詭R167G87B168

 かねてより時間は大事だよと豪語しているわたくしなのですが──そういえば、そう思うに至った経緯を説明していなかったなと。

 いや、お前ナンボほどその話すんねんと思われていそうなのだけれど。私、母が亡くなったとき、その事実はもちろんとして大きく衝撃を受けたことがふたつありまして。

 ひとつが、順番通りではなかったということ。私らって人間はいつか死ぬし、偶然の連続で今日も今日とて生きているって頭では解っていても、心のどこかでなんとなーく順番通りに死ぬと思っているところありません? こと身内に関しては。母が亡くなったことは息子である私にとって当然ショックな出来事ではあったのだけれど、当時まだ元気だった母方祖父母の立場からしたら娘に先立たれたわけだからさ。私とはまた違った類のそれが、重く圧し掛かっていたと思うんよね。

 で、もうひとつが遺書の内容でして。詳しくは『瑕R255G255B255』でも触れたから省略するけど、これに関してはホントに哀しいとか、寂しいとかじゃあなくて、ただただ信じられねぇという感じだった。幼い頃寝床で児童書読み聞かせてくれた、弁当や朝ご飯欠かさず作ってくれた、あんな真面目な人が家族に遺した手紙の内容こんなシンプル? みたいな(ただ、「闘病生活」を消して「幻聴」に書き換えているのに気づいたときは「マジで気遣いの人やなー」と息子ながらに感心した)。

 もちろん──母親なりに云いたいことはたくさんあったと思う。ただ、それっぽっちの言葉しか出てこなかったということは、それだけ追い詰められていたということでもあって。実際、たった二三文のメール私に寄越すときでさえ紙に下書きしてから送っていたしね。考えながらメール打つって作業が難しかったらしい。


 だから、そちらを選ばざるを得ないほどに苦しかったのだなぁ──と思う一方で、いま私も大事だなとか、一緒にいて楽しいなとか思っている人たちに向けて、こんなあっさりした言葉だけ遺して(あるいは言葉ひとつ遺せず)死を選択することがあり得るんだよなぁと。


 それが──とにかく衝撃だった。

 だから、時間は大切にしよう。仲良いのか悪いのか内心よくわからない人たちと過ごす一時間より、一番好きな人と過ごす一〇分を選ぼう。今日も有意義に過ごしたわぁ~と思いながらベッドに入れる一日を過ごそう。

 ──残念ながら、毎日その通りにはいってないけどね? もし、毎時間を何かしらの生産に捧げることができていたのだとしたら、今頃私もっと悠々自適なライフ送っとるわ。そもそも小説投稿サイトなんぞにおらんわ(笑)

 大事な人が亡くなったことを哀しい記憶のまま保存しておいても、それはそれで良いと思うのですよ。ただ、やっぱり哀しいで一括りにした記憶ってあんまり思い返したくないというか、思い返す機会に恵まれないじゃない。


 だから、私の場合は母の死と時間の大切さを結び付けることができて良かったなぁって。


 いや流石に今日はもう何も書く気起きないわー、勉強する気も起きんわーというときにふと思い出して、明日に支障出ない程度に頑張ってみるか──みたいなね?

 それゆえ──と繋げていいものか、私らってたとえば大きなきっかけとなるものがあって、それに背中を押されるかたちでこれまで通りとは違う一歩を踏み出した──そんな経験、誰しもあるとは思うのですが。それが腑に落ちない結果に終わってしまって、時間損したわぁ、失敗したわぁって、後悔した経験も同じくらいあるんじゃないかなと思う。

 

 けど、「失敗」ってそこから何一つ学ぶことがなかった経験のことを云うから。

 

 何かしらそこから得るものがあったのだとしたら、もうその恥ずかしい過去は失敗じゃないから。いや、何も得るものなんてなかったですぅ~と云うそこなあなたは省察が足りない。血眼で探してどうぞ。

 時間を大切に使うというのも、結局私の中ではこういうことなんよね。他人の目から見て有意義に見えずとも、いや私の中では有意義であることこの上ない時間の使い方でしたけどって、胸張って返せる使い方をしようと日々努めているから。なんなら日がな一日寝て過ごしちゃったとしても、「この過ごし方に罪悪感を感じている自分ってまだ希望あるよな」と思えるしな。

 ──正直省察云々うんぬんの下りはやや詭弁っぽくもあるけど、まあ別にそれでもいいかなって。物事の見方を意図して増やそうとするのは良いことだし、失敗したと思い込んでいる過去って何だかんだターニングポイントであること多いから、思い返したとき今に至るまでの選択を尊重するきっかけになるかもしれないし。兵は詭道なりって多分こういうことでしょ(雑)? うん、ぶっちゃけこのまとめ何だかポジティブ過ぎてあんまり好きじゃないんだけどさ。

 自分の過去に「これ失敗だったわ」とレッテル貼るのって自分自身だからね。それだけ胸に留めておけばよろしいのではないかなと、姫乃は思う。

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