第17話

 酔っ払ってふらふらのミカにキスをした俺は、まだまだガキだった。

「ジョー?」

「うん?」

「キスしたよね」

「うん」

「ジョーから?」

「うん」

俺は、ガキだ。照れるミカにもう1度キスするのだから。

ミカの家に着いた。真っ暗だった。誰もいなかった。

2年の時、ミカの親のことを聞いたことがあった。母親は水商売をしていて、昼に起きるからほとんど顔をあわせることがないこと、たまに朝方に帰ってきた時は、少し話すと言っていた。父親はずっと単身赴任でほぼ家にいない。いつも1人で家にいる。ミカの家に来たのは初めてだった。空っぽの家だった。

ミカは玄関で靴を脱ぐと、そのまま寝ころんだ。俺はミカを抱えて部屋まで連れて行った。

ベットに寝かせるとミカが腕を掴んできた。

閉じそうな目を開け、起き上がった。

「ジョー」

「ん?なに?」

「今日だけでもいいよ」

「え?なにが?」

「え、あの、、えっち、、、」

「え?は?」

「して、、、よ」

「なに言ってんの」

「ごめん、、、いや?」

ミカが俺の腕を離した。俺は最低だ。

ミカを押し倒してミカの口を塞いだ。何度も。

ミカの息が荒くなり、それがましでエロかった。そして可愛くて綺麗だった。

ミカは俺から離れなかった。俺らは裸のままミカのベットで眠った。

起きたら外が明るくなってきていた。俺はミカに布団を掛けなおし、そのままミカの家をでた。玄関には高いヒールの靴が脱ぎ捨てられていて、母親が帰って来たんだな、と思った。

家に帰ると、タロウとルイが寝ていた。2人は手を繋いで眠っていた。あの後も少し飲んだような後があった。俺は、外に出た。まだ完全には昇っていない朝日を見ていた。煙草に火をつけ、遠くを見た。俺は最低だ。ミカの気持ちを少し前から知っていた。でも知らんぷりした。最低な俺は朝日を見ながら煙草を吸っていた。



 タロウがトイレから帰ってきた。

「お前らさ、何も知らねえんだな」

「「え?」」

タロウの言葉に私とジョーは驚いた。

「お前、なにか知ってんの?」

「うん、知ってる」

「タロウとは連絡とってたってこと?」

「うん」

「なんでタロウと?」

「あいつ、言えなかったんだろ」

私はミカと連絡が取れなくなってからずっと悩んで、ずっと探してた。誰もミカの居場所を知らなくて、誰もミカと連絡がとれなかったのに。

「あいつ、こっちにいるよ」

「え?うそ、、、」

と言ったのは私で、ジョーは下を向いたままだった。

「お前らがこっちに来たことも知ってる」

「、、、」

「2年前に、こっちにきたよ、あいつ。というか、俺が呼んだんだ」

「タロウが?」

「うん。家族がバラバラになって、ミカはそのまま捨てられた。誰も、ずっと、家に帰ってこなかったらしい」

「うそ、、、」

「あいつ、行くところも、頼るとこもなくて、だから、俺が呼んだ、ここに」

「ここ?」

「うん、さっき連絡したんだ。来ると思う」

「ミカが?ここに?」

「うん」

ジョーがなにも言わない。下を向いてる。

私は、ミカのことを何も気づいてあげられなかった、なにも聞かなかった。悩みなんて、ないものだと思っていた。そんなはずないのにね。


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明日、変わればいいのに。 minamin.E @mnam

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