霊柩ノ章
『黒ノ都』
登場人物考察 01~02
◆水原 透
一六歳。良識人と独裁者とUNKNOWNを脳内に飼っている不登校生。飼っているだけでいずれも飼い馴らせてはいない。
良識人と独裁者は彼の別人格──と呼べるほど切り離された存在ではなく、「空想の友だち」未満の存在。妹に「──学校、行ってる?」と訊かれて、二人仲良くだんまり決め込むところすき。
ところで、「空想の友だち」と云えば「あれは本当にそういった存在を視知覚できているの? 遊びの一環で云っているだけじゃないの」問題があるのだけれど、とある女児が空想の友だちを"呼び出した"際の脳活動をfMRIで観察したところ他者知覚時に活性化する脳領域──
ちなみに、空想の友だちが見えると主張する子どもはそうでない子よりも外向性が高いとのこと。まあ、外向性の低い子どもは見えても報告しないだけかもしれないのだけれど。
脱線申しワケ。
妹の前では百歩譲ってまだ見るに値する水原透でいられるという理由から、妹のことが好き。複雑過ぎるシスコン。とはいえ、この年代は概して複雑を気取りたがる傾向にある(他ならぬ私がそうだった)ため、フツーに好きなのではなかろうか、未紗季のこと。
つむぎ曰く「影が濃くも薄くもない人」。決して目立たず、されどはぶられるほど陰には徹さず。彼なりに巧く立ち回ったがゆえの評価であろう。
模範的生徒であることをゲーム感覚で受け容れていた(というより、それ以外の受け容れ方を知らなかった)理杏と酷いいじめを受けながらも登校を続けていた陽に対し、なんとなく模範的生徒でいることが
なので、軽くネタバレすると『黒ノ都』はそんな特別主人公気質でもない、探せばいそうな普通の子が生き残るために他人を殺す話である。
キーとなる要素は「良識人」と「独裁者」、あと「UNKNOWN」。
◆水原 未紗季
一四歳。他者貢献こそ我が使命の大天使ミサキエル。
唐突な自分語りで恐縮だが、当時の私は結構な世話焼きで。それゆえ、無意識のうちに誰かが困るのを心待ちにしてしまっているきらいがあった。そんな自分に気付いたとき、「この部分を特化させたキャラがいたら面白いのでは?」というひらめきから構築されたのが彼女である。
ちなみにオーバーン大学が実施した六〇代以上の夫婦を対象にした「慈愛度調査」によれば、妻が夫に慈愛を注いだ場合、妻は健康になる一方、夫は不健康になるという。理由としては、妻に世話をされることで、彼女がいなくなったら自分はどうなるのだろうという未来への不安、夫婦の関係が変化した現実を突きつけられるからではないかとのこと。
──やはりこの娘死神なのでは?
圧倒的慈愛度ゆえ、将来悪い男に騙されそうという懸念もなくはないが、彼女の場合「支えてもらって当然」というパートナーはお望みでないので。「自分は彼女に迷惑をかけているのではないか」「お荷物なのではないか」「でも、そんな一面を彼女にだけは見せられない」と常日頃から気を張っている人を見るのが堪らないので。
──やはりこの娘死神なのでは?
透同様「自分のことを理解されてたまるか」という信念が垣間見えるが、EXTRAを見る限り透ほど頑なではない模様。自らチラ見せしている部分に限っては理解を示してほしい
兄のことを異性として魅力的であるとは思っていないが、現状自身の理想にどうしようもなくマッチする存在があの人以外考えられないという理由から、兄のことが好き。複雑過ぎるブラコン。
とはいえ、水原兄妹は揃って自分を騙すことが巧いので。「いや、そうじゃないんだよ自分たちの関係は」とお互い自身の胸中を素直に受け容れられていない部分はある。
キーとなる要素は「風船」と「シルバープレートのキーホルダー」。
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