国家破綻のシナリオ

乃木希生

最悪の予言

とある日、ネットの掲示板にこんな書き込みがされた。


「XXXX年5月7日。地球上に存在するとある島国は終焉を迎える。その島国では、国民の1/3が命を失い、1/3が国を捨て、残された人間たちは歴年の恨みを晴らさんとする諸外国の侵略にあい、およそ人間の所業とは思えないような所業を受け絶命する。


経緯はこうだ。


とある国家が、まずは世界中を巻き込む病原体を生み出し、世界中へとばらまいた。

この病原体をばら撒いた理由は二つ。

一つ目は、自国の反乱分子をあぶり出し国家統治をより完璧なものへとし、世界トップの座を奪うための第三次世界大戦で圧倒的勝利を収めるための布石。

もう一つは、何かと目障りな小さな島国を滅ぼし、近年見つかった貴重な資源と技術力、それに水源を確保するための布石。


そして、4/28に人工的に島国の半分ほどの地域に大地震を引き起こされる。

最初の病原体で医療崩壊を引き起こされ、パニックに陥っていた国民が拠り所にしていた家も奪い取り、逃げ場を無くした人間たちがあたかも不幸な自然災害で多くに命が失われたようにするために。


地震によりネットは分断され、持っている紙幣は紙切れ同然となる。その後もたらされるのは人間同士の助け合いではなく奪い合い。何が何でも自分だけは生き残るという生物の根源に埋め込まれた生存本能が人間のみに与えられた理性という名の防御壁を無にした。


その島国で地震の被害から逃れた地域の人間たちは、自分たちの財産を、生活を守るために、被害にあった地域の人間たちを見捨てた。『一極集中は良くないと提唱されていたにも関わらず、自らの利益のために住み続けたのは自分たちの判断だ。ゆえに、今の状態に陥ったのは自己責任だ』という暴論を振りかざして。


地震にあった地域の住民は先ほどまで同じ国民だと思っていた人間たちに裏切られ、どこにも逃げることができず、すでに蔓延していた病原体に身体を蝕まれ、ただただ死を待つしかなかった。これで、国民の1/3が命を失う。


次に、地震被害から免れた地域では、生き残るために海外への亡命を図るも、各国でも病原体が蔓延していた為に全ての人間が逃げられるわけではなかった。限られた椅子に座ることができる条件は、健康であり若く、特別な能力や才能、頭脳明晰とされた。


そして、残された人間たちは荒廃した島国に残らざるを得ず、復興支援と題したとある国に占領され、人間としての尊厳を踏みにじられ、奴隷以下の扱いを受け、全滅させられる。」



ネット上では、具体的な西暦が提示されていない事から、タチの悪い冗談だとしてネタとして扱われていた。

しかし、この書き込みが冗談ではなく、現実に起こる事態が来てしまった。

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