第三章 勇者
第二十一節 過越祭(後編)
あの後、
頭領の関心は、
その一方で
「
過越祭の七日前だった。もう夕食を終え、女達が片づけをしている。男連中は、其々博打を始めたり、室に帰る準備をしたりしていた。
「え?」
「考えてみりゃ、去年も一昨年も、エルサレムに行ったらごたごたしただろ。過越祭は別に、どこでだって出来るんだ。それに
突然話を振られて、
「そうですよ、
「ああ…。そうだね、そう、その通りだ。」
「頭領、本来のご馳走というのは、どんなものなんですか?」
「そりゃあ、夜のお楽しみだな。取りあえず、祭りまでの間に、野菜と果物と、蜜を採って来よう。この大切な祭りに、巡礼者から奪うなよ。鴨居の血は羊だけで十分だ。」
すると、ほぼ全員が笑った。
翌日、
「蜂の巣に手を突っ込んで、刺されないんですか?」
「刺されないように、さっと採るんだよ。」
その時も、
「煙でいぶして、ぱっと採って、さっと採ったら、ぎゅーっとして、布でこすんだよ。」
「
「それもそうだ。アハハ。」
蜂が嫌うのは
「でもそれ、雑草だろ。道端のどこでも生えてるじゃないか。嘘言うなよ。」
「?
「なんだそりゃ。そんな生き意地汚いのが、人間以外にいるもんか!」
すると、
「そうだね、生き意地汚いのは何も悪いことじゃない。
「
「アニィ、アニィ。こっちじゃねえかな。」
そうこうしている内に、
「おい
「木の中を通って、地面の下まで巣が広がってるんじゃないか?」
ぶるん、と、
「どんだけでっかいんだよ! そんな化物、ぼくはぜーったいヤダぞ! ドでかい蜂に刺されて、全身膨れ上がって爆発する!」
「たっぷり採れまさぁ。こりゃ押しつぶすのが楽しみだ!」
「きゃー!」
「静かに、
「おい
「行けるかバカ! 凄い蜂だぞ!」
「でも
「う…っ。刺されますよ、怖いです。」
「大丈夫大丈夫。神がこの蜂の巣を採っていいと、私に示して下さったんだから。そっとお行き。」
ここで反論すれば、自分の
「
「あいさー。へへ、大量だぜ、アニィ!」
「わっ! お前まだ蜂が集ってるぞ、
「新鮮なうちに、絞りに行かなくちゃ! おい
「やだ触りたくない! 刺される!」
「…あはは、あははははっ!」
やいのやいのと言い争っていると、またしても
気が済んで
「その時、ユダヤ人達の前に、
「アハハ!」
祭りの起源に関する話らしい。子供達がらんらんと聞いているその傍らで、
「割れた海は元通りになって………。」
「頭領、全て揃った。祭りを始めよう。」
「おお、これで全部か。」
「ああ、そうだ。男子、女子、女達、男達、老婆、老爺、
頭領は山の裾野のように広がる
「さて、今さっきチビ共には言ったが、聞かなかった者もいるんで、ちょっと聞いていてくれ。」
ピュイッと
「『わが
主は
彼エジプト王の
主よ、汝の右の手は力をもて、
二千年前、神はエジプトに十の
「かんぱーい!」
銘々が杯を傾け、葡萄酒を飲み干した。子供達はさっそく、
「今日は明日の分は残してはいけない日だから、焼肉は特に全部、食べて下さいね。」
女の一人が言ったので、
その日の晩餐は、
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