登場人物考察 06~08
◆葛城 陽
十六歳。大嫌いな自分が幸せになる未来だけは女神を
人間社会が蹂躙されるというストーリーに加え、十代に焦点が当たるのであれば、いじめられている子を書かないわけにはいかないだろうと、そういうある種の使命感から登場させたキャラ。
当初は自分をいじめてきた相手に報復じみた行いをする案もなくはなかったが、よくよく考えてみると復讐ってある程度自尊心がないとできないよなぁ──という帰結に至り。それを成し遂げたところで何も返ってこないことがわかっている以上、行動に移す動機としたら「とにかくやらざるを得ないモヤモヤ」が胸中にあるというだけで。
そのモヤモヤを払拭したい、すなわち自身を正常なかつての状態に戻したい──と望む程度には我が身が可愛いわけだから。家にも学校にも居場所がなかった、教室の惨状を"観覧"して何一つ心を痛める要因のなかった子が、はたして弱っているかつての加害者に出くわしたところで所謂ざまあ展開に持ち込めるかどうかというのを考えたとき、まあ──ないかと。
両親よりも自分をいじめた相手よりも教師よりも、ぶっちぎりで葛城陽のことが嫌いで(林たちの取り立てに応じなくなって以降、彼らからの暴力は"自傷行為"として受け容れていた)。それゆえいつ死んでも構わないという実質無敵の人だったが、「08『Evangelium』」にてルナから人生初と云っていい「この命が可愛い」という感情を植えつけられた。
逆に云うと、この瞬間まで心の底から「死にたくない」と望んだことがなかったというのだから皮肉な話である。
キーとなる要素は「白い鼻緒の白い下駄を履いたおんなのこ」と「鋏」。
◇林
十六歳。加害者のひとり。
上納金が支払えず、背中を灰皿代わりにされる程度には追い詰められていたため、「葛城陽から毟り取らなければ」という視野狭窄に陥っている。ちなみに堀田ともう一人は「いや、もうコイツから毟るの無理でしょ」と薄々勘づいているため、猪突猛進の彼を内心馬鹿にしているが、物理的な報復が怖いため抗議はできないでいる。
余談だが、この名前の出ていないもう一人が加害者三人中唯一の生存者である。
◆ルナ
白衣。典型的な黙っていれば天使。
当時そういう概念はなかったが、多分今で云うところのメスガキ的立ち位置。メスガキにほぼ必須とされる「♥」は脳内補完でよろしく。
陽曰く「こんな可愛い娘が、心を奪う者としていずれかの教室で貪り貪られていたら、今頃は首を括っていただろうなぁ──」としみじみ感じ入るレベルの美少女。超自然的な読心能力を有しているかのような言動がみられる(これは彼女に限らず全"白衣"共通)。
使役しているパーマストンによって、陽に危害を加えること自体は容易かったが、あえて得物のみを弾き飛ばすに留めたことで、彼に自らの意思で痛くて動けないフリをさせる──「この命が可愛い」と痛感させる屈辱を味合わせた。
ちなみに"ご挨拶"のシーンを録画しているかのようなフリを見せたが、真相は不明。そもそも彼女が直接"ご挨拶"に行ったこと自体が疑わしい。というのも、ルナからすれば説得するうえで彼から手を出してくれた方が好都合だったので。動揺させる意図で適当に煽っただけの可能性もある。
キーとなる要素は現状不明。
◆パーマストン
躰を丸めた幼児とほぼ同じ大きさをした心の臓。ルナに使役されている。
心臓の中央にはアンティークなカメラが埋め込まれており、四本のチューブアームを駆使して移動する。「チューブアームって何ぞ?」と疑問に思った方は「ドクター・オクトパス」でググってもらえるとわかりやすいかもしれない。
その生理機能からどうやって音を発しているのかは謎だが、のちにプリクラの中の人みたいな甲高い声で"喋る"ことが判明する。
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