一見、悪徳に見えて、ただ小説を勧めているだけの男
姫乃 只紫
他薦ノ章
【書籍化】小説でできる(かもしれない)自己省察 『かげひなたになる』
【作品情報】
『かげひなたになる』 作者(異教徒) 神田暁一郎
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893641150
【紹介文】
コンビニエンスストアで店長を務めるアラサー男子の河本広巳。
仕事熱心で従業員からの信頼も厚い広巳だったが、彼には人に言えない秘密があった。
その秘密とは――女子高生に身を扮した女の子とイチャコラできる風俗遊び、JKリフレの常連客だということ!
アラサー男子とニセモノJKが織り成す、ラブコメの皮を被ったヒューマンドラマ作品でございます!
甘さの中にも苦みを宿した、言わば「微糖ラブコメ」とも呼ぶべきジャンルを目指して書き上げました!
甘々な作品に砂を吐かされすぎて、すっかり口の中ジャリジャリになっておられる方々、口をゆすぐつもりで一読いかがでしょう?
普段は敬遠しているニガいコーヒーを背伸びして飲んでみる、そんな気まぐれが新たな発見をもたらすかもしれませんよ!
【レビュー】
「陰になり日向になり(世界のどこかで生きている)」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893641150/reviews/1177354054894746264
初めて読了したときの感想は「マッチングアプリかな?」でした。あなたにピッタリのキャラが必ず一人は見つかるよ的な(いきなり何を云ってるんだコイツは──と思った方は姫乃のレビューを一度ご覧くださいませ。何となく伝えたいことがわかると思います)。
でなければ投資信託的な。「私、今年で七〇なんですけど──」「七〇代の方にピッタリのものがございます」「でも、リスキーなのはちょっと──」「バランス型がございます」「え~、でも結局どれにしたらいいかよくわからないなぁ」「そんなあなたにファンドラップぅッ‼」みたいな。真偽のほどはさておき、あなたにピッタリのものが必ず見つかるよ的なアレ。
もしかして──作者である神田暁一郎氏は資産運用のプロだった?
はい、脱線はこの辺りにしてもろて。改めて読み直してみるとあなたに刺さるキャラがきっと見つかると云うよりは、そのキャラの置かれている境遇だとか、仕事に対する考え方だとか価値観だとか、そういったものが刺さってくるよね──と。
キャラと自分を重ねてしまうと云うよりは、キャラの構成要素に自分のパーソナリティ的な意味での構成要素を見出してしまう感じ。だから、俺は広巳だよねー私は菜央だよねーみさきだよねーではなくて。
俺はときに広巳だが、菜央でもありみさきでもあると云うのが正しいのかなと。
感じて想ったことを改めて言語化するとね(ちなみに菜央とみさきは同一人物ですがここでは別々のキャラとして扱っております。理由は読者のみぞ知る)。たとえば、作中に永井達也と云うキャラが登場するのだけれど、初見で彼に感情移入したり自らの構成要素を見出したりする人はまずいないと思う。理由は簡単で、彼にはお世辞にも善人とは云い切れないパーソナリティが乗っかっているから。コイツ
そういう意味では、自分を見つめ直す機会を与えてくれる作品なのではないかなと。
今あなたが仕事で悩んでること、人間関係や恋愛で悩んでいること。これを読めばまるっとさくっとぜ~んぶ解決! まで云っちゃったら流石にね。
買うだけで幸せになるツボ売ってる人みたいになっちゃうから。あるいは自己啓発セミナーの自称人生の成功者みたいになっちゃうから。「はい、成功している自分を強くイメージして~」うるせぇ‼ そもそも成功してねぇからそんなセミナーやってんだろうが! 喝ッ‼ などと自己啓発セミナーに何の恨みがあるんだコイツと思われても仕方がない呪詛を唱えたところで。
ただ、その悩みごとに対してこういう見方もあるよねって。
別の視点を提供してくれる。そこまではいかなかったとしても、ぼんやりとしていた悩みに輪郭を与えてくれる。そういうヒントを見つけられる作品ではないかと。
なんなら就活生や転職を考えている人は自己分析やってるヒマがあったらこの作品読んだらいいんじゃないですかね? 実際そういう立場の人にとっては第41.5話が中々に刺さってくるのではないかなと思います。
もしかして──作者である神田暁一郎氏はキャリアアドバイザーだった?
自分の中にこういう価値観の自分もいるんだな、こういうことを幸せに思う自分がいるんだなってことがわかれば、それはきっと一つ賢くなったと云うこと。
正直に云って私も彼と同じ立場だったら、その立場に至るまでの道のりが違ったとしても百万円出すと思う。人生において自分が大事にしているものってなんだろうなってゆるーくお悩みの諸君、読みましょう。
※「今の小説投稿サイトでは評価されにくい作品を評価する」がコンセプトのこのおすすめ作品集で、第一号にしてあろうことかGA大賞を受賞しやがったそうなので異教徒認定しておきますね。
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