あなたも気づかぬうちに誰かを死んだことにはしていないか 『死生活』
【作品情報】
『死生活』 作者 朔之蛍
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895099488
【紹介文】
ちょっとコミュ障なことを除けば、どこにでもいる普通の女子生徒はるかは少なくも仲のよい友人達とごく平凡な学生生活を送っていました。
そんな平凡な生活が、隣の席にきたちょっと変わった転校生によってほんの少し変わります。
生と死の感覚がちょっぴり変わった世界で紡がれる、あんまりハートフルではないけれど、ちょこっとだけハートフルな感じもするストーリーです。
覗いてみたい、あの子の私(死)生活。
※少しグロい描写があるので、苦手な人は注意してください。
【レビュー】
「喩えるなら、奇襲に次ぐ奇襲。(だってこんなにも美しい)」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895099488/reviews/1177354054895733649
初めて読了したときに頭を過ぎったのは、エドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち または 遠出のあとで』でした。こちら小説ではなく絵本なのだけれど、ではどういう作品かと云うと二六人の子どもがただ淡々と異なる死に方で命を落としてゆくという内容でして。
普通さ、創作において扱われる死って何かしらそこに至るまでの背景が語られたりさ、そのキャラの死に対する意味づけが成されるじゃない? たとえばアイツは悪いことしたから高所から足を滑らせて転落死した。きっと天罰が下ったんだとか。あんな何の罪もない子どもが死ぬなんて可哀想にとか、その人物の死を誰がどう思ったか、あるいは誰も何とも思わなかったのか、そういうのが描かれたりするのがトラディショナルみたいなところあるじゃない。
ゴーリーのそれは、そういうのが一切なくて。わかっているのは子どもたちの名前だけ。悪い子なのか善い子なのかさえわからないし、その子らの死を誰がどう感じたのか、そもそも感じる誰かなんてどこにもいなかったのか、そういうのも一切触れず
だから、読者は二六人の子どもの二六種類の死に様を(それでも人によっては何故だか食い入るように)静観するほかない。
じゃあ、今回ご紹介する『死生活』も抑揚なく人が死んでゆくタイプのお話なんですか──と訊かれるとそんなことはなくて(長い前置きだったなオイ)。
むしろ始まった時点で大体死んでいると云うか、作品内の社会常識に則れば大体生きているとも云えるのだけれど。
レビューではだらだらと長くなりそうであえて触れなかったのだけれど、後半のとあるシーンがすごく印象に残っていて。作風上軽くネタバレしても大したダメージにはならない──と思うのでちょいとネタバレ致しますと、主人公の友人の弟の死体(もっとも前述した社会常識に則れば、これを死体と定義して良いのかどうかは微妙なところ)がゴミ同然の扱いを受けるシーンがあるの。この"ゴミ同然"って云うのは比喩表現じゃなくて、本当にゴミとしてヒトの死体が扱われている。ゴミ袋に入れられて、主人公も多少思うところはあるのだけれど友人と一緒にそれを運んで、生ごみ置き場に捨てる。
ここだけピックアップするとなんつー非人道的な世界観だよ世紀末かYouはShockって感じなのだけれど、まあ聞いて(と云うか読んで)。誰しもさ、死を題材にした作品に触れて、私は死ぬ間際に何を思うだろうとか、見られるとしたらどんな走馬灯を見るんだろうとか、こんな死に方だけはしたくないとか、死んだら人間ってどうなるのかなって思うことままあるでしょ?
ただ私ね、この作品のこのシーンを読んだとき、そういえば「自分が死んだとき、周りは自分の死をどういうふうに捉えるか、どう扱ってくれるか」ってあんまり考えたことなかったなーって。
たとえばさ、先に触れた通り「どうせ死ぬならこういう死に方がしてぇなぁ」とか考えることはあっても「あーあ、私が死んだら皆はどんな弔辞読んでくれるかなー?」って考えることはちょっとなくない? 周りが自分の死によってどんな迷惑を
この視点はこの作品を読むまで全くなかった──と云うわけでもない(弔辞の
読者層としては角川ホラーが好きな人には結構な確率で刺さると思う。あと百合作品が好きだと云う人にもぜひオススメしたい。幾分上級者向けではあるけれど、露骨ではなく爽やかなので。そう、全体的に血生臭いのに百合作品として見るととても後味爽やか。どーぞご賞味あれ。
※書いてるうちに前回予告したタイトルに沿った内容にならなかったので改題しました。
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