居場所

探す

　僕は居場所を求めて探している。自分が本当に落ち着けて、安心できる場所を。

　だって小さいころにあったあの暖かくて、ほっとする場所はもうないのだから。そんなものとうの昔に消え去った。何故消えたかは分からない。時が消した？　それとも自分で消した？

　あの過去にあった場所はどこにあるのだろうか？

　それをいつからか探し始めた。最初、それが消えたことに僕は気が付かなかった。いつの間にか消えていた。気が付いた時にはもう探し始めていた。

　現実で探してみた。ネットで探してみた。

　だけど、どうだろうか？　どこにも見つからない。

　いつだよ、居場所が消えたのは。どこだよ、僕の居場所は。だれだよ、人には必ず居場所があるって言ったやつ。なにをしたら居場所は手に入るんだよ。なぜだよ、居場所ができないのは。

　あぁ、気が付いたよ。

　僕に居場所なんかないんだ。

　世界が僕を拒否してるんだ。だからか、納得したよ。僕はこの世界で居場所を求めちゃいけなくて、居場所があっちゃダメなんだ。

　そう納得して僕はそっとカッターの刃を出す。そして腕に持っていく。勢いよく滑らせた。

　痛いよ、痛いよ、痛いよ。あぁ、生きてるんだ。

　こんな生き方をしていちゃダメなのは分かっている。でも、辞められない。だって居場所がないから。

　誰かが僕のことを優しく抱きしめてくれたり、誰かが僕に手を差し伸べてくれたり、なんてことはない。

　知ってる、それぐらいのことは。誰かが救ってくれたりなんかしないって。

　他人に頼ってちゃダメだってことも分かっている。だけどもう、自分じゃこの沼から抜け出せない。

　この沼が今の僕の居場所さ。