2. 選別は一話目の前から始まっている

「宣伝ツイートは見られてるのにPVが全然付かない」

 このような現象に心当たりはないだろうか。私はめっちゃある。


 宣伝ツイートを見たはずの読者候補の人々は、どこへ消えてしまったのだろうか。

 あれは読者候補などではなく、自作の宣伝のために他人の宣伝を見たフリをする薄汚い同業者なのだろうか?

 もちろん、そういった手合いの存在を否定はしない。しかし、大部分はそうではない。アマチュア物書きとは得てして読書好き、少なくとも何かしらの小説にハマった経験を持ち合わせているものだ。


 では、宣伝ツイートを見た読者候補達が一話目に辿り着かずに消えてしまうのはなぜなのか。

 それは、宣伝ツイートと本文一話目の間にあるもの──すなわち、作品ページが原因だ。



 作品ページ、すなわちタイトルとキャッチコピーとタグとあらすじと目次と、恵まれし者であればレビューが並んでいるあのページである。

 本文直リンクでも貼らない限り、読者はこのページを経由して作品本文に辿り着く。しかし、このページは単なる本文への通り道ではない。

 今しがた列挙したように、ここにはタイトルから始まり、あらすじや各話のタイトル、果ては総文字数やら最終更新日まで、いろんな情報が並んでいる。

 こうした情報は何のためにあるのか。当然、読者のためである。

 より詳しく正確に言うならば、読者がこの作品を読むかどうかを決めるための一助としてこれら情報は並べられている。

 つまり、この作品ページから、読者による選別は始まっているのだ。


 では作品ページをどのように変えれば読者に読まれるようになるのだろうか。

 流行り物に便乗して人目を引くようにすればいいのだろうか。私の答えは否である。

 後述するが、ここで最も恐れるべきは「乖離」である。



 例えば、硬派な本格派ファンタジーを書き上げたとしよう。しかし、本格派ファンタジーはネットでは受けが悪い(と思い込み)、流行りの異世界転生を装ってタイトルやキャッチコピーやあらすじをそれっぽく変えたとする。

 するとどうなるか。

 確かに、流行り物にはそれを求める多数の読者も付いている。そのおかげで作品ページを見る人の数は増えるはずだ。しかし、賢明な読者は気付くはずだ。あらすじの端々、タグ、あるいは目次。そうしたところから漏れ出る『硬派な本格派ファンタジーの匂い』を。

 あるいは偽装が上手く行き、読者を作品ページから一話目まで誘導できたとしよう。しかしそこには読者の求めている流行り物の小説は存在しない。

 読者はきっと「釣られた」と思うことだろう。憤り、あるいは失望し、読者はブラウザバックするに違いない。


 以上から分かるように、作品ページで釣るのは悪手であると私は考える。これは何もジャンルだけの話ではない。派手な作風なら作品ページも派手にすべきだし、静かな作風なら作品ページも大人しくすべきだ。

 読者は自分好みのネット小説を探すために、ランキングや検索から作品ページへやってくることもある。

 静かな作風が好きな人ならば、タイトルやキャッチコピーが大人しそうな作品を選んで探すだろう。この時、派手な風に偽装していては、本来の読者が辿り着いてくれることはない。そして、本来の読者ではない人々は、本文を見て騙されたと思い、去っていく。

 結果、誰にも読まれない作品が出来上がる。


 つまり、作品と作品ページが乖離していてはならないのだ。


 正統派SF小説を書いたのならば、タイトルも、キャッチコピーも、あらすじも、何もかも全てを正統派SF小説らしく仕上げるべきであろう。そうすることで初めて、作品は本来届いて欲しい相手に届く。

 意図的にせよ、そうでないにせよ、そこがブレてしまえば届いて欲しい相手には届かない。

 前回も述べたが、予想はいくら裏切っても構わないが、期待は裏切ってはならないのだ。



 

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PVを伸ばすには 逃ゲ水 @nige-mizu

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