、僕は愛されていたんだ!


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約束だよ! 君が僕に℮スポーツの楽しさを教えてくれたんだからね。 大創 淳 @jun-0824

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