この小説は、月桂樹さんによる描写の綴り方が非常に秀逸。私はここをとにかく推したい。
小説の中で起こる話は基本的に、主人公による一人称視点で進むのだが、主人公が目の当たりにした光景や様子がどの場面でも非常に分かりやすく、そして洗練された語彙で描写される。
その描写というのが、特にリアル。現代ファンタジーでありながらも、ファンタジーという勿れ。
確かに、主人公を取り巻く要素は現実ではありえないような現象、状況、人物で構成されているが、それが巻き起こす描写は現実に置き換えても容易に想像ができる。ここ数年のラノベにおけるマンネリズムな描写、展開などは一切ない。
とにかくそういった写実的な表現を文字で丸め込んで読み手に見せるという執念に近い何かが、往年の名作にも通じる臭いさえ感じた。
この作品を目にした人は、せめて1章だけでも頑張って読んで欲しい。わずか1章で、読み手の心を掴むものがこの作品にはあると、私は評したい。
企画から来ました。三章まで読んだうえでのレビューです。
率直に面白い作品です。
この作品は、主人公がハローワークに行くところから物語が始まります。そして、少し非合法な組織に入ってしまう。そこから主人公は自分の知らなかった世界を知る。そこで主人公は人外の心に触れていく、そんな物語です。
私が個人的に思ったのは、分かりにくい心情の表現が良いなということです。私も作品でやってしまいそうになるのですが、理由もなく自分の胸の内をさらけ出すキャラクターは作者的に便利なのです。
そのキャラクターは素直で、分かりやすく動いてくれるから。でも、この作品は違う。キャラクターにコアという心情とリンクしたものがありながらも、それをひけらかさずに躍動している。
三章まででも何人かのコアは披露されましたが、まだまだ謎ばかり。まあ、このレビュー後も読んでいこうと思ってはいますが、このレビュー時点では謎が多い。
謎を解いていきながら、仲間の心を知っていく、そんなファンタジーです。
是非、ご一読ください。