EX.絶対にセーターの襟ぐりから顔を出さない彼氏VS絶対にテーブルの下から出てこない彼女『セーター』
おすすめの本があれば書いてほしいという許しを得たので──書きます。
Twitterでの「近々『一見、悪徳に見えて、ただ小説を勧めているだけの男』に改題しようかな」発言がいよいよ現実味を帯びてまいりました。
件のツイートですが、見覚えのないアカウントにいいねされていたので確認してみると「一見、悪徳に見えて、ただポケモン対戦を勧めているだけの男」というコントを固定ツイにしているゲーム実況者さんでした。同類だと思われたのかもしれません。あと「一見、悪徳に見えて」ネタではコレが好きです。悔しいですが、観ると元気が出ます(※個人の感想です)。
「一見、悪徳に見えて、マジで何言ってるか分からないだけの男」
https://www.youtube.com/watch?v=FndxZVb6AKg
さて、おすすめの本の紹介なのですが、そもそもきっかけは『死生活』の作者である朔之蛍さんの応援コメントなので(しれっと名前を出してゆくスタイル)。御作、一風変わったイチャイチャが繰り広げられていたりするので、こちらも一風変わった恋愛小説を紹介してみようかしらん──などと思った次第。
というわけで、今回紹介する本は岸本佐知子編訳『
裏表紙の内容紹介にあるお言葉をそのまま抜き出しますと、「奇想天外で切実な想いのつまった11篇。ありふれた恋愛小説とは一味も二味もちがう、『究極の愛』の姿」とのこと。
タイトルに
レイ・ヴクサヴィッチの『セーター』です。
キャッチコピーをつけるとしたら「絶対にセーターの襟ぐりから顔を出さない彼氏VS絶対にテーブルの下から出てこない彼女」でしょうか。ええ、実際に作品を読んでいただければわかりますが、別段VS要素はありません。ちょっとセンセーショナルな感じにしたかっただけです。『ウルトラマンVS仮面ライダー』みたいなモンです。
ところで、こういうほこたてスタイルを見ると私はギリシャ神話のクロノスとレアーを思い出します。
「絶対に子どもを飲みたい夫VS絶対に子どもがほしい妻」みたいな。「脱線たすかる」とは多分誰一人思ってくださらないので、そろそろ軌道修正させてもろて。
『セーター』についてざくっと説明致しますと、その日は彼──ジェフリーの誕生日。ジェフリーは彼女──アリスからプレゼントされた手編みのセーターを彼女の前で着ようとするわけですが、彼女が寸法を見誤ったのか、襟ぐりがきつくてどうにも頭が出ない。
いつのまにか──セーターの内部には未知なる空間が広がっていて(ただし頭を締め付ける襟ぐりの感覚は残ったまんま)。ジェフリーは懐中電灯(アリスに取ってくれと頼んだ。云うまでもないがアリスはため息をついた)を片手に、そのひどくだだっ広い空間を探索する──というお話であります。
──どういうこと⁉ という声が聞こえてきそうなのだけれど、事実こういう話なのだから致し方なし。その後、床に落ちた懐中電灯を拾うことをきっかけに、アリスもまたテーブルの下という異世界へと迷い込みます。
で、この話がどうして『変愛小説集』に収録されているんだ? という至極真っ当な疑問なのですが、私はこれを空間へのときめき、居心地への愛を描いた物語だと解釈していて。
たとえば、子どもの頃に何となく居心地のいい空間ってありませんでした? これはお洒落なカフェーみたいな大体誰にとっても居心地良いよねみたいな空間を指してるんじゃなくて、例をあげるならカーテンとかさ、無意味にくるまってみたりしなかった? うん、しなかったって云われたらそれまでなんだけどさ。そういう「うまく説明できないけど、ここいいよな」っていうスペース。
凡そ共感を得ることは不可能であろう、自分だけが魅力を見出せる空間。
そこに対する愛を描いたのがこの作品。だから、変愛小説として収録されたのではないかな──と私は思うのですよ。
いや、実際読んでもらったらわかるんだけど、良い意味でこの作品だけ浮いてるのよ。他もエキセントリックではあるのだけれど、変な愛を描いてるという部分ではとてもわかりやすい。そんな中でこれだけがわかりにくい。初見だとこれ何? 何? ってなっちゃう。
あなたが子どもの頃(もしくは現在進行形で)、誰にも共感してもらえないかもだけど「何やこれええな」と思っていた俺得スポットはどこですか?
襟ぐりから顔を出すまでのセーターの内部? それともテーブルの下? よかったらコメント欄に書いてみてね! とYouTubeでよくある文言を口走ったところで。
最後にわかる人にしかわからないYouTubeあるあるをお披露目して終わりにしたいと思います。顔面偏差値の高い顔出しゲーム実況者(女)のコメント欄、再生数のわりに潤ってる。
よしなに~。
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