登場人物考察 12~14

◇湯木 逸見

 十六歳。サッカー部のフォワード。

 この手のパーソナリティを付与されたキャラクターが、悪あがきのひとつも見せず惨めに死んでゆく展開こそご都合主義なのでは──と思っている節があるので。

 一矢報いることで譲次郎を奮起させ、読者に「髑髏の頭部に衝撃を与えると爆発する=動きが鈍いからといって死角から頭殴ったろとかいう攻略法は悪手」というティップスを伝える役目を担ってもらった。

 とはいえ、続くエピソードで理杏が異能による猛威を振るったので。一部読者から「あのタイミングでその情報を読み手に開示した意図は何だったのか」と思われている可能性が微レ存。

 余談だが、「ずるずる」という表現は好き。へたに仔細を書かれるより、何だか映像がダイレクトに浮かんでくる気がする。


◇長門 香澄

 十六歳。文芸部。得意科目は日本史だった。

 つむぎと同じく文芸部所属。よって少なからず接点はあったと思われるが、そもそもつむぎに他の部員と反りが合わず、幽霊部員と化している──という設定があったため、どうにも掘り下げようがなかった。

 逸見同様何らかの主義主張をもって動く一個人というよりは、譲次郎に「この女子が自分を庇ったのではなく、自分がこの女子を盾にしたのではないか」という鬱屈を与える目的で物語に組み込まれた歯車的キャラクター。まあ、細かいことを云えば、好きで盾になったわけではなく、逃げ遅れたわけだが。


◆ヴァルカン

 怪人。名前の元ネタは某不具の神。

 アメリカン・コミックのヴィランを彷彿とさせる容貌をしている。接触した人体を自在に変形させる能力を有しており、恐らくだが作品の行く先が不明瞭過ぎて宙ぶらりん状態だった読者を「ああ、そういう方向で行く?」とある意味ほっとさせたキャラでもある(パーマストンはただの物理攻撃だったからね)。

 武器化させた人体は、耐久性にやや難あり。とはいえ、「二メートルを優に超える全長」に「鎧が如く絞り上げられた肉体」なので。フツーに素手で戦えば? と思わなくもない。多分、武器化した人体を粗末に扱うのが趣味なのだろう。

 顔の上半分が包帯で隠されている。このポイントについて「目は魂の窓口であるというメタファー→目許を隠すことで魂の出入りを封じる→不死性をアピールする」とか、そういう意図が当時十六歳だった私にはあった気がする。知らんけど(改稿後は口許だけが空いたラバーマスクになり、ナゾにSMテイストが添加された)。


◆神楽咲 清音

 白衣。黙っていれば美々びびしいおとなのおねえさん。

 どう見ても落ち着いた妙齢の女性だが、言葉のふしぶしに年齢不相応の妙な愛嬌があると云うか、ルナとはまた違った意味で人としての接しづらさを感じさせる。ルナの場合は言葉選びが直球な分、もはや「そういうプレイなのかな?」と思わなくもないが、清音の場合はまとっている雰囲気で圧をあけてくる感じなので。よりリアルなパワハラっぽくはある。

 能力の全貌は明かされていないが、恐らく接触するとヤバい系(理杏が頽れる寸前、「彼女に触れられた頬が熱を放って。」という一文から)。多分、匂いを嗅いでもヤバい系。

 あと「14『Theseus』」を読んだ方はすでにお気づきだろうが、彼女が理杏の害意を逸らしまくったのは、他でもない作者があの四撃目から六撃目の流れをやりたかっただけである。

 キーとなる要素は「薔薇」と「香り」と「メス」。寝ている人を薔薇で窒息死させた過去とかありそう(ヘリオガバルス少年皇帝かな?)。

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