元カノから逃れられない

冴えないkitoki

プロローグ

カップルの別れた時の感情は、主に二通りだろう。

片方が片方に恋愛感情を持ったまま別れるか、どちらも好きじゃ無くなったか。

この場合、俺は後者だった。

後者の場合、別れた後も一緒に居たがる人なんて、まず間違いなく居ないはずだ。

大抵は顔だって見たくないだろう。

俺だってそうだった。

家が隣で小さい時からずっと一緒。小学校、中学校、高校。

親は付き合ってたことなど知らないから、どうしても関わる機会ができてしまう。

俺は、この状態を本当に億劫に思っていたし、早くアイツから離れたいとも思っていた。

だから俺は、事故で死に異世界へ転生した時に、やり残したことの後悔のほうが遥かに上回ったが、アイツと離れられた喜びもあった。

あの瞬間までは。



その日は、俺の10歳の誕生日だった。

どうやら俺が転生した世界は、魔法があたり前の存在するらしい。

正直テンションが上がった。そういう系のアニメを見たことのある男子なら、誰だって興奮するだろう。

俺無双できるんじゃね?って思ったりな。

俺の家系は、エリート騎士を数多く輩出してきたそうだ。

定番だが当然、ライバルの魔導士の家系がある。

どうやら、そこの長女が俺と同い年らしく、親同士が会議をしている時にその子と話す機会が与えられた。

俺たちは桜が咲いている河川敷を散歩しながら歩いた。

当時の俺はアホの極みで、その子が銀髪ボブでもろタイプだったため、あまりに興奮して、この国の言葉ではなく「こんにちは!」日本語で挨拶をしてしまった。

ミスった。と

意味わからない言葉を言われて引かれるだろうと思ったが、そうはならなかった。

「え?もしかして、貴方も転生者?」

「貴方もってことは、君も?」

彼女は無言で頷いた。

その言葉で喜びが込み上げてきた。この子も転生者なら、仲良くなれるだろう。

手を取り合っていけるはずだと、舐めた考えをしていたのは否めない。

それから、一時間近く喋ったら、どうやら住む地域、歳も同じで死んだらしい。

俺は死んだ理由は全く覚えてないが、大事故が起こり何人も同時に死んだのかもしれない。

俺は喜びに満ちていった。もしかしたら、知り合いかもしれない!と。

「君の前世の名前は?」

おっと、某大ヒット映画の台詞を言ってしまった。怒られませんように。

「水草 桜だよ」

・・・・・・・・・・・・・え?

俺はその名前に聞き覚えがあった。

いや、聞き覚えどころじゃない。

恐らく、俺が人生で最も名前を呼んだ人。最も好きだった人で、最も嫌いな人。

俺の元カノの名を名乗る人がそこにいた。

もう・・・何か、何も言えねえわ。




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元カノから逃れられない 冴えないkitoki @kai_tunndere

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