第2話 商売女、未亡人、裏切り…

 持つべきものは友…生活必需品の不足はナンシーが頼りだ。


 お願い事をすれば、「え? またですか?」という台詞に続いて、魔法の杖のように何かがでてくる。そして私からは何もお返しをしていない。


 二人の友情がいまでも続いているのは、ナンシーが非常に大人の度量を持っているのか、あるいは依存症の傾向のどちらかだろう。


 現実的に考えれば前者としか思えない。


 フライパンの上で卵がジュジュっと焼ける音。


「う~、面倒くさい…」


 独り暮らしの身の上で朝食の準備は非常に面倒だ。


 料理の好きな独り暮らしの女は、この世に掃いて捨てるほど存在するとしても、料理が好きではない独り暮らしの女もまた、掃いて捨てるほど存在する。私もそうだ。


 しかし勘違いしてもらっては困るのが、私という女は準備された料理を食べるのは誰にも負けないくらい大好きだということである。どこかの殿方が身銭をきって御馳走していただけるのであれば、なおのこと。


 一晩のお返しはありません。


 だって、私は商売女ではないから。


 安物のインスタントコーヒーに口につけつつ、部屋の片隅に視線を向けると、いまは亡き夫の遺影に詮議の視線を感じる。


 ここは何か弁論しておかないと、一日のはじまりからして縁起が悪い。


「エルザはまだ、あなたを裏切ってはいません」被告人の心には、物事は正確に表現しなければいけないという義務感が沸き上がる。「今日はまだ、あなたを裏切っていません」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦闘美少女エルザの大冒険 空軍少尉エルザ・ロマーシカ @Elza777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る