「劣等感」という武器①【ゆっくり実況誕生に学ぶ】

 結論から云うと、陰キャは陰キャとしてこの世に生を受けたことを誇れ。

 ゆっくり実況を語るに当たり、まずゲーム実況とは何かについて触れねばなるまい──と思ったのだけれど、冗談抜きにコレ説明する必要あります? 

 各自ググれという丸投げではなくて、ゆっくり実況はさておき「ゲーム実況」が何なのか全くピンときませんなんて人、デジタルネイティブ及びネオ・デジタルネイティブ世代の中にいます? いや、いたらいたで大変申し訳ないし、そもそもデジタルネイティブ世代より前だよ! なんて人がいたらそれはそれでもっと申し訳ないのだけれど。


 ゲーム実況は、実況しながらゲームをプレイすることです。以上。


 で、今でこそYouTubeやニコニコ動画で当たり前のように見かける──ありふれた(だからこそ上を目指そうと思えば各自創意工夫が必要な)動画ジャンルと化しているのだけれど、ニコニコ動画がゲーム実況のメインプラットフォームだった全盛期、有名実況者の扱いってマジでほぼアイドルだったんだよ(思えば、このアイドルポジションに今ついているのがVtuberであるような気がする。全てのVtuberがそうではないけれど、一部企業勢は私たちはアイドルだ! という姿勢で自分たちを売り出しているわけだし)。

 だからこそ、自分もゲーム実況者になりたい! ゲーム実況というビッグウェーブに乗りたい! という気概を胸に多くの人々が参入した結果、辛くも乗りこなしましたーッ! という人もいればラノベの没個性負けヒロインが如く「そういえば、あいつどこ行った?」みたいにね、波に呑まれて消えてしまった人たちも大勢いた。

 ただ、そんな激動の陰でそもそもゲーム実況者になるという挑戦さえできなかった人たちがいて、その人たちはあるハンデを抱えていたんだよね。


 そう、声がカッコよくない。


 可愛くもない。綺麗でもない。トークスキルもない。感情表現に乏しいから、良いリアクションもできない(もっともこのデメリットは実況者の立ち回り、プッシュしてゆくキャラクター性によってはメリットとして機能するケースもあった)。なんなら声が汚い。気持ち悪い。

 補足しておくと、今なおゲーム実況者として名を馳せている人たち全員が全員とんでもねぇ美声とトークスキルの持ち主かと訊かれたら──まあ、アレだ、ウン、多分そうでもないんじゃないかなぁーとは思うのだけれど(地味に掘り下げづらい話題)。

 アレだ、自分の録音した声って聴いた経験あります? 私は──経緯は伏せるとして高校の頃に一度携帯で録音して聴いたことがあって、まあ「マジか?!」ってなるよね。

 別にその「マジか?!」に耐えうるメンタルの持ち主であれば、そのまま戦場に身を投じることもできるんだろうけど、やっぱ心折れる人はね、その時点で「もう無理ッ! 声がブサイクッ! 寝るッ!!」ってなっちゃうんだよ(まあ、仮に声の良さやトークに自信があったとしても、純粋に身バレがイヤだとか、そういう理由で退いた人も中にはいるのでしょうが)。

 そうやって多くの人たちが挑むまでもなく脱落してゆく中、同じように劣等感という壁を前に立ち尽くしていたある一人がはっとするんだよね。


 肉声がキモくてダメなら、もういっそ音声合成ソフトに読み上げさせればよくない?


 でもって、ゲームの展開に対するリアクションを後付けして実況"風"プレイ動画として出せばよくない?

 コレがね──メチャクチャ画期的だった。もちろん肉声で録るそれより大分編集が面倒というデメリットはあったのだけれど、何が画期的ってコレ先に触れた通りリアクション後付けできるんですよね。

 肉声の方はリアルタイムで即興的に面白いリアクションやトークを引き出さなけれならない一方、ゆっくり実況ってあくまで実況"風"なので、面白いリアクションを"練る"ことができたんですよ。実際口頭で面白い話をするのは苦手だけど、文章でならそれなりに面白い話書けますよ~という人はいるでしょう?

「私にはこれがない」「俺にはこれができない」とか、そういう劣等感が新しい何かを創り出すきっかけになることってざらにあると思うんだけど、私ゆっくり実況はまさにその典型だよなーと思っていて。自分ではない誰かの声を使えばええやろ──までは思いついても、面白ければ実況プレイである必要なくない? 実況"風"で良くない? という着眼点が素晴らしいよね。 

 

 何かねー、こういうカッコいいことが思いつきたい(願望)。


「これはこうでなくちゃダメでしょ?」「この形がベストでしょ?」っていうものに斬新過ぎる価値観をぶつけてブチ壊すようなことがしたい。アンリ・マティスの『緑の筋のあるマティス夫人の肖像』だって、アレは「何で目に見えているそのままの色を表現しなくちゃいけないの? そのままでなくても良くない?」という価値観をそれまでの芸術界に投じたわけでしょ。

 ピンチはチャンスっていうけど、あれは何も励ましの常套句ではなくて実際ピンチのときにしか見えない景色ってあるわけじゃないですか。劣等感抱えているときにしか見えない景色が。そんなわけで後半戦に続きます。あいやしばらく(云うて更新は明日か明後日ですが)!

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