ありのままを表現しないという"鎧"【ホメってホント技術よね】

 作品って大別すると作為的にきれいに仕上げたものとそのときの心のありようを落とし込んだ二種類があるよなと思っていて。

 前者は技術が物を云うというか、あくまで才能よりかどちらかと云えば技術的側面が目立っているよね──くらいの意味合いで使っているのだけれど。


 ここで云う技術の中には所謂小説作法のほか時流を読む力(この場合当然時流に"乗る"力もセットで必須)──加えて事実を抽象化する力も必要になってくるよなぁと思っていて。


 たとえば、ある作品が人気を博している事実があったとして「これ流行ってるんだー」くらいのノリで"参考"にしちゃうとせいぜいスベるかパクリ扱いじゃないですか。「これ流行ってるんだー」でスルーせず、立ち止まって応用可能な気づきを見つけないといけないわけで。


 つまり、私らは大阪でチラシと一緒に飴ちゃんを配ったら東京より三倍早くはける──という事実から、大阪人は東京人よりも直接的なメリットの訴求に弱い──という他分野に応用できる概念を抽出せねばならんわけですよ。


 まあ、ならんわけですよと書きはしましたが、抽出した概念に正解はないので。件の事実から、まったく別の命題を抜き出しても構わないわけです。あっ、ちなみにこのたとえは前田祐二さん著『メモの魔力』から拝借しました。ご興味のある方はググってどうぞ。

 ──何の話してましたっけ?


 そう、作品て大別すると二種類あるよなというお話。


 後者の心のありようを落とし込んだもの──に関しては、これで人を惹きつけられたらまさしく才能だよなぁと思っていて。才能と一口に云うと持って生まれた遺伝的要素という印象が強いと思うのだけれど、ここ最近その人が歩んで来たこれまでというか、出身地とか何を学びたいと思って何を重いと思ったか、何を取捨選択してきたかとか、そういうのもまとめて才能と称して差し支えないんじゃないの──と考えるようになってですね。


 というのも才能という言葉が持つ意味合いを遺伝的要素のみに絞ると、才能くん可哀想じゃないです?


 基本才能くんって良い意味で使われることないじゃないですか? 大体誰かを束縛するネガティブな意図でしか使われないというか、努力くんと比べてメッチャ扱い酷くないです? むしろ努力くん過大評価され過ぎでしょ。

 ──さて、この二種類からどう話を膨らませるのかというお話なのですが、私前者に限っては評価されたら手放しに幸せだと思うのですよ。だって、評価されようと思って書いているわけだから。その結果を求めて、ある程度狙ったわけだから。そりゃあ嬉しいでしょうよと。


 反面後者って評価されたとき、幸不幸を判断しかねるケースがあり得るよねって。


 何でそんなふうに思うのか、あんまり巧いこと言語化できないのだけれど(笑)

 たとえるなら──自分が狙って書いた作品を「なんか○○の作品に似てる」と云われるのは然して痛くないじゃないですか。仮に○○の作品と通ずる部分があったところで、それは事実参考にしたんですから。全く参考にしていないし、自分からすれば見当違いも甚だしい──云わざるを得ない感想だったとしても、結局自分のこれまでを素直に落とし込んだものではないのだから、否定されたところで痒くもないし。


 ただ、ありのままを形にした方を「なんか〇〇の作品に似てる」って云われたら、ちょっとズキッときません?


 仮にそれがあなたの思ってもみなかったレベルの偉大な作家だったとして、少なからずモヤッとしません? これが自分のオリジナリティの集大成だ~と意気込んで描いた作品「すごーいゴッホっぽい」って云われたときみたいな。いや、確かにゴッホは偉大な画家やけどもっ。わかってはいるけれどもっ! みたいな。

 褒め言葉ってホント技術だよなと甚だ思う。

 そんなこんなでありのままを表現しないという"鎧"を纏った書き手って少なからずいるよなーと、そんな気づきを話したかっただけの回です。各々意識しているのか、無意識なのかはわからないけれども。個人的には年齢を重ねると、この表現しないが表現に寄ってくるのだが、いかがか。

 ではまた~。

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