【夜の遊歩道】エッセイ 短編。

鳥本 一芯

2020年4月26日


真夜中の遊歩道を歩くとき、僕は。よく、前を向いているのか後ろを向いているのか、わからなくなります。


回りが真っ暗でどこを向いても黒く暗くでも、ひとつだけ上を向くときだけは、わかります。


そこには微かですが星の光があるから。暗闇でも人は迷子になることはありません。


でも、その星でさえ雲ってしまうときが有ります。今日はそんなお話。



【人は精一杯のときほど迷子になってしまう。】


僕はもともと、感情が希薄で……自分を圧し殺して生きてきたぶん自分の感情にうとく、相手の感情にもうといです。


そんな僕が、これまで人間らしく生きてこれたのは、周りの人のおかげで、それと同時にそれ以上に彼女のおかげです。


だからこそでしょうか?自分の気持ちと言うものが溢れかえってしまい僕は大事な人を傷つけてしまいました。

それは恩人のような人で、お姉ちゃんのような人で、先生のような人です。


僕は、その人のことが大好きです。

でもそのときは、ただ怖くて、疲れていて、嫌だった……。


こと本末は、話しません。長い話になるので。

でも、いつの間にか僕は、すべての人から本当の意味で心を閉ざしていたんだと思います。


僕は、普通の人とはちがう。それは劣等感から来る仲間はずれの意識。それがずっとずっと今まで今でも僕の心にはあって。


回りで、人の話に共感することができない自分は一人で、どこか一人ぼっちで。孤独でした。

そしてそれを誰にも言えないでいました。


僕の意見など誰も聞いてくれない、僕なんていてもいなくても同じで、ならいっそ、どうでもいいと逃げようとしていたのです。


そう、僕の根本にあるのは、人並みの事が出来ない劣等感と孤独感です。


だからいつでも、一人になろうとしました。人の少ない場所なら人の多い場所よりも孤独感は少なくてすむ。暖かいところより冷たいとろ方が寂しくなくてすむ。そんな自虐的に生きてきました。


自分のことなどどうでもいいと言うのはきっと。

自分のことを大切にすると、これまでおってきた傷と向き合わなければいけないから。


それが怖くて、今まで逃げてきました。


でも、それでは駄目らしいです。それでは人を愛せない、それでは人を幸せには出来ないんです。


僕は彼女に心を預けてそう感じました。とってもあってかくて、これまで傷だらけだった心の痛みを彼女が少し貰ってくれたのです。一人で立てないときは、二人でたてばいい。


そう言ってくれました。

僕も彼女の杖になりたい、彼女の隣で歩いて行きたい。

嬉しいときは、二人で二倍。僕の夜空の雲も。ひとつの星が見えるくらいには晴れた気がしました。


【真夜中の遊歩道】完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【夜の遊歩道】エッセイ 短編。 鳥本 一芯 @toum00124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ