人を欺くことは道義に反するか(紛うことなき恋愛小説) 『狂怪』

【作品情報】

『狂怪』 作者 縋 十夏

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054918541388


【紹介文】

 言葉の消失。書きたかった言葉が、あれほど止めどなく溢れていた言葉が不意に、脳みそから消えていく。それはまるで今の今まで誰かが私に語り掛けていただけで、実際には私の脳は生命維持以外には耳を傾ける事だけをして、何ら考えることなどしていなかったのだとでもいうかのようだ。不思議なことだと思う。一度失くしてしまった言葉はもう一度取り返そうとしても輝きを失ってしまったかのように感じる。世の小説家はこんなほんの少しの間に浮かんだ言葉を精一杯、書き込み、それを何度も繰り返して、世界を作っているのだろうか。だとしたらそれは一体どんな労力だろう。物凄い胆力だ。恐ろしくすらある。私はそんなものに果たしてなれるのだろうか。

 ⚠前半部にて残酷な表現があります⚠

 苦手な方はお気を付けを。また再掲といった形になります。

 ※中身のない批判はお断り申し上げます。

 ※純文学をイメージしてのものですので縦読み推奨です。あまり、改行をしていないのは意識してのものになります。


 初めて読了したとき頭を過ぎったのは、ソクラテスがしたある問いかけでした。

 人を欺くことは道義に反するか。道義に反すると、欺くことは悪であると、そう声高に答えるのであれば、「もう死にたい」と、生きることを諦めてしまった友が、己を傷つけるためのナイフを、自らの命を落とすためのナイフを手許に置いていたとして。あなたがそっとそれを隠す行為は、果たして道義に反すると云えるのでしょうか。


 端的に云えば、これは"僕"と彼女の恋愛のお話。


 二人の唇が離れたとき、彼女が選ぶのは──。さて、一方で"僕"の取り繕い方には然して必死さを感じません。隠蔽の仕方もどこか手を抜いているようにさえ思えます。もし、彼女がそれを見つけてしまったら、何をしたかを思い出してしまったら、彼女の壊れかけた心の唯一と云っていい拠り所は、震える指先の縋る先は。


 ──成程、これは確かに「恋愛小説」であるなぁと(読み違えだったらゴメン)。

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