「残弾数∞」とは一体何だったのか

 いやぁ、中々気の利いた言葉って出てこないね。

 読んでる人からしたらいきなり何の話やねんって感じだろうけど、まあ今日とある作品を読ませていただきまして。何かこう──配慮の行き届いたイイ感じのコメントでも残せればと思ったのだけれど、巧いことまとまらないまま現在に至るという。


「残弾数∞」とは一体何だったのか(笑)


 男性ってやっぱり好意を持っている──と云ったら語弊があるな。ええと、程よく好感を抱いている相手(これは性別問わずね?)に対して、自分を大きく見せたい、頼りがいのある人物として見てもらいたいって節がどうしてもあるのよ。

 男、女の前だと何かと自慢話しがちっていうけど、アレそういうことだからね。自らの有能さをアピールすることで、俺とお近づきになるとこういうメリットがありますよーということを相手に訴えかけているわけ。

 

 だから、可愛げのあるふうに解釈するとあれは自慢話好きでやってるというより、そこそこ必死の自己PRなのよ。


 なので世の淑女の皆さんはね、ぜひ今後は面接官になりきったつもりで、どうか生温かい目でね、旦那さんとか彼氏とか、合コン相手のそれを見守っていただければ幸いにござい。とはいえ、ガチで自慢話しかしてこない男はサイコパス度高い傾向にあるので、恋人はもちろん友人としてお付き合いすることもオススメ致しませんが。

 ──何の話でしたっけ? 残弾数の話?

 私も虚勢を張るというか、自分に云い聞かせる意味もこめて「残弾数∞」とは云ってみたものの──素直に難しいよね。「まず感想書くのに気の利いた言葉を選ぶ必要なんてあるの?」という疑問がそもそもあるとは思うのだけれど、云い方換えるとアレだよね。


 何かその人に対してプラスになること書かなきゃーみたいな気負いが多少なりともあるんだろうね。

 

 あー、話ちょっと変わるんだけど、私以前に希死念慮のある人魚と頭がムカデで躰は成人男性っていうデミ・ヒューマンおふたりが、夜の海が見える桟橋で淡々とおしゃべりをするだけというね、まっことシュール極まりない短編を書いたことがありまして。

 ムカデ人間──と云ったら大分語弊があるな。まあ、ムカデの方は人魚を死なせまいとね、あれこれイイ感じの言葉を並べるんだよ。たとえば人魚が海に身を投げようとするのね? いや、人魚なのに泳げないのかよってツッコミはごもっともとして、その人魚さん片方の眼球がなくて、眼窩からお花が咲いてるのよ。──まあ、すでにそういう謎の奇病に躰を蝕まれているという設定でして。いつ生命維持活動がストップするやもしれない。それゆえの希死念慮なのかどうかは、作中で触れられてないからわかんないけどね? 冒される前からもともとそうだったのかもしれないし。

 で、さあ死ぬぞーって意気込んでるところをムカデが手で制してこう云うわけ。この海には人魚を好物とするそれはもう巨大な怪魚が棲んでいる。その怪魚の胃袋は異世界に通じていて、その異世界では死という概念がない。だから食べられたら最後君は一生死ねない──みたいな。

 それっぽい物語で人魚を心変わりさせるというか、気を紛らわせるんだよね。で、人魚さんも奇病に脳を蝕まれている設定から若干アホの子と化しているから(笑)「じゃあ、ここで死ぬのは止めましょう」となる。

 ただ──いつもいつも人魚の心変わりに結びつくような、胸に刺さるような、その状況におけるベストアンサーがポンポン出てくるわけもなく、そのうちネタ尽きるのよ。で、あるときムカデが正直なところ君を引き留める言葉がもう思いつかないと弱音と云うか本音を漏らしたとき、人魚がこう云うんだよね。


「あなたからもらえる言葉になら傷付けられても良かったのに」


 何か気の利いたこと云おう。カッコいいこと云おう。救いに繋がることを云おう。


 この人を絶対に傷付けない言葉を云おう。


 そういう気負いを見抜かれてたねってオチ──なんやけども。

 ちなみにこれ書いた当時って私まだなろうユーザだったんだけど、じゃあ何故に投稿しなかったのかというと丁度これの執筆途中に某所でも触れた身内の不幸があって。そのことについて、ちらっと活動報告(カクヨムでいう近況ノート)で触れてたんだよ。

 それで「希死念慮のある人魚」とか作中に登場させたら、普段から懇意にしてくれてるフォロワーざわつくじゃん(笑)「あっ(察し)」ってなるじゃん。どう扱ってほしいのってなるじゃん。いや、偶々タイミングが被っちゃっただけよ? って云うても中々にウソっぽいからね。結局、封印した。

 で、今そういえば以前そんな話書いたなーと偶々思い出して、発掘して、読み返して一人で「あー(語彙力デバフ)」となっておる。

 カクヨムにも公開している某"魔境"小説の『Home』でも書いたけど、人間「やれやれしょうがないなぁ」と思いながら面倒を見ている、世話を焼いて、抱きしめているつもりでも、案外その相手に知らず抱きしめられていたりするわけで。「本当に、抱きしめていたのはどっちだ。抱きしめられていたのはどっちだ。このひとを安心させてあげないとって思っていたのは──」っていう下りのところね。

 ──何や色々書いてると「残弾数∞」は云い過ぎにしても「まだ引き出し開けたらそれっぽいもの見つかりそう」とか思ってしまっているな。うん、これは多分良い流れなのではなかろうか。

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